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第十話「アリスの秘密のお知らせ」

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「ねぇ、ノンテ。
最近こう言ったらあれだけど、変よ。」

「そ、そうかな?」

アリス…私はそっとノンテを覗きこむ。
最近元気もないし、紅茶もあまり飲んでいない。

「食事は食べれているの?
ほら、紅茶とかお水……飲んでいないでしょう?」

「大丈夫だよアリス。それより、それは?」

わたしの手にある薔薇を見て、ノンテは少し疑問を表す。
私はさりげなくそれをノンテの手にうずめた。

「ノンテ。この花の花言葉はね……
友情って意味なのよ。素敵でしょう?
でも外国……この世界には外国なんてないけれど、
まぁ外国の花言葉では嫉妬って意味なの」 

「なんで、いきなり花言葉なんか」

「なんとなくよ。私らしいでしょ?」

微笑んで見せると、ノンテも優しく微笑む。
最近かたかった表情がほぐれて、嬉しい。

「私達、考えることはいつも同じね。
わたしも花を持ってきたのよ。
ほら……私は包装してしまったけれど。
ここで開けてくれて構わないわ」

……大切な親友からの贈り物だ。
なんなら開けずにずっと飾っておきたいが、
開けてほしいと言われれば開けるほかない。
開けてみると、そこにはアサガオと言う
花が花束になって入っていた。

「……この花の花言葉って」

「言わないで、アリス。
わたし自分の口から言いたくもないし、
聞きたくもないの。
……花言葉が、わたしの気持ち。」

私はそっとノンテを抱き締めた。
ノンテも遠慮がちに手を回してきた。

「……ねぇ、ノンテ。」

「……アリス?」

「…………愛してたの」


アサガオの花言葉……それは、愛情。



目を開ける。そこはベッドの上。
これは予想外ではない。
いつも通りの日常。強いて言うなら日課。

「……いつもの夢。私が心配し彼女は疑問を感じる。
途中経過はどうであれ彼女はわたしに好意を伝える。
必ず『愛してる』その言葉は言わない」

彼女とであってから、毎日この夢を見る。
昼寝でもうたた寝でも普通に寝ても。
今日はなぜか彼女は最後に、私の名前を呼んだ。
私は……なぜか過去形で「愛してた」と言った。
今までこんなことはなかった。

まぁいい。今日も変わらず「可愛く」いよう。
バグとエラーで形成された体で。

鏡の前にたつ。そこには醜い女が立っていた。
私が動くと彼女も同じ動きをする。
そして私が指をならすと、たちまち美しく変わる。
そしていつも通り美しい顔で微笑んだ。



枚散るトランプとカラスの羽。
そのなかで冷たい目で微笑むわたし。
美女と野獣の野獣は美しい姿から魔法で
醜くされたけど、その逆だわ。

醜い姿から、魔法で美しく変わる。
いつもとに戻るかもわからない不確かな魔法。

でもそれさえあれば……ノンテは愛してくれる。
彼女も美しい私しか求めなかったのだから。

赤いワンピースで玄関のドアを開き、
スキップで彼女の家へと鼻歌混じりに向かった。
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