13 / 16
13
しおりを挟む
「何? 神の島リーンに行くだと?」
「ああ、その予定だ。一番早く行ける方法を知っていたら教えて欲しい」
冒険者ギルドに戻るとヨルダンが待っていた。
リリカはリクがどれくらい使えるか報告していた。
「火魔法は使えるようだが、他も使えるのか?」
理玖は少しだけ考えて、
「あとは水と風は多少使える」
と答えた。全部言うのは騒ぎになりそうなのでやめておいた。
それでもヨルダンは驚いていた。
「三つも使えるのか。う~ん。それだと護衛で雇ってもらえるかもしれないな」
「護衛?」
「まだ冒険者を始めたばかりだからランクが低いが、三つも魔法が使えるのなら雇ってもらえるかもしれん」
「隣の国までの護衛ならたくさんあるから、それを引き受けたらいいわ。リーンに早く行きたいのはわかるけど、一番低いランクの場合は護衛任務を一つこなせばランクが一つ上がるの。一つ上がれば、それだけ遠くの国に行く護衛任務も引き受けられるようになるわ」
リリカとヨルダンに説得されて、理玖は隣の国までの護衛が来るのを待つことにした。
理玖はそれまでは薬草取りをして過ごすことにする。
薬草取りなら一人でも大丈夫だし、もしゴブリンが出てきても火魔法がある。そして理玖はリリカとヨルダンには言えなかったけど、魔法の練習をしておきたいと考えていた。火魔法のようにスキルにあるから使えるとは思うが、予習をしていないといざというときに使えない気がするのだ。
リリカに教えてもらった薬草がある穴場の場所に着くと周囲に誰もいないことを確認する。
水魔法も火魔法と同じように頭で思い浮かべてから放つ。今日は見本がなかったせいか、水の量が多く的にしていた木を倒してしまった。
「いくらなんでもこれはまずいな」
水で粉砕された木を証拠隠滅のために燃やしておく。ゴブリンを燃やすことでこれだけは上手になっていた。
風の魔法はなるべく小さくと想いながら使ったが、やはり木を倒していた。
「まずいな。これを使うと簡単に殺してしまう。魔物ならいいが人間だった場合、さすがに寝覚めが悪い」
ブツブツと理玖は呟く。護衛をするということは魔物だけでなく、盗賊などからも守らなければならない。そこを考えると気絶させるくらいの魔法が理玖としては望ましいと考えていた。
理玖はどうすればいいかを考えながら薬草採取をしていた。鑑定のスキルがあるので簡単な仕事だと思っていたが、意外と難しい。長さの指定もあったので、確認しながら採取していく。
「さっさと持って帰らないとしおれそうだな。氷魔法で作った氷を入れるか? いや氷はまずいかな。かえって薬草を痛めるかもしれない……、そうだ! 氷魔法を使えば殺すことなく捕らえられるかもしれない!」
とてもいい考えだと理玖は思っていた。だが理玖の作った氷は刃のように気を突き抜け、木を一刀両断した。そしてその後ろの木も同じように切り倒していた。
理玖の考えは間違えではなかったけど魔法の威力が高かったのと、火の魔法を習った時と同じ感じで使うから、どの魔法も攻撃する形でしか使えていなかった。
結局最後まで氷魔法をうまく使えることは出来なかった。
「はぁ? 氷魔法?」
理玖は仕方なく魔法の専門家であるリリカに相談することにした。魔法のマの字も知らないのに魔法を使うことに無理があるのだ。
「そう、氷魔法です。盗賊とかに襲われた時、殺さないでとらえたほうがいいと考えまして」
「え?なんで? どうせ捕まえたら殺すことになるのだから殺してもいいと思うわよ。捕らえたりしたら、しばらく盗賊と一緒にいるか、そこに置き去りにするかになるでしょ。決まって置き去りにする方になるの。食料とかの問題も出てくるからね。そして置き去りの場合、縄で括るか、足を切断して置き去りにするから結局魔物の餌になるだけなのよ」
確かに合理的な考えだった。盗賊のそれまでの行いを考えれば情状酌量の余地もないのだろう。そして裁判なんてものがないこの世界では日常茶飯事なのかもしれない。だが理玖にはまだ人を殺すことができそうになかった。
「まあ、リクがどうしても殺すのが嫌なら氷漬けにしたらどう? 足だけでもいいけど、いっそのこと全身氷漬けもいいかもね」
「そうですね。それにします」
理玖は安堵の表情を浮かべていた。
「でもね、結局は同じことよ。盗賊は沢山の人を殺しているような集団なの。甘い考えをしているとこっちが殺されてしまうわよ」
「……わかってはいるのですが…」
リリカの厳しい意見に理玖は項垂れることしかできない。
「それにしてもリクは氷魔法も使えるのね。水の進化形とはいえすごい事よ。早速ヨルダンに伝えなくっちゃ」
リリカはそれ以上は厳しいことは言わなかった。理玖が身をもって学んでいくしかないからだった。
「ああ、その予定だ。一番早く行ける方法を知っていたら教えて欲しい」
冒険者ギルドに戻るとヨルダンが待っていた。
リリカはリクがどれくらい使えるか報告していた。
「火魔法は使えるようだが、他も使えるのか?」
理玖は少しだけ考えて、
「あとは水と風は多少使える」
と答えた。全部言うのは騒ぎになりそうなのでやめておいた。
それでもヨルダンは驚いていた。
「三つも使えるのか。う~ん。それだと護衛で雇ってもらえるかもしれないな」
「護衛?」
「まだ冒険者を始めたばかりだからランクが低いが、三つも魔法が使えるのなら雇ってもらえるかもしれん」
「隣の国までの護衛ならたくさんあるから、それを引き受けたらいいわ。リーンに早く行きたいのはわかるけど、一番低いランクの場合は護衛任務を一つこなせばランクが一つ上がるの。一つ上がれば、それだけ遠くの国に行く護衛任務も引き受けられるようになるわ」
リリカとヨルダンに説得されて、理玖は隣の国までの護衛が来るのを待つことにした。
理玖はそれまでは薬草取りをして過ごすことにする。
薬草取りなら一人でも大丈夫だし、もしゴブリンが出てきても火魔法がある。そして理玖はリリカとヨルダンには言えなかったけど、魔法の練習をしておきたいと考えていた。火魔法のようにスキルにあるから使えるとは思うが、予習をしていないといざというときに使えない気がするのだ。
リリカに教えてもらった薬草がある穴場の場所に着くと周囲に誰もいないことを確認する。
水魔法も火魔法と同じように頭で思い浮かべてから放つ。今日は見本がなかったせいか、水の量が多く的にしていた木を倒してしまった。
「いくらなんでもこれはまずいな」
水で粉砕された木を証拠隠滅のために燃やしておく。ゴブリンを燃やすことでこれだけは上手になっていた。
風の魔法はなるべく小さくと想いながら使ったが、やはり木を倒していた。
「まずいな。これを使うと簡単に殺してしまう。魔物ならいいが人間だった場合、さすがに寝覚めが悪い」
ブツブツと理玖は呟く。護衛をするということは魔物だけでなく、盗賊などからも守らなければならない。そこを考えると気絶させるくらいの魔法が理玖としては望ましいと考えていた。
理玖はどうすればいいかを考えながら薬草採取をしていた。鑑定のスキルがあるので簡単な仕事だと思っていたが、意外と難しい。長さの指定もあったので、確認しながら採取していく。
「さっさと持って帰らないとしおれそうだな。氷魔法で作った氷を入れるか? いや氷はまずいかな。かえって薬草を痛めるかもしれない……、そうだ! 氷魔法を使えば殺すことなく捕らえられるかもしれない!」
とてもいい考えだと理玖は思っていた。だが理玖の作った氷は刃のように気を突き抜け、木を一刀両断した。そしてその後ろの木も同じように切り倒していた。
理玖の考えは間違えではなかったけど魔法の威力が高かったのと、火の魔法を習った時と同じ感じで使うから、どの魔法も攻撃する形でしか使えていなかった。
結局最後まで氷魔法をうまく使えることは出来なかった。
「はぁ? 氷魔法?」
理玖は仕方なく魔法の専門家であるリリカに相談することにした。魔法のマの字も知らないのに魔法を使うことに無理があるのだ。
「そう、氷魔法です。盗賊とかに襲われた時、殺さないでとらえたほうがいいと考えまして」
「え?なんで? どうせ捕まえたら殺すことになるのだから殺してもいいと思うわよ。捕らえたりしたら、しばらく盗賊と一緒にいるか、そこに置き去りにするかになるでしょ。決まって置き去りにする方になるの。食料とかの問題も出てくるからね。そして置き去りの場合、縄で括るか、足を切断して置き去りにするから結局魔物の餌になるだけなのよ」
確かに合理的な考えだった。盗賊のそれまでの行いを考えれば情状酌量の余地もないのだろう。そして裁判なんてものがないこの世界では日常茶飯事なのかもしれない。だが理玖にはまだ人を殺すことができそうになかった。
「まあ、リクがどうしても殺すのが嫌なら氷漬けにしたらどう? 足だけでもいいけど、いっそのこと全身氷漬けもいいかもね」
「そうですね。それにします」
理玖は安堵の表情を浮かべていた。
「でもね、結局は同じことよ。盗賊は沢山の人を殺しているような集団なの。甘い考えをしているとこっちが殺されてしまうわよ」
「……わかってはいるのですが…」
リリカの厳しい意見に理玖は項垂れることしかできない。
「それにしてもリクは氷魔法も使えるのね。水の進化形とはいえすごい事よ。早速ヨルダンに伝えなくっちゃ」
リリカはそれ以上は厳しいことは言わなかった。理玖が身をもって学んでいくしかないからだった。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……
踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです
(カクヨム、小説家になろうでも公開中です)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
転生少女、運の良さだけで生き抜きます!
足助右禄
ファンタジー
【9月10日を持ちまして完結致しました。特別編執筆中です】
ある日、災害に巻き込まれて命を落とした少女ミナは異世界の女神に出会い、転生をさせてもらう事になった。
女神はミナの体を創造して問う。
「要望はありますか?」
ミナは「運だけ良くしてほしい」と望んだ。
迂闊で残念な少女ミナが剣と魔法のファンタジー世界で様々な人に出会い、成長していく物語。
天は百万分の二物しか与えなかった
木mori
ファンタジー
あらゆる分野に取柄のない中学三年生の川添鰯司には、たった二つだけ優れた能力があった。幼馴染の天才お嬢様二条院湖線と超努力秀才の小暮光葉は勉学・体育で常に1、2位を争っていたが、このふたりには決定的な弱点があり、それを無自覚に補完する鰯司が必要不可欠な存在であった。湖線と光葉にはとんでもない秘密があり、それは・・・。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる