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38 最終回

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 今日は待ちに待った結婚式。
 ロイドが学院を卒業して、六か月。長かった。
 ちなみに魔石列車はまだ走っていない。魔石だと高価なので石炭を使う話も出ているらしいけど、石炭だと空気が悪くなるとか、顔が真っ黒になるとか問題が山積みらしい。
 でもエドと兄が力を合わせているから、私とロイドが暮らすことになる領地で魔石列車を目にする日も近いだろう。

 両親から贈られたティアラを頭にのせて、白いドレスを着た私は一番の幸せ者だ。
 このティアラは私のために作られた一点もの。私を見つけた日に急いで作らせたとか。貴族では女の子が生まれたら両親が作るらしい。アンナのために作らせたものはどうなったのかは聞くことができなかった。

 妖精のアオは今朝も私の部屋に来て、『私のおかげよ。感謝しなさい!』とのたまっていたけど、兄の姿を見た途端にいつものように消えてしまった。どうも兄のことが苦手みたいで笑ってしまう。
 アオの慌てた姿を思い出して笑っているとロイドが不思議な顔をした。

「どうかした?」
「ううん。みんなが祝ってくれているのがうれしいなって思って」

 私たちの結婚を祝福してくれる家族や友人たちを見ながら言った。

「そうだね。アネットは庶民の家族も呼びたかったんじゃない?」
「それはないわ。この場に呼んだりしたらかえって困らせてしまうもの」

 貴族しかいないこの場で、庶民の家族は浮くだけだ。

「そうか」
「そうよ」

 庶民の時の家族のことは今でも大事だけど、今の家族も大事に思っている。どちらかなんて選べない。これはアンナも同じだと思う。私が結婚したことはアンナから聞いているだろうから、前の家族もきっと喜んでくれているだろう。
 一度だけ父さんが謝りに来た。学院の門で待っていたのだ。

「すまなかった」

 父さんが発した言葉は一言だけだった。私は父さんを見ることなく迎えに来ていた馬車に乗った。
 馬車の中で私は泣いた。父さんのことを許せるかと聞かれたら、許すことなどないと言える。父さんだって被害者だったのだから。一生懸命、家族になろうと努力していたことも知っている。でも私は言葉を掛けることができなかった。父さんとはそれっきり会っていない。
 もっと時が過ぎたら、手紙でも書こうかなって思う。

「さあ、行こう」
「ええ」

 今から集まってくれた皆に挨拶をするのだ。
 差し伸べられたロイドの手に自分の手をのせて歩き出す。未来へ向かって……。

 
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