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14 ロイドside 2

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  アネットとの出会いは運命だったのではないか、最近ではそんな風に思っている。
 運命のあの日は水の日だった。姉に会いに行くのは水の日だったから、僕はいつものように姉に家からの荷物を渡して、そして帰るときにはポーションを姉からもらったので、明日は冒険者ギルドにでも行って難易度の高い依頼でも受けてみようかなと考えながら歩いていた。

「お願いします。聖女様に会わせてください。弟が病気なんです」
「帰った、帰った。聖女様は忙しいんだ。弟は医者にでも診せるんだな」
「そんな……、医者に診せるお金なんてありません」

 庶民が門番に追い返されていた。これはここではよく見る光景だった。聖女様が庶民を助けることはない。それは聖女様が薄情だからではなく、本当に忙しいからだと姉から聞かされていた。誰もかれも助けることはできない。魔力には限りがあることは貴族なら誰もが知っている。聖女様がポーションを作るのは少しでも多くの人を助けるためだ。ポーションがあれば遠くの人だって、聖女様に会うことができなくても助けることができる。初代の聖女様が考え出したと言われている。
 僕はその光景を目にしながらも、通り過ぎた。見慣れた光景だったから、心がマヒしていた。庶民だから仕方がないなと薄情だけどそんな風に思っていた。けれどしばらく歩いているとポケットの中のポーションが妙に温かくなっていた。まるで自分の存在を僕に知らせているようだった。その時は自分にも良心があって、そんな風に感じたのだと思ていたけど今ならわかる。あれは本当にポーションが自己主張していたのだと。彼女を助けろと。
 僕は門に走った。門番はいつものように立っていた。彼女の姿が見えなかったときは焦ったが、門から離れた場所に蹲っているのが見えてホッとした。どうやら間に合ったようだった。
 近づくにつれて、彼女の髪が夕日にあたって輝いて見えた。庶民には珍しい金髪だ。

「良かった。まだここにいた」

 声を掛けるときは何故かドキドキした。庶民に声を掛けるのは初めてだった。

「誰?」

 頭を上げて僕を見る瞳はまっすぐで、僕は彼女から目をそらすことができなくなっていた。

「僕の名前はロイド・マーティン。君、さっきそこで門番ともめていただろう?」
「ごめんなさい。すぐに離れます」

 僕が苦情を言いに来たのと思ったのか慌てたように立ち上がる。僕は彼女の目の前にポーションを差し出した。

「いや、そうじゃなくて、これあげるよ」

 もっと言い方があったと思う。でもその時はそれが精いっぱいの言葉だった。
 僕はその時彼女に惚れたのだと思う。ひとめぼれってやつだった。
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