上 下
46 / 55

46

しおりを挟む
グレース王女にソファを勧められたので座ると、侍女がお茶の用意をしてくれる。
 私はお茶を一口飲むとホッと息をつく。王宮のお茶は高級品なのか味が違う。

「弟のヒースがショックを受けているのを知っている?」
「ショック?」

 突然ヒース王子がショックを受けていると聞かされてもよくわからない。騎士団の方で何かあったのかしら。

「失恋したのよ」
「失恋!」

 金髪碧眼の美少年で第二王子とはいえ将来有望なのに失恋するのかと驚いた。
 身分違いか、年上の美魔女のような女性だろうか。想像するととても楽しい。失恋は可哀そうだけど、ヒース王子は王位継承権第二位なので自由に恋愛できる立場ではない。

「まあ、他人事のような顔をして。相手はリリアナなのに」
「えーーっ! 私なの? またからかっているのでしょう」
「リリアナはやっぱり気づいていなかったのね。ヒースは小さいころから貴女の後ばかり追いかけていたのに」

 ヒース王子が私とグレース王女の遊んでいる所に乱入してくるのはいつものことだったので気にしたことはなかった。それが私目当てだったなんて意外すぎる。何かの間違いではないのか。

「でも何も言われたことなかったわよ」

 鈍感な私だって何か言われていたら気が付いたはずだ。ヒース王子からそれらしいことを言われた記憶はない。

「どうも年下だから、せめて16歳になるまではと遠慮していたみたいね。それが二年前に突然婚約して、それでも破局になればとか思ってたのについに結婚でしょ。さすがに失恋決定。普通は婚約された時に失恋だと思うけど、王族は諦め悪いから…」

 そういえばカイルと婚約してからヒース王子とはあまり話さなくなっていた。てっきり思春期をむかえたせいだと思っていたけど違ったのね。でもヒース王子に惚れられていたと聞かされても今さらな感じでピンとこない。告白もされていないし知らなかったことですました方がいいだろう。
 そんなことより王族は諦めが悪いと言って、悲し気な表情になったグレース王女が気になる。

「グレース、わたくしたちって友達よね」
「ええ、親友だと思ってるわ」
「じゃあ、教えて。貴女の好きな人は誰なの?」

 今までは知らないふりをしていた。そのほうがいいと思っていたから。だってグレース王女は王族で、ヒース王子と同じように自由に恋愛ができないと知っているから。私だって公爵令嬢として政略結婚させられる覚悟をしていたから同じことだと思っていた。
 でも今は違う。私は大好きな人と結婚した。これはグレース王女のおかげだと思っている。グレース王女の手助けがなければカイルと一緒になることはなかったかもしれない。ううん、真名のことがあるから最終的には夫婦になっていたかもしれないけど、きっと仮面夫婦のような関係だったのではないかと思う。
 だから今度は私がグレース王女の悩みを聞く番だ。もちろん手助けだってしたい。でもグレース王女は王族で身分違いならば絶望的だ。

「わたくしは…そうよね。リリアナは気づいてたのね。好きない人がいるのは認めるわ。でも誰だかは聞かないでほしいの」
「それは、絶対に一緒にはなれない人だから?」
「……そうよ。絶対に無理な人なの。それに、彼の方はわたくしのことをなんとも思っていないの。王女としては扱ってくれているけど、それだけ……」

 王女として扱ってくれてる? それって結構身近にいるってことかしら。
 でも誰のことだか全くわからない。幼いことろから一緒にいたのに…。

「一度カイルに言われたことがあるの。彼には愛する女性がいるからやめたほうがいいって」
「それってカイルは知っているってこと? ずるいわ。わたくしの方がグレースの友達なのに」
「ふふふ、ずっと昔の話。きっとカイルだって忘れているわ。なにげなく言われた言葉だもの」

 ずっと昔ってことは幼いころのことかしら。私はカイルとはあまり会うこともなかったけれど、カイルは陛下の親友だからグレース王女とは小さいころから知っている。だとすると覚えていない可能性の方が高い。でも私は聞いてみようと思った。それはグレース王女の意に反しているかもしれない。
 それでも私は彼女のために動きたい。だってこのままでは何もしないまま彼女は好きでない男と結婚することになる。それが王族としては当たり前だってことはわかっているけど……。
 グレース王女は私が黙ったことで、この話は終わったと思ったらしく新婚生活について聞いてきた。
 カイルが迎えに来てくれるまで、たくさんのことを話した。でも私はグレース王女にもあの足音のことは話すことが出来なかった。                   
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更何の御用でしょう? ウザいので止めて下さいませんか?

ノアにゃん
恋愛
私は3年前に幼馴染の王子に告白して「馬鹿じゃないの?」と最低な一瞬で振られた侯爵令嬢 その3年前に私を振った王子がいきなりベタベタし始めた はっきり言ってウザい、しつこい、キモい、、、 王子には言いませんよ?不敬罪になりますもの。 そして私は知りませんでした。これが1,000年前の再来だという事を…………。 ※ 8/ 9 HOTランキング 2位 ありがとう御座います‼ ※ 8/ 9 HOTランキング  1位 ありがとう御座います‼ ※過去最高 154,000ポイント  ありがとう御座います‼

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

目を覚ましたら、婚約者に子供が出来ていました。

霙アルカ。
恋愛
目を覚ましたら、婚約者は私の幼馴染との間に子供を作っていました。 「でも、愛してるのは、ダリア君だけなんだ。」 いやいや、そんな事言われてもこれ以上一緒にいれるわけないでしょ。 ※こちらは更新ゆっくりかもです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

もう尽くして耐えるのは辞めます!!

月居 結深
恋愛
 国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。  婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。  こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?  小説家になろうの方でも公開しています。 2024/08/27  なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。

幼馴染は不幸の始まり

mios
恋愛
「アリスの体調が悪くなって、申し訳ないがそちらに行けなくなった。」 何度目のキャンセルだろうか。 クラリッサの婚約者、イーサンは幼馴染アリスを大切にしている。婚約者のクラリッサよりもずっと。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

【電子書籍発売に伴い作品引き上げ】私が妻でなくてもいいのでは?

キムラましゅろう
恋愛
夫には妻が二人いると言われている。 戸籍上の妻と仕事上の妻。 私は彼の姓を名乗り共に暮らす戸籍上の妻だけど、夫の側には常に仕事上の妻と呼ばれる女性副官がいた。 見合い結婚の私とは違い、副官である彼女は付き合いも長く多忙な夫と多くの時間を共有している。その胸に特別な恋情を抱いて。 一方私は新婚であるにも関わらず多忙な夫を支えながら節々で感じる女性副官のマウントと戦っていた。 だけどある時ふと思ってしまったのだ。 妻と揶揄される有能な女性が側にいるのなら、私が妻でなくてもいいのではないかと。 完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。 誤字脱字が罠のように点在します(断言)が、決して嫌がらせではございません(泣) モヤモヤ案件ものですが、作者は元サヤ(大きな概念で)ハピエン作家です。 アンチ元サヤの方はそっ閉じをオススメいたします。 あとは自己責任でどうぞ♡ 小説家になろうさんにも時差投稿します。

処理中です...