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しおりを挟む「それで君はどうする」
感激してる井端くんの事はもう済んだとばかりに私に話しかけてくる。
「私も大体は同じでお願いします。ただ私は女なので、冒険者にはなりたくないのですが何か暮らしていけるスキルとかないですか?」
「ふむ。治癒はどうだ? 治癒能力を持ってる人は少ないからありがたがられるだろう。それと鑑定も与えよう。この二つがあればポーションを作って売ることもできよう」
ポーション売ることが出来たら暮らせていける気がする。とにかく知らない世界でお金は重要だよ。
「それと困った時に相談できる人が欲しいです」
「それは行ってから作ればよかろう」
「神様とは話せないのですか?」
「ふむ。私を信仰してる神殿でなら話せることもあるが、よほどのことがない限り手を貸すことはできないからな」
「わかりました。話せるだけでもいいです」
とりあえず保護者みたいなのはゲット出来たような気がする。
「君達は違う国に行く事になる。後に会うのは構わない。井端理玖はザラーン国だ。ザラーンの情報はステータスにある。地図もあるので参照するように。須賀花奈はマダルーン国だ。情報は全てステータスに入れてある」
神様はそこで息をひとつ吐くと
「君達は一度死んだものだ。これから行く世界は元の世界よりも人の命が軽い。それでもできるだけ長く生きれるように頑張ってくれ。以上だ。今から二人の姿をこの世界で生きれるように変える。目が覚めたら異世界だ。幸運を祈る」
神様の「幸運を祈る」の言葉と同時に意識がなくなった。
「.....う、うん」
「お兄さん、こんな所で寝てたら風邪ひくよ」
「えっ!」
小さい子供に起こされたらしい。目の前の状況から考えてここは異世界。やっぱり夢オチじゃなかったのね。それにしても神様って酷い。可愛い乙女を外に放り出すなんて! 人さらいに攫われたらどう責任取ってくれるんだろう。プンプンだよ。
「お兄さん、大丈夫? もしかして誰かに殴られて伸びてたの?」
「ううん。大丈夫。でもお兄さんじゃなくてお姉さんでしょう?」
いくらなんでもお兄さんは無いよね。神様も美男美少女って言ってたのに、この子供は何を言ってるんだろう。この胸だって今までより大きいはず。と思いながら胸に手を置いて....? ない。無いよね。胸がないよ。正確に言うと胸の盛り上がりが、洗濯板だよ。おまけに手もゴツくなったような.....。
そういえば声もずいぶん低くなってる。これって男の声じゃないの?
「鏡...鏡はないの?」
「鏡? 自分を見たいのなら店のガラスを利用したらいいよ。ガラスに映るから見れるよ」
急いで起きて店のある方向に行く。よくわからないけど大通りにいけばあるだろう。あえて下半身は見なかった。見るのが怖いから。さ、触るのはもっと嫌だ~。
「この顔って.....」
いろいろ変わってるけど、井端理玖の顔だ。髪は銀髪だし、瞳も濃い青になってるし、色も白いし、鼻も高く背も高いけど井端理玖だよね。なんで私が井端理玖になってるのよ~。あの神様が間違えたのか! 神様に訴えよう!
「神殿、神殿ってどこにあるの?」
さっきの子供がまだ私の隣にいるので尋ねる。
「もうすぐ暗くなるから神殿に行っても入れないよ。それよりお兄さん、宿はいいの? まだなら『宿屋しずく』に来なよ。うちなら色々教えてあげるよ。お兄さん頭でも打ったのか、さっきから変だよ」
「どうしてそんなに親切なの?」
「行き倒れてたら助けるのが、うちの方針なんだよ」
「お金持ってなかったらどうするのよ」
「その時は身体で返してもらってる.....って何してるの?」
思わず胸を隠すように手を交差してかばってしまった。もう胸なんてないのに......。
「身体でっていうから、思わず.....」
「そういう意味じゃないから。働いてっていう事。皿洗いとかあるでしょ。男なのに変な奴だな」
子供に変な奴って言われたよ。早く神様にあってなんとかしてもらわないと.......。
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