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19 酔い覚ましポーションと美白ポーション

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 猫から人間に戻ったマティアスは疲れた顔をして帰って行った。
 猫になるのは精神的に疲れるのだろう。
 私は帰っていくマティアスに頭を下げた。
 彼の負担を減らすためにも、頑張って呪いの解呪方法を探そう。
 そのためにも本を読まないと。
 私が仕事場に戻ろうとした時、ケイシーから声をかけられた。

「マチルダさん、このポーションなのですが、カウンターの横に置いてはどうでしょう?」

 ケイシーは魔女のポーションと一緒に並べて置いてある、酔い覚ましポーションや美白ポーションを持っている。
 画期的な発明品ではなく、魔女のポーションを作っている時に「こんなものが欲しいなぁ」と思っていたら、できてしまったポーションである。
 お酒を飲み過ぎた時も二日酔いとは無縁になり、寝不足してもお肌はぴちぴちで肌荒れとは無縁。
 なんて素晴らしいポーション!
 自分で作っておきながら感激してポーションを手に踊りまくった覚えがある。
 私以外の人にもこの感動をと思い、早速実用化して売り出したけれど、全く売れなかった商品だ。

「それをカウンターの横に?」

 確かにカウンター横の棚には何も置いていない。昔は魔女のポーションをここにも置いていたと祖母から聞いたことがある。

「はい。魔女のポーションが売っているあたりは値段のせいもあってか、近づく人もいないのでこの商品の事も気付いていないと思うんです。カウンターのそばに置けば、酔い覚ましポーションは絶対に売れますよ。冒険者の方は二日酔いで頭を抱えてる人って多いですからね」

 酔い覚ましポーションの値段は500エール。ケイシー曰く値段も手頃で、お試しに買うのにも躊躇されないそうだ。

「美白ポーションも売れるかしら?」

 美白ポーションは1000エール。飲んでも良し、美白ポーションをコットンに含ませて、気になる場所になじませても良し。一回に飲む量はスプーン一杯だから、毎日使っても10日くらいはもつ。

「お肌で悩んでいる女性は多いから、きっと売れますよ」

 ケイシーは自信満々の表情で微笑んでいる。
 私はこの商品を並べたときのことを思い出した。あの時はきっと売れると思って、ケイシーと同じように自信満々だった。
 日に日にその自信は萎んでいったが、ケイシーは置く場所が悪かっただけだと言ってくれた。
 あの時と今は違うはず。魔女のラーメンのおかげで来客数も増えた。カウンターの横に置けば目につくから、買ってくれる人がいるかもしれない。一度でも使ってくれたら、絶対にまた買いに来てくれる。

 私はケイシーに許可して、並べ替えるのを手伝った。

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