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第6話(9)
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「な、なんと、嬉しいことをっ! ……修助さん、ご覧の通り、ご説明の通りですので、ご協力致しましょう」
リリさん、スゥさんが。僕の方を見て、笑顔で頷いてくれた。
「それは、願ってもないことですが……。お二人は立場があるから、これ以上迷惑をかけるわけにはいきませんよ」
特に、リリさんの方がやばい。ちょっと話が揉めただけで激怒して「クビ」とまで言っていたから、今回のことが耳に入れば確実に切られてしまう。
「そこは、心配ご無用ですよ。ばれないようにうまく動きますし……協力と言っても、下っ端の私たちにはある程度――精々もう一度、交渉の場を用意することが限界ですから」
「交渉!?」
「今の状態は引き分けだけ伝えてだんまりですからね。そこで、今度は冷静に、ご自分の意志を上層部の方々にお伝えすれば、納得してくださるかもしれません。可能性としては低ですが、どうしますか?」
「……もし、リリさんたちがチャンスを与えてくれるなら、やってみたい。やりたいです」
ここで手招いていても何も変わりはしない。例え1%でも可能性があるのなら、それにかけてみたい。僕の、僕たちの思いを、レンズの向こう側に伝えたい。
「良いお返事ですっ。では、これ以上時間が経つと上の皆さんは次の予定に移ってしまうかもしれないので、今から本部にメールします」
「メールで? 直接の電話じゃなくていいんですか?」
「電話だと、相手と話さなければなりませんが、メールは一方通行ですので、口八丁に説明しておけば必ず応じてくれます。なにせ、肝心の代表が決まってませんからね」
「な、なるほど」
相手としても、メールの内容が気になるし、有耶無耶のままだと先に進めない。今のリリは組織の人間だ。
「ではスゥさん、早速メール送信です。私の指示通りに打ってください」
「は、はいっ」
「……リリさん、スゥさん。恩に着ます」
通信機に向かう二人に感謝の言葉を伝えてから――ずっと背後でソワソワしているマシマロとレートの方を向く。
リリさん、スゥさんが。僕の方を見て、笑顔で頷いてくれた。
「それは、願ってもないことですが……。お二人は立場があるから、これ以上迷惑をかけるわけにはいきませんよ」
特に、リリさんの方がやばい。ちょっと話が揉めただけで激怒して「クビ」とまで言っていたから、今回のことが耳に入れば確実に切られてしまう。
「そこは、心配ご無用ですよ。ばれないようにうまく動きますし……協力と言っても、下っ端の私たちにはある程度――精々もう一度、交渉の場を用意することが限界ですから」
「交渉!?」
「今の状態は引き分けだけ伝えてだんまりですからね。そこで、今度は冷静に、ご自分の意志を上層部の方々にお伝えすれば、納得してくださるかもしれません。可能性としては低ですが、どうしますか?」
「……もし、リリさんたちがチャンスを与えてくれるなら、やってみたい。やりたいです」
ここで手招いていても何も変わりはしない。例え1%でも可能性があるのなら、それにかけてみたい。僕の、僕たちの思いを、レンズの向こう側に伝えたい。
「良いお返事ですっ。では、これ以上時間が経つと上の皆さんは次の予定に移ってしまうかもしれないので、今から本部にメールします」
「メールで? 直接の電話じゃなくていいんですか?」
「電話だと、相手と話さなければなりませんが、メールは一方通行ですので、口八丁に説明しておけば必ず応じてくれます。なにせ、肝心の代表が決まってませんからね」
「な、なるほど」
相手としても、メールの内容が気になるし、有耶無耶のままだと先に進めない。今のリリは組織の人間だ。
「ではスゥさん、早速メール送信です。私の指示通りに打ってください」
「は、はいっ」
「……リリさん、スゥさん。恩に着ます」
通信機に向かう二人に感謝の言葉を伝えてから――ずっと背後でソワソワしているマシマロとレートの方を向く。
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