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第5話(4)

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「なに?」
「折角修助がやる気見せたんだから、特別に教室に入る方法を教えてあげよう」
「そんな方法あんのか!?」
「ちょ、顔近いっての」
「わ、悪い。で、それはどうやって?」
「北校舎の入り口を使うのよ。本当は部活の生徒以外立ち入り禁止だけど、私が協力しようではないか」

 親指でクイッと校舎をさし、ニッカリ笑う。
 おおっ。今日の夏子は神様のようだ。

「で、でもだな。勝手なことして怒られないか?」
「この時間だと先生も帰ってるから問題ないさ。その気になれば泊りも可」
「そこまでしなくていいけど」
「そ? じゃあ私はスリッパ持ってきたげるから、校舎の入り口で集合ね」
「悪いけど、頼んだ」

 履物を準備してくれるために反対方向に走っていた夏子を見送ってから、僕たちも歩き始める。
 校長が「学校の名物」と主張してやまない壊れて動かなくなったレトロな時計台を眺めて、約束の場所へ。
 すると、そこにはすでに夏子の姿があった。僕たちもそれなりの速さで歩いたはずなんだけど、一体いつの間に。

「私は巻き替えしてるから、取り終わったらそこに置いたまま帰っていいからね」
「了解しました」
「なっちゃんありがとー」
「わざわざ、ごめんさない」

 至れり尽くせり待遇にお礼を言ってから履き替え、校舎に足を踏み入れる。
 渡り廊下と階段を駆使して、僕と夏子が所属する一年C組に到着。道中、人っ子一人いませんでした。

「ここが、僕たちが勉強してる教室だよ」

 ガラガラと扉を開き、誰もいない教室へ入る。シーンとしていていつもとは違う、どこか別世界のような不思議な感じがする。こりゃあ、怪談が誕生するワケだ。

「ここがしゅーすけ君の教室!」
「机が一杯あるねー」

 早速教室の隅々まで観察してる。

「へー」
「ツルツルだねぇー」

 歩きながら、机の手触りを楽しんでる。やっぱりここを見せることができて良かった。夏子には感謝しないとな。
 マシマロとレートは室内の机を一つ一つ確認していって、窓際の前から四番目の机で止まった。

「ん?」
「この机、しゅーすけ君のだよね!」
「ど、どうしてわかったの!?」

 確かに、この微妙なポジションにあるのは僕が使っている机だ。夏休みだから何も残ってないのに、どうやって判断したんだろ。

「なんかね、修助君の匂いがしたんだ」
「だから、すぐにわかったよ」
「へ、へぇー」

 そんなのがあるんだ。自分ではわからないけど、マシマロとレートだけが感じるモノなのかな?

「ねえしゅーすけ君、椅子に座ってもいいかなー?」
「どうぞどうぞ。遠慮なく」
「やったぁ。レー君、一緒に座ろっ」
「う、うんっ」

 仲良く半分半分で着席。一緒ってのが恥ずかしいのか、レートはちょっぴり俯いちゃってる。

「修助君はここで勉強してるんだよね」
「そうだねー。あたしたちも、一度でいいから授業受けてみたいねー」
「マシマロちゃん、それは難しいよ。……でも、出来来たらいいよね」
「じゃあさ、今から受けてみる?」

 やり取りを聞いていたら、自然と言葉が出ていた。今日は、出来る限りの希望は叶えてあげたいからね。

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