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それからとんとん拍子に話は進み、何度もデートを重ね仲を深めていった私達は正式に結婚の契りを交わした。
お互いの両親への挨拶も好感触で、何もかもが順風満帆だった。
初めて会った日から一ヶ月と経たないうちに、二人で役所へ結婚届を提出し、マリッジリングを購入して。
私がどんなわがままを言っても、どんなものをねだっても、彼は全てを受け入れ願いを叶えてくれる。
ううん。願い以上のものを与えてくれて、その度に私の胸を震わすのだった。
「ねえ、悟さん。私もう、仕事辞めてもいい? 結婚したら家庭を守って、悟さんの身のまわりのことに専念したいの」
「もちろんだよ。その方が俺も嬉しい。まだ言ってなかったけど、うちペットいるから、尚更香織が家に居てくれると助かる」
「そうなの! 悟さん、ペット飼ってるんだ。なんの動物?」
悟さんは恍惚とした笑みを浮かべて、「犬だよ」と答えた。
その眼差しは陽だまりのように優しくて、わんちゃんへの愛情が窺える。
「私もわんちゃん大好きだから嬉しい! 一緒に暮らすの楽しみだなぁ」
「俺も楽しみだよ」
悟さんと、可愛いペットとの夢のような生活に思いを馳せる。
家事は面倒だけれど、暮らしてから少しずつ何かと理由をつけてハウスキーパーさんをおねだりすればいいことだ。
私は今まで我慢してきたエステやネイル、趣味の習い事などを満喫させてもらおう。
彼には私をそんなふうに養える余裕も、優しさだってある。
「悟さんと出会えてよかった」
はにかんで笑うと、繁華街の人混みの中、私をぎゅっと抱き締めてくれる。
周りの人達から羨望の眼差しを浴びながら、二人だけの世界に没頭して口づけを交わした。
「香織、……約束してほしい。これから先、何があっても俺のことを愛してくれる?」
悟さんの真っ直ぐな視線に心を射抜かれて、満面の笑みで頷いた。
「もちろん。ずっとあなただけを愛し続ける」
今、私は世界で一番の幸福を手にしている。
私はそれを享受する権利や資質があるんだ。
今まで苦労してきた日々が報われる時が来た。
数日後には勤めていた老人ホームを退職し、引っ越しの手続きも始めた。
薔薇色の日々が私を待っている。
考えただけで高揚し、全てのものが煌めいて見えた。
お互いの両親への挨拶も好感触で、何もかもが順風満帆だった。
初めて会った日から一ヶ月と経たないうちに、二人で役所へ結婚届を提出し、マリッジリングを購入して。
私がどんなわがままを言っても、どんなものをねだっても、彼は全てを受け入れ願いを叶えてくれる。
ううん。願い以上のものを与えてくれて、その度に私の胸を震わすのだった。
「ねえ、悟さん。私もう、仕事辞めてもいい? 結婚したら家庭を守って、悟さんの身のまわりのことに専念したいの」
「もちろんだよ。その方が俺も嬉しい。まだ言ってなかったけど、うちペットいるから、尚更香織が家に居てくれると助かる」
「そうなの! 悟さん、ペット飼ってるんだ。なんの動物?」
悟さんは恍惚とした笑みを浮かべて、「犬だよ」と答えた。
その眼差しは陽だまりのように優しくて、わんちゃんへの愛情が窺える。
「私もわんちゃん大好きだから嬉しい! 一緒に暮らすの楽しみだなぁ」
「俺も楽しみだよ」
悟さんと、可愛いペットとの夢のような生活に思いを馳せる。
家事は面倒だけれど、暮らしてから少しずつ何かと理由をつけてハウスキーパーさんをおねだりすればいいことだ。
私は今まで我慢してきたエステやネイル、趣味の習い事などを満喫させてもらおう。
彼には私をそんなふうに養える余裕も、優しさだってある。
「悟さんと出会えてよかった」
はにかんで笑うと、繁華街の人混みの中、私をぎゅっと抱き締めてくれる。
周りの人達から羨望の眼差しを浴びながら、二人だけの世界に没頭して口づけを交わした。
「香織、……約束してほしい。これから先、何があっても俺のことを愛してくれる?」
悟さんの真っ直ぐな視線に心を射抜かれて、満面の笑みで頷いた。
「もちろん。ずっとあなただけを愛し続ける」
今、私は世界で一番の幸福を手にしている。
私はそれを享受する権利や資質があるんだ。
今まで苦労してきた日々が報われる時が来た。
数日後には勤めていた老人ホームを退職し、引っ越しの手続きも始めた。
薔薇色の日々が私を待っている。
考えただけで高揚し、全てのものが煌めいて見えた。
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