ビバリウム

結城由真

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「ぁんっ……」

 後ろから深く激しく突かれ、あまりの快感に何度も意識が飛びそうになりながらひたすら喘いだ。
 火花が走るように目の前がチカチカする。
 こんなに激しいセックスは初めてだ。

「香織ちゃんっ……ナカすごい……」

 汗だくになりながら狂ったように腰を振り続け、羞恥心も忘れ、獣のような声を上げる。

「お……ぉお……」

「ぁあああああ!」

 カフェで数時間お互いのことを話してから、すぐに私達はホテルに移動して行為に及んだ。
 話している時点で意気投合していたし、結婚についての細かな希望も合致した。
 最後に確認することといえば、身体の相性だけだったのだ。

 悟さんの体力は桁違いで、何度も体位を変えながらたっぷりと私を可愛がってくれる。
 優しく丁寧な手つきとテクニックに骨抜きになり、すっかり彼の虜になってしまった。

「……も……だめ……」

 ぐったりとうつ伏せになり果てる私を、悟さんは身体を繋げたまま優しく撫でてくれる。

「も……さいこう……」

「俺達、身体の相性も良いね」

 こんなに快楽に溺れたことなんてない。
 引き締まった肉体に包まれるだけで狂おしいほど身体は熱くなり、触れられると電流が走ったような刺激に満たされる。
 まるで全身が性感帯になってしまったかのよう。
 硬く隆々と昂ぶった巨根に奥まで突かれまくり、何度絶頂に咽び泣いたかわからない。
 涙と汗と精液だらけの身体で朦朧と横たわり、次が始まるまで少しでも体力を温存させた。

「やっぱり香織は最高だよ。もう君しか考えられない」

「私も……」

 指を絡ませて何度も口づけを交わし、恍惚と見つめ合う。
 美しい瞳が私を映しているかと思うと、たまらない幸福に打ち震えた。
 こんなに我を忘れるくらい人を好きになったことはない。
 顔も身体も、心だって。
 全て非の打ち所なく私を惑わせる。

「すぐに籍を入れよう? 指輪も買わないと」

 性急な彼が愛らしくて、くすっと笑う。

「麻布にマンションを購入してある。家族で住むには充分な広さだよ。すぐに越しておいで」

 勝った、と漠然と思った。
 私は友達や同僚の誰よりも幸せな人生を手に入れた。
 誰もが羨むほどの素敵な人と、何不自由なく暮らしていくことができる。
 
「……本当に、私でいいの?」

 わざとしおらしく尋ねた。
 今更やめるなんて言わせない。だけどもっと、私に対しての誠意を見せてほしかった。

「言っただろ? 見た目に囚われない美しい心の持ち主の君に惹かれたんだ」

 もっと。

「君じゃなきゃだめだ」

 もっと賞賛して。

「君は心も身体も最高だよ」

 溶けるくらいに甘やかして。

「愛してるよ」

 ケタケタと笑いが込み上げてくるのを必死に隠しながら、代わりに嗚咽を漏らし彼の胸に顔を埋めるのだった。
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