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第十九話 脳内ピンク王子の失態

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ピオミルは火魔法が使える。

侯爵家の血筋だし、魔装戦ではきっと赤い鎧姿が映えるだろうと思い、彼女を出場選手に推薦しておいた。
どうせならその実力で、エリシャをやっつけてほしい。

私が使える魔法は土魔法で、特に防御壁特化だから戦いには向かないのだ。

用意した王族用の控室に、ピオミルを連れてやってきた。


「あの、ギース様、ここは?」

「遠慮するな。王族用の控え室だが、お前は次期王子妃だからな」

「あの、控え室って……」

「ああ。ははっ、魔装戦の選手登録、しておいたぞっ」


グッとサムズアップしてウインクしてみせると、ピオミルの顔色がサーッと青ざめた。


「ど、どうした?」

「ギース様……魔装戦って魔法で戦う大会ですよね?」

「ああ、まあ厳密に言うと魔法を纏って戦う大会、だな」

「わ、わたしそんなことできませんっ」

「え?」


なんと、聞くところによると、ピオミルは火魔法が使えはするが、魔力が少ないらしい。魔力が少ないと、鎧や武器として纏い、それを持続する必要がある魔装には向かない。なんてことだ!


「そうなのか?! なんだ、エリシャをこてんぱんにしてやるいい機会だと思っていたのだが……」


魔装を維持できないとなれば、そもそも大会に出るのも厳しいだろう。私の下調べ不足だった。以前ピオミルが、いじめてくる姉を火魔法でやり返した、と言っていたからエリシャより強いのかと思ったが……、そうか、それも小さい子供の頃の話だったのだな。


「お姉様をこてんぱんに……」

「ああ、私は防御特化の土魔法だから、魔装戦には向いていないしな」

「それなら……」

「ん?」


ピオミルは俯いて、何やら考え込んでいる様子だ。とりあえず座らせ、側近にはピオミルの参加取り消しを申し出るよう伝えた。


「ギース様っ」

「!」

「お姉様をギャフンと言わせる、いい考えが浮かびましたわっ」

「なに! ほんとうか!」

「ええ、お耳を貸してください」

「あ、ああ」


そしてそっと私の耳に寄って話始めるピオミル。いっ、息が……や、やわらかいものがっ……!!


「――どうです?」

「っあ! ああ、す、素晴らしいと思う!」

「まあ! よかったわ! ではさっそく仕掛けてきますね!」


そういって素早く部屋を出ていくピオミルを、私は見送った。



しまった。

思考がピンクに支配され、ほとんど聞いていなかった。




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