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断章 悪魔の誕生
4話 放たれた悪魔
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勇者と魔王、相対する光と闇が一つとなったことで世界はさらなる闇に覆われた。
それは純粋な悪意、憎悪、嘆き。
光など一切存在しない世界。
リリーはそんな光景を目にしても後悔などはしなかった。というのも、これが世界の転換期だと考えていたのだ。
「では頼むのじゃ……我が友リリーよ」
そう言ってリリスは光の粒となって消えた。
リリーは空を見上げる。
この暗い暗い空に向かって光の粒は昇っていく。
追い掛けるようにリリーは黒翼を広げ、空へと向かって飛び立った。そしてさっきまでは闇に覆われていたはずの光景は嘘のように、色鮮やかな物に変わったのだ。
青空へと変わりやがて太陽が昇る。草木は風に揺られ、川の水は時間が経過するとともに勢いを増す。光と闇が一つになったことで力のバランスが均衡になったのだ。
「私が必ず果たしてみせます。あなたのその強いその信念を絶対に忘れません」
この時、リリーは悪魔リリスとして生きることに決めたのだった。
そしてリリーの飛び立つ姿を見たジーレアス帝国皇帝ユルゲンと三勇者は動揺を隠し切れなかった。殺したはずのリリーが未知の何かに生まれ変わりを遂げた。それも勇者の力はもちろん魔王の力までも取り込んで。
「ゆ、勇者! あれを何とかせぬか」
「ぐっ……」
「いや、さすがに」
「興味ないな」
ユルゲンの言葉を人蹴りした三勇者。
しかし彼らは思ったより単純な生き物だった。
ユルゲンの命により開かれた勇者お披露目パレード。馬に跨り、三勇者は帝国の民に送り出される。
自分たちが称えられている、そんな優越感に浸っていた三勇者は声を荒らげ帝国の民に告げた。
「必ずや俺達で」
「あの化け物を」
「葬り去るであろう」
と、声を上げていたのだが、ユルゲンは唇をギュッと噛み締めた。なぜならあの三勇者が無事で帰ってくる、そんな保証はないからだ。
だとするならば今後の帝国を守護するのは誰に。
ユルゲンは考えた。
先に対策を取って新たな勇者の召喚を行うべきかを。しかしどんな人物が召喚されるかは不明だ。
その時だった。
ユルゲンが魔王軍侵攻の際、使おうとしていた天の水晶が届いたのは。
天の水晶、それは遥か昔、世界を創造したとされる女神が地上に落としたとされる代物。その水晶には天使の力が宿ると古代より言い伝えられ、とある地域では崇める対象とされてきた。
崇める者には人智を超えた力を。
崇めぬ者には災いを。
そう伝えられてきたのだ。
そんな逸話が残された天の水晶。
もはやこれを信じるほか、帝国を救う道がないのは確かだった。よってユルゲンは毎日、毎日教会に赴いてはその水晶と女神像に祈りを捧げるのだった。
それは純粋な悪意、憎悪、嘆き。
光など一切存在しない世界。
リリーはそんな光景を目にしても後悔などはしなかった。というのも、これが世界の転換期だと考えていたのだ。
「では頼むのじゃ……我が友リリーよ」
そう言ってリリスは光の粒となって消えた。
リリーは空を見上げる。
この暗い暗い空に向かって光の粒は昇っていく。
追い掛けるようにリリーは黒翼を広げ、空へと向かって飛び立った。そしてさっきまでは闇に覆われていたはずの光景は嘘のように、色鮮やかな物に変わったのだ。
青空へと変わりやがて太陽が昇る。草木は風に揺られ、川の水は時間が経過するとともに勢いを増す。光と闇が一つになったことで力のバランスが均衡になったのだ。
「私が必ず果たしてみせます。あなたのその強いその信念を絶対に忘れません」
この時、リリーは悪魔リリスとして生きることに決めたのだった。
そしてリリーの飛び立つ姿を見たジーレアス帝国皇帝ユルゲンと三勇者は動揺を隠し切れなかった。殺したはずのリリーが未知の何かに生まれ変わりを遂げた。それも勇者の力はもちろん魔王の力までも取り込んで。
「ゆ、勇者! あれを何とかせぬか」
「ぐっ……」
「いや、さすがに」
「興味ないな」
ユルゲンの言葉を人蹴りした三勇者。
しかし彼らは思ったより単純な生き物だった。
ユルゲンの命により開かれた勇者お披露目パレード。馬に跨り、三勇者は帝国の民に送り出される。
自分たちが称えられている、そんな優越感に浸っていた三勇者は声を荒らげ帝国の民に告げた。
「必ずや俺達で」
「あの化け物を」
「葬り去るであろう」
と、声を上げていたのだが、ユルゲンは唇をギュッと噛み締めた。なぜならあの三勇者が無事で帰ってくる、そんな保証はないからだ。
だとするならば今後の帝国を守護するのは誰に。
ユルゲンは考えた。
先に対策を取って新たな勇者の召喚を行うべきかを。しかしどんな人物が召喚されるかは不明だ。
その時だった。
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天の水晶、それは遥か昔、世界を創造したとされる女神が地上に落としたとされる代物。その水晶には天使の力が宿ると古代より言い伝えられ、とある地域では崇める対象とされてきた。
崇める者には人智を超えた力を。
崇めぬ者には災いを。
そう伝えられてきたのだ。
そんな逸話が残された天の水晶。
もはやこれを信じるほか、帝国を救う道がないのは確かだった。よってユルゲンは毎日、毎日教会に赴いてはその水晶と女神像に祈りを捧げるのだった。
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