208 / 244
第204話 巡回③
しおりを挟む「・・・・・・・・佐藤です。」
「へぇー、佐藤さんって言うんですね!あれ?そんな人居たっけなぁ?」
「あ、実は私も今日が初めての警備作業でして、昨日はシフトが無かったんですよね!!ホント、この仕事キツ「黙れ侵入者、お前が変装した警備員なのは分かっているんだよ」ッ⁉な、何を言って「黙れと言ってるんだ!」ッッ⁉チッ」
再度、警告を促してみるが、相手は舌打ちをしたのみで、こちらを睨みつけながら警棒を右手に、右足を前に出し、半身の状態で腰を低くする構えを取った。
体格が良いせいか、どっしりとして、様になった格好にも思えるが動きは素人。ただ単に、それっぽい構えを取って威嚇しているだけだろう。
真田は、体の重心が真ん中に来るよう意識しながら左足を少し下げ、僅かに腰を低くする。
「クソッ、何でバレたんだ!この前は、上手くいったのに!!」
「・・当然だ。お前のその靴、登山用だろ?どうせ、登り降りする時にスパイクが効いて楽だから、その靴にしているんだろうが、基本、室内を見回っている警備員がそのような靴を履いて来る訳無いだろ。」
「なっ⁉そんな理由で!」
「そもそも、今日担当する警備員との顔合わせに、お前みたいな奴は居なかった。俺は、人の顔を覚えるのが、人より得意でね。お前、馬鹿だろ。」
「はぁ⁉クソ、クソ、クソッ!!!!はぁ、はぁ。」
相手から、気になる情報が飛び出て来たが表情を崩さず、仕掛けるタイミングを計る。
ちなみに、警備員の顔合わせなどは計画されておらず、真田個人が高太郎に頼んで、この時間に担当している警備員の顔写真を見せて貰っただけだ。まぁ、顔を覚えるのは本当に得意なのだが。
どんどん顔色が悪くなっていく目の前の男。
面倒だ、いっそのこと、相手から仕掛けられた方が楽なのに。
そう考えていた時、相手が決壊した。
「捕ま、捕まりたくはねぇ!やる、やってやる!しゃらぁ!!」
「ふっ、シッ!」
「ガァッ⁉ガッ!」
真田の頭を狙い、上から叩きつけられるように振られた警棒を、僅かに体の重心を右側に傾けて躱すと、警棒が顔のスレスレを通ると同時に、相手の鳩尾部分に軽く掌底を当てる。
そのまま警戒を解かずに後ろへ下がり、男との距離を開けて視線を外さないように動く。
懐かしい。俺も海外遠征の時に、初見でこれを攻撃を喰らって時は、立てなかったなぁ。
「ゴホッゴホッ!!・・痛ぇ・・・・痛ぇ・・ゴホッ・・・殺・・「チャキッ」・・・殺す!!」
鳩尾を衝かれ、苦しそうに蹲っていた男が突如立ち上がると、こちらに向かって突進してくる。よく見ると、その手には刃渡り10センチほどの折り畳みナイフが握られていた。
これは、真田も予期していない事態だったのだが、培ってきた経験が冷静さを取り戻してくれる。
まず、真田が観察した限り、衣服の隙間などに折り畳みナイフを隠している素振りは無かった筈だ。それらしい膨らみすら感じられなかったのだから。
次に考えられるのは、衣服のポケットに入れていた可能性だ。ポケットの場合、多少膨らみを見つけても、鍵や携帯電話を入れていることがほとんどの為、それほど気にはならない。しかし今回は、男が蹲ってから一度も目を離していない為、男がポケットに手を入れるような仕草を、一度もしていないのは明確だ。
そう考えた時、折り畳みナイフを隠すことが出来て、蹲りながらも真田から気付かれずに折り畳みナイフを取り出せる場所はたった一つ、男性が履いている登山靴の中だ。
「なるほど。どうしてそんな場所に隠していたのかは分からないが、完璧な不意打ちだ。ただ、相手が悪すぎる。「ススッスッ」」
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
Vママ! ~中の人がお母さんでも推してくれる?~
ウメ
青春
「こんマリ~! メタライブ0期生、天母(あまも)マリアですぅ」
個性豊かなVTuberを抱える国内最大の運営会社メタライブ。マリアはそれを発足時から支える超有名VTuberだ。
そんな彼女の大ファンである秋山翔は、子離れできない母を煙たがる思春期の高校一年生だった。
しかし翔はある日、在宅ワークをする母の仕事部屋を覗き、マリアとして配信する姿を目撃してしまう。推しの中の人は、自分のウザい母だったのだ!
ショック死しそうになる翔。だが推しを好きな気持ちは変わらず、陰から母(推し)をサポートすることに。そんな事情を知らず、母はお風呂配信やお泊り配信の仕事を約束してしまい……
――中の人が母だと知った息子を中心に織りなす、VTuber母子コメディ開幕!
(※本作は【切り抜き】がきっかけで物語が進みます。また、第1話はキャラ紹介が中心になっています)
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
祭囃子を追いかけて
壺の蓋政五郎
大衆娯楽
鎌倉の小さな町に四百年続く例大祭がある。戦時中の一時期には中断されたが町の復興と共に再開されずっと続けられている。その小さな町に生まれ育った子ども等は必然的にこれを継いで行かなければならない。選択肢はなく消防と氏子という親達の繋いできたやりかたでこの町を守り繋いでいく使命がある。北川賢治もその一人である。しかし大事な時期に酔っ払い運転を二度続け半年の実刑となった。北川家は今年の例大祭の当番である。これだけはきっちりとやりきらなければならない。お祭りに掛ける男達とそれを支える女達、そして祭の主役に憧れる子供たちが祭囃子を追いかける。笑いと涙の物語です。
切り抜き師の俺、同じクラスに推しのVtuberがいる
星宮 嶺
青春
冴木陽斗はVtuberの星野ソラを推している。
陽斗は星野ソラを広めるために切り抜き師になり応援をしていくがその本人は同じクラスにいた。
まさか同じクラスにいるとは思いもせず星野ソラへの思いを語る陽斗。
陽斗が話をしているのを聞いてしまい、クラスメイトが切り抜きをしてくれていると知り、嬉しさと恥ずかしさの狭間でバレないように活動する大森美優紀(星野ソラ)の物語
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる