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小さなフェンリル
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魔物を倒しながら、進む。迷いなく進むチョコの後ろをついて行きつつ、山に入っていく。
(ここから先は馬は無理だね)
馬は亜空間のゲストスペースに入れ、歩いて山登りだ。
「木が黒ずんでる?」
「瘴気の影響だろうね…この辺はもう、立ち枯れ状態だ」
怖いな…具体的にどういう物かは分からないけど、魔物が集まって、狂わせたりするんだよね…そういう魔物は、もう既に片付いたみたいだけど。
山の開けた所にある石の台座のような所に、マシロがいた。私の姿を見て、嬉しそうに駆け寄ってくる。
長毛種でもふもふしてるから分かりにくいけど、痩せた気がする。
毛の絡まりも酷いな…クリーンだけじゃなくて、シャンプーも必要だよね。
台座の上には、仔犬?がいた。
「クゥン」
うわ…小さい!フェンリルって狼だったよね?
(サヤカ…お願い)
神様…この気持ち悪い瘴気の浄化をお願いします!弱っているフェンリルの状態も、治して下さい!
魔力が一気に抜ける…気持ち悪い。魔力不足状態だ…
立っていられなくて、石の台座に横たわる。
不思議…石に生命力を感じる。だがらか、少しは楽かな。だからフェンリルもここにいたのかな?
(大丈夫?…フェンリルは、元に戻らないか…)
「え…?まだ不味い状態なの?」
「本来なら、もっとずっと大きいんだ。何か変な物を食べてしまったらしくて」
(瘴気を発生させてる物を何とかしたくて、噛み砕いて食べたら…少しは収まったけど、元には戻らなくて。でも、しばらくこの魔力を浴びていれば、何とかなると思う)
少年のような声だ。チョコの声とも違うこれは、フェンリルの声だね。
(サヤカ、しばらく様子を見た方がいいと思うんだ。彼にも名前を付けてあげて)
別に従魔にする訳じゃないし、いいのかな?
「じゃあ、リルで」
あれ?パスが繋がったみたいだけど、いいのかな?
フェンリルだからと、小さいからって事で。
「リルもここから離れて大丈夫なの?」
(ここにいる方が危ない。力も何もかも減退した状態だからね)
「チョコとマシロは平気なの?」
(サヤカの側にいればすぐに良くなるよ。アッシュ、この台座の周辺だけでいいから、リンゴの苗木を植えてもらえる?)
黒ポットに植えてある苗木を、クラウドさんにも手伝ってもらって植えた。
「水の精霊さん、土の精霊さん、お願いね?」
スキルでたっぷりと水まきして、亜空間で休んだ。
夕方ご飯を用意する私の足元で、へそ天になってすり寄るマシロ。
「料理してる時は危ないからやめて。マシロの力に私は耐えられないんだから。それに、まだクリーンしかしてないからだめ。今日はシャンプーもするよ」
「にゃう!」
「嫌じゃないの。毛が絡まってるんだから」
「…にゃっ!」
マシロの周囲を風が撫で、毛の塊が落ちた。
(マシロも必死だな。サヤカの水も嫌なの?)
「にゃん…」
飲むのだけがいいらしい。
でもだめだよ?こっちに来てからまともにお風呂に入ってないんだから。折角ペット用のシャンプーも手に入ったし、今日は綺麗にする!
「なーう。なーう」
不平不満たらたらだけど、子猫の時みたいに爪を立てたりしない。今、それやられたらこっちが致命傷になりかねない。
ボトル一本全て使い切って、ノミとりシャンプーを馴染ませる。これしかなかったからだけど、この世界にはノミもいなさそう?いたらきっと魔物だよね。
「頑張ったねー、マシロ。シャンプーのいい香りだよ」
ドライで乾かしてあげるともっふもふの柔らかい手触りになる。
自分も手早く済ませてマシロを探すと、亜空間の庭で背中を土にこすりつけていた。
「全く…大きくなろうが強くなろうが魔物になろうが、やってる事は猫の時と一緒なんだから」
流石にまたシャンプーする気力はないので、クリーンをさっとかける。
肉中心の料理に、チョコもマシロも嬉しそう。リルには小さく切ってあげたけど、その必要はなかったみたいだ。
クラウドさんとアッシュさんは、食事をしながらワインを飲んでいる。
「聖女様も飲みますか?成人されてるんですよね?」
「ええと…元の世界では二十歳まではアルコールは飲めなくて…なので止めておきます。それに、お酒を飲むと成長が止まるって聞いた事がありますから」
「あー…切実だね。初耳だけど、元聖女達は飲んでたよ?」
「成長してたし、いいんじゃないですかね?」
だからあんな、胸元が見えるような格好も出来たのだろう。…個人差だ。私だって、全く成長してない訳じゃないし。
クラウドさんがいない今までは、お酒なんて全然飲もうとしなかったのに。やっぱり一緒に飲む人がいないとつまらないのかな。
一晩寝て、翌朝植えたリンゴの木の様子を見に行くと、もうしっかりと根を張っていて、大丈夫そうだ。
(うん。一度しっかりと瘴気を浄化したからか、周囲の環境も良くなってるね)
「そうなんだ?確かに黒い靄みたいなのは見えないけど、精霊はちょっとしかいないね」
(そんなにすぐには増えないよ。この山裾にある鉱山にも魔物が入り込んでいるだろうから、ちょっと行って見てくるよ)
「ん。気を付けてね」
今日は1日、外で過ごすつもりだ。その方が精霊が集まりそうだし。
鉱山の方は大丈夫だった。大概の魔物は、チョコが近寄るだけで逃げちゃうからね。
「じゃあ、一度里に戻ろうか」
ブリテンドの王には会わないとならないけど、サヤカはしっかりと里にいて貰わないと。
(ここから先は馬は無理だね)
馬は亜空間のゲストスペースに入れ、歩いて山登りだ。
「木が黒ずんでる?」
「瘴気の影響だろうね…この辺はもう、立ち枯れ状態だ」
怖いな…具体的にどういう物かは分からないけど、魔物が集まって、狂わせたりするんだよね…そういう魔物は、もう既に片付いたみたいだけど。
山の開けた所にある石の台座のような所に、マシロがいた。私の姿を見て、嬉しそうに駆け寄ってくる。
長毛種でもふもふしてるから分かりにくいけど、痩せた気がする。
毛の絡まりも酷いな…クリーンだけじゃなくて、シャンプーも必要だよね。
台座の上には、仔犬?がいた。
「クゥン」
うわ…小さい!フェンリルって狼だったよね?
(サヤカ…お願い)
神様…この気持ち悪い瘴気の浄化をお願いします!弱っているフェンリルの状態も、治して下さい!
魔力が一気に抜ける…気持ち悪い。魔力不足状態だ…
立っていられなくて、石の台座に横たわる。
不思議…石に生命力を感じる。だがらか、少しは楽かな。だからフェンリルもここにいたのかな?
(大丈夫?…フェンリルは、元に戻らないか…)
「え…?まだ不味い状態なの?」
「本来なら、もっとずっと大きいんだ。何か変な物を食べてしまったらしくて」
(瘴気を発生させてる物を何とかしたくて、噛み砕いて食べたら…少しは収まったけど、元には戻らなくて。でも、しばらくこの魔力を浴びていれば、何とかなると思う)
少年のような声だ。チョコの声とも違うこれは、フェンリルの声だね。
(サヤカ、しばらく様子を見た方がいいと思うんだ。彼にも名前を付けてあげて)
別に従魔にする訳じゃないし、いいのかな?
「じゃあ、リルで」
あれ?パスが繋がったみたいだけど、いいのかな?
フェンリルだからと、小さいからって事で。
「リルもここから離れて大丈夫なの?」
(ここにいる方が危ない。力も何もかも減退した状態だからね)
「チョコとマシロは平気なの?」
(サヤカの側にいればすぐに良くなるよ。アッシュ、この台座の周辺だけでいいから、リンゴの苗木を植えてもらえる?)
黒ポットに植えてある苗木を、クラウドさんにも手伝ってもらって植えた。
「水の精霊さん、土の精霊さん、お願いね?」
スキルでたっぷりと水まきして、亜空間で休んだ。
夕方ご飯を用意する私の足元で、へそ天になってすり寄るマシロ。
「料理してる時は危ないからやめて。マシロの力に私は耐えられないんだから。それに、まだクリーンしかしてないからだめ。今日はシャンプーもするよ」
「にゃう!」
「嫌じゃないの。毛が絡まってるんだから」
「…にゃっ!」
マシロの周囲を風が撫で、毛の塊が落ちた。
(マシロも必死だな。サヤカの水も嫌なの?)
「にゃん…」
飲むのだけがいいらしい。
でもだめだよ?こっちに来てからまともにお風呂に入ってないんだから。折角ペット用のシャンプーも手に入ったし、今日は綺麗にする!
「なーう。なーう」
不平不満たらたらだけど、子猫の時みたいに爪を立てたりしない。今、それやられたらこっちが致命傷になりかねない。
ボトル一本全て使い切って、ノミとりシャンプーを馴染ませる。これしかなかったからだけど、この世界にはノミもいなさそう?いたらきっと魔物だよね。
「頑張ったねー、マシロ。シャンプーのいい香りだよ」
ドライで乾かしてあげるともっふもふの柔らかい手触りになる。
自分も手早く済ませてマシロを探すと、亜空間の庭で背中を土にこすりつけていた。
「全く…大きくなろうが強くなろうが魔物になろうが、やってる事は猫の時と一緒なんだから」
流石にまたシャンプーする気力はないので、クリーンをさっとかける。
肉中心の料理に、チョコもマシロも嬉しそう。リルには小さく切ってあげたけど、その必要はなかったみたいだ。
クラウドさんとアッシュさんは、食事をしながらワインを飲んでいる。
「聖女様も飲みますか?成人されてるんですよね?」
「ええと…元の世界では二十歳まではアルコールは飲めなくて…なので止めておきます。それに、お酒を飲むと成長が止まるって聞いた事がありますから」
「あー…切実だね。初耳だけど、元聖女達は飲んでたよ?」
「成長してたし、いいんじゃないですかね?」
だからあんな、胸元が見えるような格好も出来たのだろう。…個人差だ。私だって、全く成長してない訳じゃないし。
クラウドさんがいない今までは、お酒なんて全然飲もうとしなかったのに。やっぱり一緒に飲む人がいないとつまらないのかな。
一晩寝て、翌朝植えたリンゴの木の様子を見に行くと、もうしっかりと根を張っていて、大丈夫そうだ。
(うん。一度しっかりと瘴気を浄化したからか、周囲の環境も良くなってるね)
「そうなんだ?確かに黒い靄みたいなのは見えないけど、精霊はちょっとしかいないね」
(そんなにすぐには増えないよ。この山裾にある鉱山にも魔物が入り込んでいるだろうから、ちょっと行って見てくるよ)
「ん。気を付けてね」
今日は1日、外で過ごすつもりだ。その方が精霊が集まりそうだし。
鉱山の方は大丈夫だった。大概の魔物は、チョコが近寄るだけで逃げちゃうからね。
「じゃあ、一度里に戻ろうか」
ブリテンドの王には会わないとならないけど、サヤカはしっかりと里にいて貰わないと。
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