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コッコの卵と鶏料理

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 二階層はコッコだ。鶏だけど魔物。大きさもマシロよりもちょっと小さい位。そして凶悪。嘴でつつかれると痛いし、蹴爪で蹴られると怪我する。大概はマシロが守ってくれるけど、自分で避ける努力もしなきゃだめだって。

 荷物持ち(ポーターというらしい)の孤児を雇う場合には、ちゃんと守ってやらないといけないし、傷も治してやらないとだめ。

 ああ…でも多くの子は、コッコ位木の枝で倒せるみたいだ。私よりも強い。
 決してレベルが高いとか、素早さに勝っている訳ではないみたいだけど、慣れている?的な。

(ほら、同じ年齢位の子でも、あんな風に戦えてるんだから、サヤカも頑張らないと!)
 いや…こっちの人って大きい人多いよね。子供達も、顔立ちは幼く見えるし、多分大きく見えても成人してないんだろうな。

 ダンジョンの便利な所は、解体済みの部位が残る所。胸とか腿とか、鑑定しなくても部位が分かる。そして、卵もたまに現れる。これは素直に嬉しい。

 今は異世界ショップの品物も三割位に増えたけど、やっぱり欲しい時にはなかったりするし、だったらダンジョンでたくさん手に入れておきたいよね。

 ちゃんと鑑定したけど、生食しても大丈夫みたいだ。
 半熟ハムエッグ…茶碗蒸し。それにプリンも食べたいよね。

「もしかして…卵が欲しいの?」
「え?も…もしかして、アッシュさんて、心が読めるの?」
「まさか。俺には闇魔法は使えないし。というか、サヤカは分かりやすすぎだから」
 頬をさすって少し落ち込む。ガリオン王国で教わった事は、私には全く身についていないみたいだ。

 貴族社会に縁のない私には関係ないしね。
 アッシュさんは外交官的な事やってるから、そういうのは得意そう。
    
「だって、異世界ショップでも狙って買える訳じゃないし、卵を使った料理ってすごく多いんですよ?」
「だったら、コッコ位余裕で倒せるようにならないと」
 まだどこか、生き物を倒す事に対して躊躇いがあるのか。
「サヤカ、ダンジョンの魔物は普通に生きている魔物とは違う…上手く言えないけど、生命の輪廻からは外れた存在。逆に倒される側にさえならなければ、人にとっては有益な物だよ」

 確かに、倒したら解体された肉の一部だけ残るとか、まるでゲームみたいだよね。
 私の亜空間といい、ステータスの事といい、どこか現実的じゃない所もある。でも今はここが私の生きている世界だし、帰る事は出来ない以上、しっかりしないと。

「にゃー?」
「大丈夫だよ、マシロ」
 マシロがいてくれて本当に良かった。守る者がいるなら私は頑張れる。
 なんて、逆に守られてばかりの私は偉そうな事言えないけど。

 コッコがマシロの猫パンチ一発で卵に変化する。
 …これ、アイテムボックスがなかったら持ち帰るの大変なんじゃないかな?籠だと割れそうだし。

「アッシュさん、マジックバックとかってあるんですか?」
「ん?たまにダンジョンから発見されるけど、浅い階層には出ないよ?」
 じゃあ、貴重品なんだね。
「魔道具としては作られてないんですね」
「昔の勇者パーティーに作れる人がいたけど、今はほぼいないね」
「ほぼ?」
「エルフの里に一人いるけど、容量と重量の付与だけで、時間は普通に経過するから、アイテムボックスのようにはいかないね」

 付与は、自分が持っているスキルしか付けられないし、それも全て付けられる訳じゃない。私も精々バンダナに冷却の付与しか付けられないし。しかも一時付与で、ちょっとひんやりする程度だ。

 付与術師なんて職業もある。冒険者としてどうしても駄目だったら、考えてみるべきなのかも。

「サヤカ?戦闘の中でスキルは育っていく物だし、今からそんな、後ろ向きな考えじゃだめだよ」
 あぅ…アッシュさんて、本当に心が読めるんじゃないかな…というか、引きこもりの私には、合ってる職業だと思うんだけどな。

 あ、扉だ。丁度誰もいなかったので、アッシュさんが扉を開けようとしたけど、チョコがさっと蹴り開けた。
「えー。また?」
 通常のコッコは数え切れない位いて、ふた回り位大きなコッコ、更にはチョコ位大きなコッコもいる。
(先に粗方倒すから、そしたら扉を開けるから、中に入って)
「はあ…本来なら同一パーティーでも、そんな事出来ないんだけどな…チョコ殿は規格外過ぎる…」

 チョコとマシロが飛び込んで、そんなに待たないうちに扉が開いた。

「え、こんな短時間で?!」
 残るはほんの数羽。大きいのはいない。
 モチが鞄から飛び出して、酸を飛ばしてコッコを倒す。
 残るは大量のドロップアイテムのみ。

 これは、同じ物を認識して集めるのは難しそうだな。

 とりあえず卵。胸と腿は一緒に集められた。それからササミと手羽先、手羽元。鶏冠は手で拾う。問題は、ダチョウサイズの卵と巨大な肉…どう料理しよう?茶碗蒸しなんて何人分出来るかな?

(サヤカ、お腹空いたよ)
 あれ。もうそんな時間なんだ。コッコのフロアには、結構な時間いたからね。でもチョコ、さっきつまみ食いしてたよね?
 ちゃんと見てたよ?…まあ、作るけどね。

 胸肉は、前に見つけたローズマリーと一緒にソテーする。その合間に大根を大量に切って、手羽先と煮る。こっちはまた後でだ。
 その間に、洗っただけのじゃがいもを蒸し焼きにする。

「サヤカ、こんなもんでどうかな?」
 アッシュさんには、オーク肉を串に刺してもらっていた。
「足りるかな?」
 まあ、芋もあるしね。

「んー!胸肉とは思えないほどジューシー!」
「これは野菜じゃないよね?薬草にも見えないし」
「ハーブです。まさかこの世界にもあるとは思いませんでしたけど」
 これは、畑の妖精さんにも頼んで増殖して貰えたらいいな…

 ハーブを頼んで、レベルが上がって樹木が植えられるようになった。
「うーん…果物はとりあえず苺があるし…やっぱり油だよね」
 オリーブを頼んだら、油まで加工して貰えるって。
 ありがとう!畑スキルの妖精さん!
 スマホ操作だから、姿を見る事は出来ないけど、超有能な妖精さんだ。
 アッシュさんが言ってた精霊さんとは別だろうけど、有難い存在だ。

「ねえ、妖精さんじゃなくて、リリエルって呼んでいい?」
「私に…名前を?」
「嫌なら妖精さんでいいけど」
「いえ…っ!嬉しいです!」
    名前があった方がいいかなと思って付けてみたら、思いの外喜んで貰えた。
    ゲームのシステム上の存在だけど、最近感情があるんじゃないかと思えた。
「ふふ…いつもありがとう。リリエル」

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