上 下
149 / 166

銃の魔道具

しおりを挟む
    今日は久しぶりの鰻丼だ。
「うわ…柔らかい!」
    違う種類のヌメヌメエキスを纏っていたからか、スーパーだからか、食感が違う。味は…白焼きにも手を伸ばす。
「はふ…元の味がちょっと違うのかな?美味しい」
「うむ。気に入った」
    一切れ一口。鰻は高級品だったのに…
    まあ、ダンジョンで見かけてからは、そんなの関係なくなったけどね。

    今日は、進化して床に寝るしかなくなったランスの所に行く。
「にゃっ?!ランスとも寝て…ベッドでにゃーと寝る日がまた減ったにゃ!」
「仕方ないでしょ。それに、大きなもふもふに包まれて寝てみたいし」
    側に寄ると、お腹を見せて喜んでいるみたい。
「乗って平気?」
(問題ない)
     シュガーとはまた違った柔らかさがある。ああ…至福。

    それにしても、どうしてフレイムは私達を見失ったんだろう?認識阻害?…うーん。
    あり得ない気がする。パスが切れた訳じゃ無かったから、フレイムも焦ってなかったし。
    気がつかなかったけど、罠があったとか…明日、もう一度調べてみよう。

    次の日の朝。どうしてかここの所、早朝に目覚めてしまう。小説を読んでつい夜更かししてしまっても一緒なのだ。

    まあ、いいや。夜だと疲れてるから、スマホに入っても、必要最低限の事しか出来ないから。

    メタルにいつもの収穫をお願いして、私は型作り。昨日のヌメヌメエキスを中に入れ、乾燥させていく。
     そして、私は魔道具作りだ。魔道具の銃、魔道銃だ。
    ゴム弾でどこまで魔物相手に通用するか分からないけど、ノリで作れそう。

     こんな感じかな?形は適当だから、似た銃があるかも分からないけど、成功すればいいな。

    昔作った投擲練習用の的を立てて、充分離れて打つ。
    僅かに魔力を吸われる感覚。音は出ない。火薬を使っている訳じゃないからね。

「おー…木の的を貫通したよ」
    正直、予想以上の威力だ。これなら硬い魔物以外なら、充分渡り合えると思う。
    初めて使った銃が狙い通りに的を貫通したのも、命中スキルのお陰だろう。

    魔法もだけど、石を投げても命中スキルは成長する。でなければ、球技全般が駄目だった私が、狙って当てられるとは思えない。
  
    受けるのも避けるのも、勿論思い通りに投げるのも苦手だった…ドッジボールとかね。

    指でクルリと回して、はたと思いつく。ホルスターがないじゃん。出して打つ時も、しまう時も収納庫じゃ格好がつかない。

    魔道具登録は…止めておこう。魔物討伐に使われるのはいいけど、戦争になんて使われたくないからね。どう考えてもメインの武器は双剣だから、銃にはなり得ないけれど。

    ホルスターも出来たし、出し入れの練習をやってみた。
    いい感じ?

    弾はBB弾みたく勝手に吸い上げて装填される。
    早速試してみたい!…鱈なら倒せるかな?ミノタウロスは流石に無理だろうな…正直、慣れない銃を扱うより動いて双剣を振った方が早いだろうし、オリハルコンの剣は大概の物を切り裂く。

    それと、思いついたのはボールだ。ドライを途中で止めて、状態維持の付与をかける。思ったように、よく弾む。
    これはランスの玩具だ。ちょっと思いついて、さっきのボールより小さい物を作り、以前拾ったキラキラのトンボの羽根と、鳥の羽根を差して程よく乾燥させる。
    よし、シュガーの玩具も出来た。

    作り置きにも問題ないし、おやつもたくさんある。
「戻ろう、メタル」

「戻ったか、主」
「あれ…時間、経ってた?」
「僅かの間でも、パスが途切れれば、分かるからな」

    まあ確かに、スマホの中にいる時はみんなの様子は分からないけどね。
「ね、これを見て」
「…何だ?これは」
「銃なの。昨日集めたヌメヌメを乾燥させた弾を飛ばす武器だけど…強い魔物には効かないと思う。たまに使いたいなって」

「我の知識には思い当たる物がない。どれ…物理攻撃専門の魔道具か」
「確かにこの世界にはない物だから、使う時は慎重にするよ」
    射程は魔法には遠く及ばないし、元の世界のそれには威力も劣るだろうけど、安易に広めたくない物だからね。

「それと、シュガーとランスには玩具ね」
    シュガーは時折自分の手で弾いて玩具を追いかけ、ランスは咥えて持ってきて、尻尾が床掃除する。…可愛いんだけど、伝説の聖獣がこれでいいのか。

「魔法じゃない物を撃ち出すなんて、凄いの。ボクが考えていたのは…」
    面白い。マントの内側に定着させて、熱を発する暖かマントを作ろうとしてたなんて。

    私の考えた銃は売れない物だけど、寒さ厳しいこの世界の人達には、ヒット商品になったりするかも?勿論どうやって量産するかとか、材料の確保の問題も出てくるけど、依頼という形で出せば…ただ、ウナギなのに何故か不人気階層みたいだから、数は集まらないかも?

    海岸ダンジョンのヌメヌメウナドンはあんなに人気だから、同じように使えるなら、材料は簡単に集まりそうだけど。
「じゃあ、今日はウナドンをたくさん手に入れようか」
「欲しいのはエキスだけど、ウナドンは美味しいの」
「そうだね」

    という訳で、今日はウナドンをメインで集める事にした。
    早朝に入ったにも関わらす、人の気配はあったけど…やっぱりいなくなってしまった。
    もしや…人じゃなかったりして…お化け、とか?
「ないない!お化けも魔物、だもんね!」
「ん?」
    あう…恥ずかしい。心の内が言葉に出ちゃうと、恥ずかしいよね。
「…あれは人の気配だ。魔物ではない。だから、ゴーストの類いではない」
    …だよね。

    ウナドンと、ヌメヌメエキスをたくさん手に入れて、その日は終わりになった。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。 本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。

処理中です...