45 / 166
夏休み
しおりを挟む
いよいよ夏休みだ。ここから一番近い港は、隣国トレナットの王都にもなっていて、海岸近くの小島には、ダンジョンもあるそうだ。
そのせいもあってか、王都に入るだけでもひと苦労だ。
「ダンジョンがある王都なんて、凄いね!」
「ふふっ。主の好みを考えたら、ここしかないと思った」
「ヤブラン、メイだよ?」
「…!あ」
そしてヤブランは中性的ではあるけど、大人の男の見た目。
まあ、誰も聞いてないと思うけどね。
(中に入れたら、まずは買い物したいな)
(王都なら、品物も充実しているかもしれないな)
そう。それが狙いだったりする。海産物は勿論だけど国が違えば売ってる品物も違うだろうし、何か珍しい物もあるかも。
やっと順番が来て、ギルドカードの提示と水晶に触れるだけで門をくぐる。
ここは東京か?と思うほど人がいる。…まあ、東京に行った事なんて数回しかなかったけど。
瞬間、頭上でランスとヤブランの静かな争いがあった。
「俺の方が抱き慣れているし、もふもふの耳も触れる」
「危険察知なら負けない」
は?何の争いかと思えば、お子様抱っこをどっちがするかって事?
「いやさ、ならシュガーも抱っこしてあげたら?」
「要らないにゃ」
「私も一人で…」
「「却下!」」
…そうですか。でも私がどこに行こうと二人には分かるはずだ。パスが繋がっているんだから。
「じゃんけんで決めたらいいにゃ?じゃなければ、にゃーが抱っこするにゃ!」
いやいや。絵面的にそれはちょっと…
「じゃんけんね?ただし、それでも交替して、仲良くね!」
二人で高速じゃんけん。どっちも動体視力はいいからね。
でも、気になる店を見つける度に降ろして交替してたから、二人共疲れたと思う。
「やった!海苔発見!」
少々穴あきだけど、韓国海苔みたいで食感が面白いだろう。それにこれでおにぎりが食べられる。
ワカメもどこのお店でも安い。でもこれだけ安いって事は、ダンジョンの浅い階層で採れるのかもしれない。
「ダンジョンの情報は調べなくて良いのか?」
「分からない方がいいって事もあるじゃん?」
ゲームだって、攻略本をじっくり眺めてやるのは2週目以降だ。最初はやっぱりワクワクしながらやる方がいいよね。
スマホ農園も、かなりやり込んだゲームだったから、全く同じじゃない所が逆にいい。
でも、農業体験のゲーム感は抜けない。草むしりや肥料、害虫や連作障害、ありがちな心配は全く必要ないからね。
そのお陰で一人でもなんとかやっていけてるけど、全てを一人で毎日やるのは無理だ。
釣りは嫌いじゃないけど、海に潜って直接狩った方が効率的だし、カニとか釣れないのも手に入る。カニ重要。
でも、泳いで行く訳だからそんなに遠くまでは行けないし、全ての魚が手に入るとは思えない。
この金魚みたいな魚は食べられるのかな?
鑑定 赤金魚 甘味のある魚で、煮付けにすると美味
うわ…本当に金魚なんだ。そう考えると食欲なくすけど、美味しいなら挑戦してみたいな。
鑑定 青金魚 淡白な味で、身は柔らかい
おおう…熱帯魚みたいに派手な魚だな…微妙なネーミングだけど。
「お嬢さん、買ってくれるのは嬉しいが、腐らないうちに食べてくれよ?空納に仕舞い忘れたら大変な事になるからな」
「…え?普通その前に空間把握を覚えるんじゃ?」
「いや、俺は魔法の事は分からないが、そんな話を聞いたからな」
収納系の魔法を覚えたら絶対覚えるって訳でもないのか。ネリーの教え方が上手なんだな。
よく小説だとリストが見えたりするけど、ここではそういうのは無いからな…
空納は、時間も経過するから食べ物を入れるなら収納庫だよね。
いつもの事ながら、食べ物屋さんばかり廻ってしまう。
じゃあ、海苔も?
海岸の方に行ってみたら、海苔は養殖しているみたいだ。
「明日からダンジョンに入るのだろう?今日は休んだ方がいい」
「その前にご飯ね!」
きっと美味しい海鮮料理が食べられるだろう。
みんな少しずつ頼んだつもりだったけど、一つの量が多い。ホタテなんて顔位の大きさがあって驚いた。
残念なのは、塩のみの味付けだった事。それでも美味しかったけど、やっぱりバター醤油で食べたいよね。
「結構余ったけど…」
「問題ない」
大食いの人は痩せてる人が多かったな…こっちの世界にも大食い大会なんてあったら、ヤブランが優勝間違いなしだね。
亜空間に戻ってフレイムにもご飯をあげた。
「フレイムを連れて歩いたら目立つよね」
「止めておいた方が無難だな」
(ボクはいいよ。ボクのせいでメイに迷惑はかけられないのー)
「私がフレイムを連れていても周囲にどうこう言わせない位強くなって、ランクも上げればいいのかな?」
(ボクが進化して、人の姿になれればいいと思うのー…でも、どうすれば進化するのか分からないの…でも、気にしないで!いつものダンジョンで、人がいない時はメイが欲しい物を手に入れられるの!)
いい子だな…フレイムは。我慢させちゃっているのに。
指先で撫でてやると、嬉しそうに頭をすり寄せてくる。
順番待ちしてるにゃんこシュガーとわんこランスも撫でてやると、ヤブランは面白くなさそうに寝床に横になる。
「ふっふっふ。この特製の柔らかいブラシで磨けば鱗も傷つかずにピカピカになるよ?」
(む…我の鱗には余程の事がない限り傷はつかないが)
そうなのだ。ただし、身体から抜け落ちた鱗は別。途端に強度が下がり、加工もしやすくなる。
肌に纏って魔力を流す事で、傷一つつかなくなる。
普段、こうして寝転んでいる時は別だけど。少しひんやりしてて、触り心地がいい。
ブラシで最初は頭周辺を撫でてやる。心地いいのか、姿勢を変えて次の場所を要求する。
こうしてお腹を見せて寝転んでいる姿は、竜の威厳も何もないけどね。
「ヤブラン、明日からは初めて潜るダンジョンだし、期待しているよ?」
(無論だ)
すっかり機嫌は良くなったみたいだ。
ドラゴンで強いけど、分体として生まれてまだ数ヶ月だ。まだまだお子様だね。
そのせいもあってか、王都に入るだけでもひと苦労だ。
「ダンジョンがある王都なんて、凄いね!」
「ふふっ。主の好みを考えたら、ここしかないと思った」
「ヤブラン、メイだよ?」
「…!あ」
そしてヤブランは中性的ではあるけど、大人の男の見た目。
まあ、誰も聞いてないと思うけどね。
(中に入れたら、まずは買い物したいな)
(王都なら、品物も充実しているかもしれないな)
そう。それが狙いだったりする。海産物は勿論だけど国が違えば売ってる品物も違うだろうし、何か珍しい物もあるかも。
やっと順番が来て、ギルドカードの提示と水晶に触れるだけで門をくぐる。
ここは東京か?と思うほど人がいる。…まあ、東京に行った事なんて数回しかなかったけど。
瞬間、頭上でランスとヤブランの静かな争いがあった。
「俺の方が抱き慣れているし、もふもふの耳も触れる」
「危険察知なら負けない」
は?何の争いかと思えば、お子様抱っこをどっちがするかって事?
「いやさ、ならシュガーも抱っこしてあげたら?」
「要らないにゃ」
「私も一人で…」
「「却下!」」
…そうですか。でも私がどこに行こうと二人には分かるはずだ。パスが繋がっているんだから。
「じゃんけんで決めたらいいにゃ?じゃなければ、にゃーが抱っこするにゃ!」
いやいや。絵面的にそれはちょっと…
「じゃんけんね?ただし、それでも交替して、仲良くね!」
二人で高速じゃんけん。どっちも動体視力はいいからね。
でも、気になる店を見つける度に降ろして交替してたから、二人共疲れたと思う。
「やった!海苔発見!」
少々穴あきだけど、韓国海苔みたいで食感が面白いだろう。それにこれでおにぎりが食べられる。
ワカメもどこのお店でも安い。でもこれだけ安いって事は、ダンジョンの浅い階層で採れるのかもしれない。
「ダンジョンの情報は調べなくて良いのか?」
「分からない方がいいって事もあるじゃん?」
ゲームだって、攻略本をじっくり眺めてやるのは2週目以降だ。最初はやっぱりワクワクしながらやる方がいいよね。
スマホ農園も、かなりやり込んだゲームだったから、全く同じじゃない所が逆にいい。
でも、農業体験のゲーム感は抜けない。草むしりや肥料、害虫や連作障害、ありがちな心配は全く必要ないからね。
そのお陰で一人でもなんとかやっていけてるけど、全てを一人で毎日やるのは無理だ。
釣りは嫌いじゃないけど、海に潜って直接狩った方が効率的だし、カニとか釣れないのも手に入る。カニ重要。
でも、泳いで行く訳だからそんなに遠くまでは行けないし、全ての魚が手に入るとは思えない。
この金魚みたいな魚は食べられるのかな?
鑑定 赤金魚 甘味のある魚で、煮付けにすると美味
うわ…本当に金魚なんだ。そう考えると食欲なくすけど、美味しいなら挑戦してみたいな。
鑑定 青金魚 淡白な味で、身は柔らかい
おおう…熱帯魚みたいに派手な魚だな…微妙なネーミングだけど。
「お嬢さん、買ってくれるのは嬉しいが、腐らないうちに食べてくれよ?空納に仕舞い忘れたら大変な事になるからな」
「…え?普通その前に空間把握を覚えるんじゃ?」
「いや、俺は魔法の事は分からないが、そんな話を聞いたからな」
収納系の魔法を覚えたら絶対覚えるって訳でもないのか。ネリーの教え方が上手なんだな。
よく小説だとリストが見えたりするけど、ここではそういうのは無いからな…
空納は、時間も経過するから食べ物を入れるなら収納庫だよね。
いつもの事ながら、食べ物屋さんばかり廻ってしまう。
じゃあ、海苔も?
海岸の方に行ってみたら、海苔は養殖しているみたいだ。
「明日からダンジョンに入るのだろう?今日は休んだ方がいい」
「その前にご飯ね!」
きっと美味しい海鮮料理が食べられるだろう。
みんな少しずつ頼んだつもりだったけど、一つの量が多い。ホタテなんて顔位の大きさがあって驚いた。
残念なのは、塩のみの味付けだった事。それでも美味しかったけど、やっぱりバター醤油で食べたいよね。
「結構余ったけど…」
「問題ない」
大食いの人は痩せてる人が多かったな…こっちの世界にも大食い大会なんてあったら、ヤブランが優勝間違いなしだね。
亜空間に戻ってフレイムにもご飯をあげた。
「フレイムを連れて歩いたら目立つよね」
「止めておいた方が無難だな」
(ボクはいいよ。ボクのせいでメイに迷惑はかけられないのー)
「私がフレイムを連れていても周囲にどうこう言わせない位強くなって、ランクも上げればいいのかな?」
(ボクが進化して、人の姿になれればいいと思うのー…でも、どうすれば進化するのか分からないの…でも、気にしないで!いつものダンジョンで、人がいない時はメイが欲しい物を手に入れられるの!)
いい子だな…フレイムは。我慢させちゃっているのに。
指先で撫でてやると、嬉しそうに頭をすり寄せてくる。
順番待ちしてるにゃんこシュガーとわんこランスも撫でてやると、ヤブランは面白くなさそうに寝床に横になる。
「ふっふっふ。この特製の柔らかいブラシで磨けば鱗も傷つかずにピカピカになるよ?」
(む…我の鱗には余程の事がない限り傷はつかないが)
そうなのだ。ただし、身体から抜け落ちた鱗は別。途端に強度が下がり、加工もしやすくなる。
肌に纏って魔力を流す事で、傷一つつかなくなる。
普段、こうして寝転んでいる時は別だけど。少しひんやりしてて、触り心地がいい。
ブラシで最初は頭周辺を撫でてやる。心地いいのか、姿勢を変えて次の場所を要求する。
こうしてお腹を見せて寝転んでいる姿は、竜の威厳も何もないけどね。
「ヤブラン、明日からは初めて潜るダンジョンだし、期待しているよ?」
(無論だ)
すっかり機嫌は良くなったみたいだ。
ドラゴンで強いけど、分体として生まれてまだ数ヶ月だ。まだまだお子様だね。
160
お気に入りに追加
1,801
あなたにおすすめの小説
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~
あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい?
とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。
犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる