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プレゼント

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    ようやく仕事にも慣れてきた頃。ジーク殿下にルビーの髪止めを頂きました。
「あの…困ります!散々良くして頂いて、その上にアクセサリーまで…私は何も出来ませんのに」

「そうかな?マリーの知識には随分助けられた。勿論お礼も兼ねているけど…これは、俺の側にいて欲しくて」

「はぁ…お給金代わりでしょうか?けれど、私の出来る事なんて、この宝石の価値程ありませんわ?」
    何故殿下はこちらを見て口をぱくぱくさせているのでしょうか?飴でも欲しいのかしら?

「私の仕事のお給金は、きっとこのドレス一枚にもなりませんわ…それに殿下、そもそも居候の身で過分な扱いを受けているのです。ちゃんと休暇だって頂いてますのよ?この前だって、王妃様にお茶のお誘いを受けて、とても有意義なお話を聞く事が出来ました」

「ええと…それがどういう事かなんて、考えもしないかな?」

「?…気を使って頂いているのでは?隣国での私の立場は思い出せませんが、軋轢を避ける為には仲良くなってしまうのが一番ですものね」
    マリーはふと考え込む。
「作法などは身に付いているので、私が貴族であるのは間違いないのでしょうけれど、私の事、家族は探していないのでしょうか?だから未だに身元が分からない…とか?」

「それはないよ…君が今、ここにいるのは只の我が儘だ」
「私…お役に立てていませんか?」
「そうじゃない!俺がいて欲しいから!」

「つまりはお役に立てていると?」
「そう!じゃなくて…そうじゃなくて」

    どちらなのでしょう?以前にも増して助言は増えましたが、殿下には補佐する立場の方も当然いらっしゃいます。アシュトン王国に関しては私の方が詳しいでしょうけど、私自身は政治に関わってこなかったのでしょう。そちらの知識はありません。

「と、とにかくこれはプレゼントだから…貰って欲しい」
「分かりました…ありがとうございます?」
    きっと、仕事仲間として認められたのでしょう。でもルビーの髪止めなんて、殿下にこそ相応しいのではないでしょうか?紅い瞳とも合いますし、その長い前髪、仕事中はいつも邪魔そうですわ。

    グレン様がこちらを見て苦笑していますわ。何でしょうか?


    仕事も終わり、部屋に戻って髪止めを当ててみました。
    色素の薄い金の髪に、琥珀色の瞳…相変わらずの童顔ですが、私、成人はしていると思うのです。その理由を思い出そうとすると頭が激しく痛むので、考えないようにしているのですが。

    あれからおよそ半年。体型にも変化がありました。かなりささやかですが、胸も成長しました。多分もう、子供に間違われる事はないと思うのですが、自信はありません。


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