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5話
しおりを挟む男性が、ゆっくりと、大事なものを扱うように降ろされたので、私の足もこれ以上酷くなることはなかった。
馬車に乗り込むと、流石に殿下も追っては来れないので安心して一息ついてから
「すみません、ありがとうございました」
と男性にお礼を言った。
これは助けてくれたお礼と、重たい私をわざわざ抱えてくれてありがとうございます、の2つの意味を持ったお礼だ。
お礼を言われた男性はニッコリ微笑んで
「これくらい何ともないよ」
と言うと私の正面に腰を下ろした。
誰かと馬車に乗るのは久しぶりで、少し緊張してしまいます。
王妃教育に行く時も、リリアーナとは別の馬車だったから1人でしたし、殿下との婚約が決まった時に義母と乗った以来でしょうか?
あの日も義母は娼婦みたいに胸元の空いた無駄に高そうなドレスを着ていたな、と思いながら
「それで...あの、ミアって言うのは......」
「あぁ、そうだよね。それを説明する前にまずは名乗らせて欲しい。ナルジェンダ国から来たマリウス・バーランドだ」
ナルジェンダ国といえば、私のお母様の出身国ですね。
公爵令嬢で、あちらの国の陛下と幼馴染で一時は王妃候補、とまで言われたらしいです。
お母様の実家は確かバーランド公爵家と言っていた気が......
とここまで考えたところで気が付いた。
この人は......
「気付いた?俺はユーフェミアの従兄弟だよ」
そう言ってマリウスはブロンド色の髪の毛を引っ張った。
すると、私と同じ銀色の髪の毛が現れたのだ。
この髪の毛の色は、お母様の家系特有の色ならしくてバーランド公爵家の血を引く者は全員銀色の髪の毛をしているらしい。
でも、稀に色が違う子も生まれるんだとか。
と言っても、公爵家の人に会ったのはお母様とマリウスだけなので、本当かどうかは分かりませんけど....。
「なんだかあの人に名前を言いたくなさそうだったから勝手にミアって読んじゃった。ごめんね?」
「いえ、嫌だった訳じゃないですし、久しぶりにそう呼ばれたから少し驚きましたけど......」
そう言って苦笑した後、ここまで話を聞いて1番聞きたかった事を聞くことにした。
「えっと...マリウス様が従兄弟なのはわかりました。でも何故ここに?」
わざわざ隣国から来たのは何かしらの理由があるんじゃないか、と思った。
まさか私に会いに来たってだけで、他国も知っている程の大きなパーティーに来るわけがありません。
するとマリウスは
「ユーフェミアを迎えに来たんだよ」
そう言って満面の笑みで笑った。
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