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5話 フレグリッドside
しおりを挟むアリスティアとフージュン辺境伯が立ち去った後、会場はシーンと静まり返っていた。
まぁ、それも当然だな。
だって、会場にいる人全員が、初めて竜の姿を見たんだから。
はぁ......まさかあの田舎者が竜騎士になっていたとは思ってもいなかった。
婚約者である俺にそんな大事なことを教えないなんて..........やはり婚約破棄して正解だな。
そもそも、俺を差し置いて竜騎士になるなど女のくせに生意気だとは思わないか?
そう思いながら、アリスティア達がいなくなった窓を呆然と見ている父上に
「さぁ!邪魔者はいなくなりました!パーティーを再開しましょう!」
と声をかけた。
それなのに、父上はなぜか俺の言葉に対して
「邪魔者だと........?」
と呟くだけで、待ってみてもその場を動くことはなかった。
なんだ........?
あぁ、もしかして、婚約破棄するときはこのような形ではなくもっとやんわりと伝えたかった、と言うことなんだろうか?
まぁ、父上がそう思うのも理解が出来る。
だって、竜騎士を敵に回す、というのは最初は恐ろしい事だもんな。
だが、竜騎士ということを以外は田舎者の金食い虫だ。
辺境伯などいなくても我が国はどうにでもなる。
そう思いながら父上を見たが、俺に対して何かを話すわけでもなく、ただただその場に立ち尽くすだけだった。
会場にいる貴族たちも、父上が動かないものだからどうすればいいか悩んでいるらしく、固まってしまっているし、会場の雰囲気だって最悪だ。
はぁ......これも、アリスティアがわざわざ竜なんて呼んでしまったから、こんなことに。
そう思いながら、可愛らしく俺の腕を掴んでいるベネッサに
「ベネッサ、まだダンスは始まらないみたいだ。せっかくだし料理を取りに行こうか」
そう言って微笑むと、急に話しかけられたことに一瞬だけ驚いていたが、すぐに
「えぇ、フレグリッド様」
と優しく微笑んで、俺が差し出したばかりの手に自身の手を置いてくれた。
うん、やはり王妃になるような令嬢はこれくらい大人しくないとな。
アリスティアのような令嬢と結婚しても何かと文句を言ってきて面倒そうだ。
そんなことを思いながら、誰も手を付けていなかった料理の乗ったテーブルへ移動していると、その途中急に俺たちの周りを兵士たちが取り囲んだではないか。
これには咄嗟に
「な、なんだ!?お、お前たち!誰の命令でこんなことをしているんだ!」
と叫んでしまったが.........今まで大人しかった兵士たちが、しかも主である俺のことを取り囲むなんて何事だ!?
無礼にも程がある!
そう思いながら、ベネッサを守るように兵士達から隠すと、俺の正面に立っている兵士が
「大人しくしろ!これは陛下の命令だ!」
と叫んだのが聞こえてきた。
はぁ?俺たちを取り囲んだのが父上の命令だと?
今まで動くこともなく、黙っていたのに、急に何が起こっているんだ!?
そう思って顔だけを父上に向けると、近くにいる兵士に、静かに
「この者たちを会場から追い出してくれ」
と指示をしているのが聞こえてきた。
それと同時に、俺たちは兵士達に両脇をしっかりと抱えられて、会場にいる貴族達にクスクスと笑われながら会場を後にすることになったんだ。
くっそ.....俺がこんな惨めな思いをするのも、全てアリスティアのせいだ!
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