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2話

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「これは何の騒ぎだ」

という低い声が会場中に響き渡りましたわ。

まぁ、誰が言葉を発したのか、なんて状況を考えたら見なくてもわかりますわよね。

そう思いながら、皆が注目している視線の先を確認すると、私が出て行こうとした反対側の扉から、陛下達が会場に入ってきたみたいで、この異様な雰囲気の会場に戸惑っているようにも思えますわ。

まぁ、当然ですわよね。

盛り上がっていると思って入ってきたのに、何やら変な雰囲気だなんて誰でも戸惑いますわ。

なんて思っていると、妙に他の貴族達とは距離のあるフレグレッド様とベネッサさん、取り巻き10人ほどと、私の間に何かがあった、と察したみたいで

「せっかくの祝いの場なのに、お前はなんてことをしているんだ!」

と何があったのか聞くこともなく、早速フレグリッド様のことを怒鳴りつけましたわ。

これには流石の私も驚いて、体を大きくビクッとさせてしまいましたわ。

ですが、怒鳴られたくらいで引くフレグリッド様ではありませんわよね。

片方の手でベネッサさんの腰を抱きながら

「ち、父上!俺はただ国の金を不当に使っているこの田舎者を国から追い出そうとしただけです!」

と必死に言い訳をしていますが、これはどう見ても令嬢にうつつを抜かしたんです!仕方ないんです!と言っているようなものですわ。

.......って、不当にお金を使っている、ですって?

この言葉については陛下も訳が分からない、という様子で

「は?何をバカなことを言っているんだ!?」

なんて驚いた声を上げていますわ。

ですが、フレグリッド様はなぜか自信満々に

「だって父上が言っていたではありませんか!辺境での探索の費用が掛かりすぎる、と!」

と大きく叫びましたわね。

あぁ.....なるほど。

確かに辺境の探索には結構な金額がかかりますわ。

とはいえ、それは他の家の話であって、我が家は少し特殊なので他の辺境の2割ほどしかもらっていませんわよ?

その2割も全て食料の分のみですわ。

それなのに、費用がかかりすぎって.........なら自分でもやってみて欲しいですわよね。

まぁ、フレグリッド様の言葉には、陛下も言った覚えがあるんでしょう。

「それは、だな.......」

と都合の悪そうな顔をして、下を向いてしまっていますわ。

そんな中、お父様は凄く冷静に

「アリスティア、この王子に国を出て行くよう言われたのは本当か?」

と少し離れたところからですが、私に質問してきましたわね。

どうせ隠してもバレますし、お父様に

「えぇ、本当ですわ。私としてはその方が嬉しいですし、こんな人が国王になる国に尽くしたくはありませんわよね」

と満面の笑みで言うと、流石に陛下もまずいと察したようで

「ま、待ってくれ!アリスティア嬢!奴は王太子の座から降ろす!だから国からは出て行かないでくれ!」

地面に頭が付くのではないか、と思うほど深々と私に頭を下げてきましたわ。

うーん.....陛下が私のようなただの辺境の令嬢に頭を下げている...いや、フレグリッド様からすると、父上が田舎者に頭を下げている、でしょうか?

きっと、他の貴族たちもそう思っていると思いますわ。

そう考えると、少し複雑な心境になりますわよね。


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