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344話 last、
しおりを挟む複雑そうな顔で話を聞いていた私に気を使ってなのか、それとも本当にそう思ったからなのかわかりませんが、
「まぁ、でも今までの行動を考えたらお似合いの末路だと思いますわ」
とエリザベート様が私の方を見ながら言いましたわね。
確かに、叔母様もアーリア様も今まで自分の好き勝手に過ごしてやりたい事ばかりしてきたんですから、お似合い......かどうかはわかりませんが自業自得の末路だとは思いますわ。
ただ、アーリア様に関してはあの二人の元に生まれてこなかったら、もっと良い人生を歩めていたでしょう。
それだけ、少し可哀想に思えますわよね。
そう思いながらエリザベート様の言葉に頷くと、カイン様も
「そうだな」
とだけ言って、苦笑すると、ふと思い出したかのように
「あぁ、それから元子爵のことについてだが......セリスティア嬢がどう思うかわからんが......」
と前置きをしてから叔父様のことを話してくれましたわ。
叔父様は、私と王宮に行ったあと兵士たちによって我が家の領地から離れた領地へと送られたらしいんですの。
まぁ、辺境と言われるところですわね。
ただ、一般的には辺境伯が領地をしっかりと管理して領民たちが暮らしているんですが、叔父様が送られた辺境は管理している人など誰もいなく、暮らしている人も所謂訳ありの人ばかり。
店は当然1軒もないので、食料などは自分たちで調達しないといけないという、なんとも不便な場所なんですのよね。
そんな場所に送られた叔父様ですが、当然1人では何もすることが出来ず、かと言って誰かにお願いをして手伝ってもらう、なんてことも出来ず餓死するかしないか、という状況になっているらしいですわ。
辺境から我が家まで歩いて戻ることも出来ないでしょうし......そもそも道もわかりませんわよね。
まぁ、戻ってきたところで受け入れるつもりは全くありませんし、私の知らないところで好きにすればいいのでは?としか思えませんけど。
そう思いながらカイン様の話を聞いていると、私が真剣な顔をしていたからでしょう。
「やはり、あのような事があっても心配か?」
カイン様が眉を下げてそう聞いてきましたわ。
きっとあのような事があっても叔父様だから心配だ、と私が考えていると思ったんでしょうね。
当然、そのようなことは微塵も思っていませんわよ。
なので、眉を下げて心配そうな顔をして私を見ているカイン様に
「いえ、正直に言うともう会うことがないでしょうしホッとしていますわ」
と素直に自分の思ったことを伝えると、カイン様もエリザベート様も一瞬驚いた顔をしましたが、すぐにニッコリと微笑んで頷いてくれましたわ。
まぁ、あの人のことなので死にかけるような事はあっても図太く生きていると思いますわ。
だってあのような性格ですしね。
何だかんだ、貴族として生きていくよりも合っている、とかそんな状況になっていたりして?
なんて思っていると、どこからか
「そろそろ卒業式が始まりますよ」
という声が聞こえてきましたわ。
その声に、周りの生徒たちはほぼ同時に椅子から立ち上がると続々と会場へと移動を始めたので、私達もそれに続こうと椅子から立ち上がると
「式が終わったら一緒にお茶でもしませんか?」
スっと私の隣に来たエリザベート様がそう言いましたわね。
お茶、ですか。
「すみません。今日からレオンハルト様が......」
と私が言うとエリザベート様はキョトンとした顔をして
「今日でしたっけ?」
と首を傾げたので苦笑しながら頷くと、話を聞いていたカイン様が
「落ち着いたら挨拶に来るよう伝えてくれ」
そう言ってスっとエリザベート様の前に手を差し出しましたわ。
その手にエリザベート様も自身の手を重ねて、その隣に私がいる、というなんともおかしな状況なんですのよね。
まぁ、今は私に婚約者がいないので仕方のないことですが.......。
流石に気まずい、と思った私はさりげなく2人より2歩くらい後ろに下がりましたが....意外と気付かれないものですわね。
いや、今はカイン様とエリザベート様がお話をしているから、なのかもしれませんが。
やはりこういう時に婚約者がいるというのは羨ましいですわね。
なんて思いながら2人の背中を眺めていると、急に2人が振り返りましたわね。
一体どうしたんでしょう?
思わず首を傾げて2人のことを交互に見ていると、廊下の正面から見覚えのある人が歩いてくるのが見えましたわ。
「な、なんでここに居ますの?」
と尋ねると
「カイン様から手紙を貰ってね」
レオンハルト様はそう言ってカイン様の方にチラッと視線を向けたので、私もカイン様の方を見ると、小さく頷きましたが....いつの間に手紙のやり取りをしていましたの?
というか、到着は今日の夕方だと聞いていたはずなんですが.......。
唐突なレオンハルト様の登場に驚きを隠せずオロオロとしている私に
「婚約者だったら式に参加できるとのことだから急いできたけど.....間に合わなかったかな?」
人がいなくて心配になったんでしょう。
不安そうな顔をしながら質問をしてきたので
「むしろ凄くいいタイミングですわ」
と私が言うとレオンハルト様はホッとした顔をして私の前に手を差し出してくれましたわ。
その手に私の手を重ねると、レオンハルト様は
「卒業おめでとう」
微笑みながらそう言ってくれたので
「レオンハルト様も卒業おめでとうございますわ」
と私も返しましたが、それがなんだか面白くて思わず2人揃って笑ってしまいましたわ。
そんな私たちを見て、カイン様もエリザベート様も微笑んでくれていたんですが
「もう式が始まりますよ!」
という先生の焦った声が聞こえてきて、私たちは急いで会場へと向かいましたわ。
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