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332話

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メイド長が部屋から出て約10分ほど。

本当は顔を合わせること自体が嫌なんですが、そうも言ってられませんわ。

だって、私が門に向かっている最中だというのに、既に

「さっさと屋敷の中に入れろ!俺を誰だと思っているんだ!」

という怒鳴り声が聞こえているんですもの。

ここから見ても門番の2人が困っているのがわかりますわ。

はぁ......本当に迷惑ですわよね。

いくらここが領民たちの住宅街から離れているとはいえ、人通りがないわけではありませんわ。

それなのに領主の家の前で、しかもどこに居たのかわかりませんが、浮浪者のような格好をした人が騒いでいるなんて.......。

そう思いながら、門へと急ぎましたわ。

私が近付いているのに気が付かないのかいまだにギャーギャーと騒いでいる叔父様に

「一体何の用ですか?」

と冷たく声をかけると、門番の2人は明らかにホッとしたような顔をしていて、一方叔父様の方は

「そろそろ考えを改めたんじゃないかと思ってな」

どこからそのような自信が湧いてくるのかわかりませんが、ドヤ顔でそう言ってきましたわ。

しかも、考えを改めるって.....一体何を改める必要があるんでしょう?

そう思いながら、今にも門番を押しのけて中に入ってこようとする叔父様に

「改めるだなんて、随分と面白いことを言いますのね。私は何も間違ったことを言っていないのに」

わざと小馬鹿にするように鼻で笑ってそう言うと、流石の叔父様もキョトンとした間抜けな顔をしていますわね。

きっと私に言われたことが一瞬理解出来なかったんでしょう。

その証拠に、少し間を空けてから徐々に顔を赤くして

「そ、そうやって強がれるのも今のうちだけだぞ?陛下に話をして今すぐにでもこの家を乗っ取ってやってもいいんだ」

と言ってきましたもの。

ただ、陛下に話をして叔父様を当主に、と言うのであればどうにか手を打たないといけませんわ。

だって、仮にもこの家の血を引いていますし.....何より、成人している叔父様と私では出来ることも差が出てしまいますもの。

そう思った私は、どうにか叔父様を追い返そうと、言葉を選んでいると

「その件だが、父上がダレス殿に話をしたいと言っていてな。今すぐに王宮に来てもらってもいいか?」

と急に聞き覚えのある声が聞こえてきましたわ。

王宮、そして父上、ということは確認をしなくても誰の声なのかわかりますが......。

そう思いながら声のした方に視線を向けると、そこには私が思った通りカイン様が立っていて、腕を組みながら眉間に皺を寄せていますわ。

そんなカイン様に

「か、カイン様?いつから居ましたの?」

と声をかけると

「変なことをしないよう、見張らせていたんだ」

そう言って、見張らせていた兵士の方に視線を向けました。

まぁ、兵士とはいえバレないように変装をしているので、パッと見では王宮の兵士だ、とわかりませんけどね。

なんて思っていると、まさかカイン様が現れるなんて思ってもいなかったんでしょう。

「へ、陛下が俺に話だと?」

と警戒した様子で呟きましたが、何を思ったのか叔父様はニヤッと嫌な笑みを浮かべて

「ははっ!やはり陛下も俺に侯爵家を任せた方がいいと考えたんだな」

叫ぶようにそう言いましたわ。

もちろん、そんな話をする訳がない、というのはわかっていますが、ここまで自信満々に言われると、本当に陛下は叔父様を当主にするのでは?と勘違いしてしまいそうになりますわね。

まぁ、叔父様は仕事が出来ない、というのは陛下もわかっていることなので絶対にありえませんが.......。
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