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325話 アーリアside
しおりを挟むお父様とお母様が離婚した。
それでも、私たちの生活は全く変わらなかったわ。
お母様はお父様が居た時のように男漁りを辞めなかったし.....それどころか、お母様は領地内に留まらず隣の伯爵家の領地にまで行って平民の男たちを漁っているのよ。
しかもその平民達を我が家に連れてきて、今では毎日別の男たちが家に出入りしている、という状況になっているわ。
はぁ......それなのに、私にはまだ婚約者すら出来ないなんて......。
お母様のように色んな男性に声をかけているのに、一体どうしてなの?
そんなことを思いながら、家の廊下を歩いていると正面からお母様が歩いてきたわ。
今日のお母様の服装は誰かのお葬式でもないのに真っ黒なドレスに胸元が下品に開いたドレスで、スカート部分には大きなスリットが入っているわ。
誰がどう見て大胆なドレスで、男性が見たら皆顔を赤くするだろう。
........首から下だけを見たら、の話だけど。
首から上を見ると、普段通り濃い化粧をしたただのおばさんという感じで、私が男性だったら誘われてもすぐに断るくらい酷い顔をしているわ。
まぁ、お母様は自分の顔に自信があるみたいだし、お父様がいなくなったことで子爵家のお金もお母様が管理しているからね。
そう考えると、平民だったら良い相手なのかもしれないわ。
なんて思いながら、口も利きたくなかった私は無言でお母様の横をすり抜けようと足を速めた。
すると、そんな私を見たお母様は
「まだ婚約者の1人も出来ないの?私の娘なのに本当に情けないわね」
小馬鹿にするようにそう言ってきたけど.......自分は離婚されたくせに、よく私にそんなことを言って来るわよね。
貴族が離婚だなんて......もう少し恥じないといけないはずなのに。
そう思った私は、ヘラヘラと呑気に笑っているお母様をキッと睨みつけた。
でも、睨みつけるだけで何も言い返さなかったわ。
だって、言い返したら負けたような気分になるし、こんな女と同じようになりたくない、と思ったんだもの。
そんな私の気持ちを察したのか、お母様は
「都合の悪いことはすぐに黙ってしまうの、あの人にそっくりね。あんたもここから出て行ったらいいのに」
不機嫌そうにそう言うと、フンっと鼻で笑って私を見下したような目で見て来たわ。
確かにお父様はあまりしゃべらない人だったけど、それって言い返したらお母様がうるさいからだと思うのよね。
まぁ、当の本人はそれがわかっていないみたいだし、知らない方が幸せだということもあるから何もいわないけど。
なんて思っていると、お母様の両隣にいた男性は
「まぁまぁ、そんなこと言わないでさっさと行きましょうよ」
「子爵と違って可愛くないんだから、そう簡単に婚約者なんて出来ないですよ」
お母様の機嫌を取るように、私との会話の間に入ってきたわ。
正直、貴族の会話に割って入るなんてありえない、と思ったけど、それよりも
「もうっ!調子がいいんだから」
と言ったお母様が、仮にも娘がいる目の前で女になったのがただ気持ちが悪かった。
男たちに言われたからなのか、その後すぐにお母様たちは私の存在を無視するかのように廊下を歩いて行ったけど
「........気持ち悪」
と私が呟いたのは聞こえていたのか、一瞬だけ立ち止まっていたわ。
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