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296話
しおりを挟むよく考えてみると確かにレオンハルト様のような婚約者、というのは心配になりますわよね。
私はレオンハルト様の良いところを知っているので、このようなことがあっても婚約を、と思えますが、会ったこともないエリザベート様やカイン様からするといい印象は持てませんわ。
とはいえ、ここで私がレオンハルト様の良いところを2人に伝えても、庇っているようにしか見えないでしょうし......出来ることなら、私ではない人がレオンハルト様のことを褒めるのが今は一番いいんですけど.....。
そう思いながらチラッと扉の近くに立っているユーリに視線を向けますが、この会話の中にメイドが入れるわけもなく、キョトンとした顔をして私のことを見ているだけですわ。
うーん.......ただ、私以外にレオンハルト様について話せる人、というのは伯父様や伯母様たちだけですし.....。
なんて思っていると、今まで黙って私たちの会話を聞いていた陛下が
「まぁまぁ、第三者が決まった婚約について文句を言うのは野暮だとは思わないか?」
と苦笑しながら会話に入ってくれましたわ。
すると、流石のエリザベート様達も確かに陛下の言う通りだ、と思ったんでしょうね。
都合の悪そうな顔をして、私から視線を逸らしましたわ。
ただ、納得はしていないので
「ですが.......」
と何か言いたそうにはしていますけど。
まぁ、エリザベート様は嫌がらせなどではなく、私のことを心配して言ってくれていますしね。
少し心配しすぎなのでは?とも思いますが、もし私がエリザベート様の立場だったら.....と考えたら当然の反応ですわよね。
だって、女性に人気がありすぎて嫉妬されて嫌がらせの被害に......なんて聞いたら多くの女性を誑かしているような人だとしか思えませんもの。
やっぱりいくら流れで言ってしまったとはいえ、少し考えるべきでしたわ。
なんて思っていると、苦笑しながらカイン様とエリザベートを諫めていた陛下が
「レオンハルト殿のことなら儂も知っておるぞ」
と言ってニッコリと微笑みましたわ。
これには驚いて
「そうなんですの?」
と聞き返してしまいましたが、私よりもカイン様とエリザベート様の方が驚いているみたいで、大きく目を見開いて陛下の言葉に固まってしまいましたわ。
そんなカイン様達を陛下は苦笑しながら見た後に
「あぁ、隣国の王子の幼馴染だからな。それに、セリスティア嬢が隣国に行っている間、あちらの陛下とレオンハルト殿が近況を報告してくれていたんだ。会ったことはないが、どのような子息なのかしっかりと把握しておる」
と言いましたが、まさかレオンハルト様とまで手紙のやり取りをしていたとは.......。
私が知らないところで、国同士のやり取りを沢山していたのも驚きですが、カイン様すら知らなかった、というのが一番の驚きですわよ。
なんて思いながらエリザベート様の方を見ると、さっきまで何かしら言いたそうにしていましたが、陛下がレオンハルト様のことを高く評価しているのを聞いて、文句を言うに言えなくなってしまったんでしょうね。
今でも不服そうな顔はしていますが、黙って陛下の話を聞いていますわ。
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