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292話

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「とにかく無事に戻って来てくれて安心した」

そう言ったのは、私の目の前に座ってニコニコと笑顔を浮かべているこの国の陛下ですわ。

隣国にいる間に手紙のやり取りや、領地のことで随分とお世話になった、ということで、帰宅をした次の日に挨拶に来たんですが、昨日帰宅してすぐに手紙を出したところ今日のお昼過ぎに王宮に来るよう速達で連絡がありましたのよね。

私としては、まだ叔父様のことがあったので、終わってから挨拶に、と思いましたが......メイド長に

「そんなの後からでいいのですぐに行ってください!」

と言われて、急いで準備をさせられましたの。

家にあったドレスでは陛下と会うのに向いていない古いものが多かったので、早速伯父様から貰ったドレスが大活躍しましたわよ。

あぁ、ちなみに、クローゼットに入った新しいドレスを見たメイド長の反応は

「こんなに高そうなドレスを、しかも沢山.......お礼を言うだけでは足りないですよ」

と後ろによろけながら言われてしまいました。

お父様達が亡くなってから、まともなドレスを着たことがない私からすると、そんなに驚くほど高級なものなんだ、と驚きましたが........伯父様たちには感謝してもし足りないですわね。

.....話が逸れてしまいましたが、ニコニコしながら本当に嬉しそうに私を歓迎してくれた陛下に戸惑いながら、

「家のことに巻き込んでしまって申し訳ないですわ」

そう言って、軽く頭を下げると陛下は少し慌てた様子で

「いやいや、本当はこちらから気付いて動くべきだったのに、対応が遅れてすまなかったな」

と言って、逆に頭を下げられてしまいましたわ。

当然ですが、陛下が謝るようなことは1つもありませんし、むしろあのおバカさん2人のことは私が意図的に気付かれないようにしていた、ということもあってなんだか申し訳なく思ってしまうくらいです。

陛下がここまでしっかりと対応してくれるのであればもっと早くに言うべきだった、と後悔しているくらいですわよ。

なんて思いながら、陛下に頭を上げる様に言っていると、

「それにしても、隣国で婚約者まで出来てしまうなんて、流石というべきなのか、何と言うべきなのか」

苦笑しながらそう言うカイン様の隣では

「まぁ!私は凄いと思いますわよ?」

と良い笑顔で微笑むエリザベート様の姿がありますわ。

これには驚いたんですが、てっきり陛下とカイン様の2人が応接室で待っているんだ、と思って中に入ると、一番最初にエリザベート様が

「ご無事でよかったですわ!」

と言って私に抱き着いてきましたの。

一応国を出る前に話をしたとは言え、まさかここまで歓迎されるとは思ってもいなかった私からすると、エリザベート様には本当に驚きしかありませんでしたわよ。

カイン様曰く、私に婚約者が出来た、と報告した手紙を読んで一番喜んだのはエリザベート様だったみたいですし.....。

隣国に居た時も手紙を書いてくれたり.....離れていたのに凄く良いお友達が出来ていて、驚きですわよね。

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