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291話

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花瓶のことは考えても仕方のないことだ、ということで、改めて部屋の中を見渡してみましたが、花瓶以外は特に変わったところはないみたいですわね。

ベットのシーツは今日もシワの1つもなく綺麗ですし、私が居なくてもしっかりと掃除をしていてくれたみたいで、窓もピカピカ、床にも埃1つ落ちていない、という状態ですわ。

きっとメイド長が指示を出していてくれたんでしょうね。

なんて思っていると、急にユーリが

「アクセサリーって全て持って行きましたっけ?」

と私に声をかけてきましたわ。

アクセサリー、ですか......。

「いいえ?鞄に入らないから気に入っているものとお母様から貰ったもの以外は置いて行ったけど.......」

そう言って、鞄の中から持って行ったアクセサリーが入った箱を取り出すと、ユーリは何やら真剣な表情で

「そうですよね........」

と頷きましたわ。

「アクセサリーケースに入れてあるはずよ?」

「私もそうだと思っていたんですが、1つもなくて......」

ユーリはそう言うと、見て欲しい、と言わんばかりに私の目の前にアクセサリーケースを差し出してきましたわ。

すると、元々持っていた数は少ないですが、ネックレス1本、指輪3つ、ブレスレット2本の計6つのアクセサリーが入っているはずの箱が空っぽになっているではありませんか。

まぁ、一般的な侯爵家の人達が買うような、高級な物は1つもないですわよ?

だって、基本的にはお母様から貰ったものを身に着けていましたし、ヘタにあのおバカさん2人の前に出すと盗まれてしまいますもの。

なので、盗まれたところでなんの思い入れもない物ですし構わないんですが.......ただ、留守の間になくなる、ということは私が居ない間にこの部屋を漁った人が居る、ということですわよね?

そう思った私は、せっかく気分よく帰宅したというのに再び気分が悪くなってしまいましたわ。

正直、叔父様と話をした時点で最悪な気分だったんですのよ。

ですが、自分の部屋に戻ってきて懐かしさと安心さでやっと落ち着いたというのに.......私が居ない間に一体何が起こっていましたの?

なんて思いながら、他に盗まれたものがあるかもしれない、と思った私は、机の引き出し、タンスの中など、持って行かなかった物があるかないか、確認をしましたわ。

すると、机の中からは手紙を書くときに使っていた羽の付いたペン、そしてペンのインクとペーパーナイフ、タンスの中からはサイズアウトしてしまったので、しまい込んでいたドレスがなくなっていることに気付きましたわ。

とはいえ、元々あの2人から色んなものを奪われていましたからね。

持って行かれてしまったもの、というのは私にとっても特に必要のない物ばかりなので、特に気にしませんが人の部屋を漁る、という行動に問題がありますわよね。

なんて思っていると、ドレスをしまいながら元々置いてあったドレスがあるかないか、確認していたユーリが

「もしかして、花瓶も含めて壊したとかそういうのではなく誰かが意図的にお嬢様の物を盗んでいったんじゃないですか?」

と言ってきましたわね。

これには苦笑しながら

「やっぱりそうよね。大事な物を全て持って行ったのは正解だったわ」

と返事をするしかありませんでしたわよ。

だって、家主が留守の間に泥棒するなんて、それこそ犯罪者ですが、犯人が一体誰なのか、については全く見当がつきませんもの。

うーん.......あのおバカさん2人が、とかだったら話は早いんですけどね。

一体誰が盗んでいったのか。

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