私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

289話

力なく、落ち込んでいる叔父様を横目に執務室を後にしたのはいいですが、まさか叔父様があのようなことを言って来るとは思ってもいませんでしたわ。

やっぱり反省した、というのは口だけで本心では全く違うことを考えていましたのね。

そう思いながら、自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、無事に馬車から荷物を下ろし終えたらしいユーリ達が丁度前から歩いてきましたわ。

「セリスティア様ー！持ち帰った荷物は全て下ろしましたよー！」

と言って元気に手を振ってくれているディアには申し訳ないですが、さっきのこともあって気分が落ちてしまっている私には

「えぇ、ありがとう」

と返事をするのが精一杯でしたわ。

すると、お屋敷の中に入る前までの様子と明らかに違っていたので、皆不思議そうな顔をしながら首を傾げていましたわ。

そんな中、ユーリはというと私が執務室に行くことを知っていたので、皆の中からサッと私に駆け寄って来てくれて

「お嬢様？もしかして何かあったんですか？」

と心配そうな顔をしながら声をかけてくれました。

本当はユーリにも心配をかけたくなかったので、普段通りにと思っていましたが、流石に衝撃が大きくて顔に出てしまいましたわね。

はぁ......最悪ですわ。

私がそう思っているうちにも、ユーリの横にはミリアたちも来てしまいましたし、皆が私のことを心配して見ているので下手に嘘をつくこともできません。

これは仕方がない、と思った私は意を決して

「それが.......」

とさっきの叔父様とのやり取りを大まかに皆に話しましたわ。

すると当たり前だとは思いますが

「そんな話あり得ないですよ！」

「今まで散々お嬢様のことを放置していたくせに、自分の都合が良い時だけ寄ってくるなんて！」

「断ったのも正解ですよ！あの人はお嬢様のことを舐めているんです！」

ユーリ、ミリア、ディアの順でそう言ったんですが、全員が叔父様に対して軽蔑と怒り、そして呆れの入り混じったような、そんな顔をしていました。

3人の反応を見た私は、自分の考えが間違っていなかったんだ、と安堵しながら

「やっぱりそうよね.....」

と呟きましたが......なにやらメイド長だけは何かを考え込むように黙って眉間に皺を寄せていますわね。

もしかして、私の考えや言動は間違っていたんでしょうか？

そう思った私は、無意識にメイド長のことをジッと見つめていると、私がメイド長に質問するよりも先にミリアが

「お母さん？どうしたの？」

と質問してくれましたわ。

すると

「いや......もしかして、ずっとここにいるつもりだから、お嬢様が帰ってくるまでの間、訳の分からないことを言っていたのか、と思って」

そう言ったので、横から口を挟むような状況になってしまいましたが、メイド長に

「訳のわからないこと？」

と尋ねると、私の言葉に頷きながらメイド長は

「主人の言うことを聞け、とか、主人の言うことは絶対だ、とか」

と言いましたが、これには衝撃を受けましたわ。

だって、その言い方だとまるで自分が主人なんだから言うことを聞け、と言っているみたいではありませんか。

私がいないところでそのようなことを言っていたとは......本当に救いようがありませんわね。