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283話

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あの2人に雇われたメイドのことは確認が出来ましたし、とりあえず良い方に進んでいる、と判断した私は、頭を上げることなく謝罪をしているメイドたちの肩をポンっと叩いて、お屋敷の中に入っていきましたわ。

背中に2人の視線を感じるような気がしますが.......今後の話は後からする、ということで、一番最初に執務室の方へと向かいました。

というのも、書斎には私の仕事の道具や資料が沢山置いてあるので、叔父様が仕事をするのもそこだ、と思いましたのよね。

隣国に行く前は、顔を合わせたくもない、と思っていたので2人きりにならないように、と心がけていましたが、事情が事情ですし仕方がありません。

今回ばかりはしっかりと話をしないといけませんわよね。

はぁ.......一応手紙ではしっかりと心を入れ替えた、みたいな内容で書いてありましたが、会うまでは信用できませんし、何より伯父様が何を考えているのか、全くわかりません。

とりあえず、離婚した話と今後どうするのか、ということ。

一応伯父様が保護者ということになっているので、婚約者が出来た、ということも伝えておく必要がありますわね。

そう思いながら、憂鬱でしかありませんが重たい足を引きずって半年ぶりの我が家の廊下を歩きましたわ。


執務室に向かう途中、調理場の方にひょっこりと顔を出してみると、私が帰宅したのがわかった料理長たちが物凄く良い笑顔で

「おかえりなさい!」

と言ってくれましたわ。

やっぱり私と一緒について行ったネイトのことが気になっていたらしく、私が

「ただいま」

と返事をするなり

「ネイトはどうでしたか?あちらの家で邪魔になったりしていませんでした?」

と心配そうな顔で聞いてきましたわ。

料理長は両親のいないネイトの親代わり、みたいな感じですからね。

きっと、メイド長と一緒に自分の娘、息子が何をしていたのか、と気になっていたでしょう。

そう思った私は料理長を安心させるように、ニッコリと微笑んで

「邪魔だなんて.....むしろあっちの家の料理長もネイトのことを褒めていましたわよ。滞在期間の後半なんて、デザートを作らせてもらった、と楽しそうに話していましたし......」

と言うと、料理長は心配そうな顔から一変して安心したような、ホッとした顔をして、そうですか、と頷いていましたわ。

これ以上言うと、ネイトが自分で報告するとき重なって話を聞くことになってしまいますからね。

後は私から、ではなくネイトに聞くように言うと、料理長はわかりました、と頷いた後に

「今日はお嬢様の好物ばかり仕込んでおいたので、楽しみにしてくださいね!」

と言ってくれましたわ。

私の好物、ですか.....。

正直、公爵家の料理はおいしかったんですが、食べたいものをリクエストすることは出来なかったので本当に嬉しいですわ。

久しぶりの料理長が作る料理、ということもあって普段の2倍楽しみですわね。

なんて思いながら、調理場を後にしましたわ。
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