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282話
しおりを挟む歓迎状態の領民たちの対応をしながら、ゆっくりと馬車で進むこと約1時間。
普段なら領地の端からお屋敷まで30分で到着することが出来るというのに、倍の時間がかかってしまいましたがなんとか家に到着することが出来ましたわ。
お屋敷の門番に、門を開けてもらって馬車入り口の所に止めましたが、なんだか帰ってきたという実感がまだ湧いてきませんわね。
やっぱり家の中に入らないと家に帰ってきた感じがしないものなんでしょうかね?
なんて思いながら、馬車の荷台から荷物を下ろしているユーリ達を見つめましたわ。
うーん.....こうやって見ると伯母様たちは本当に沢山お土産を持たせてくれましたのね。
ドレスも家の物を合わせたら2倍ですし、食料も結局は半分以上余らせてしまいましたわ。
まぁ、どちらも使える物なので、後で片付けてもらいましょう。
そう思いながら、私の大事なものをまとめていた鞄を受け取ろうと手を伸ばすと、ほぼ同時に
「お嬢様!」
という、私を呼ぶ声が聞えてきましたわ。
パッと声のした方を見ると、いつの間にか閉じていたお屋敷の扉が空いていて、そこには私たちを出迎えに来てくれたのか、お屋敷に残っていた従者たちがこっちを見ていましたわ。
そんな中、一番最初にメイド長は私たちの所に駆け寄ってくると、全員いるのを確認した後に
「おかえりなさいませ。お待ちしておりましたよ」
安心したような顔をしながらそう言って、軽く頭を下げましたわ。
そんなメイド長に
「ただいま帰りましたわ。半年もの間、家を守ってくれてありがとう」
と言って微笑むと
「そんな......当たり前のことをしただけです」
メイド長はそう言うと、照れたように顔を少し赤くして微笑みましたわ。
私と話をした後、メイド長は流れるような動きで後ろで荷物の確認をしているユーリ達の所に合流していきましたわね。
少し離れたところで沢山の食料と、伯父様からプレゼントされた大量のドレスに驚いている声が聞えてきたような気がしますが......聞かなかったことにでもしておきましょう。
あれを見たら当然の反応ですしね。
そう思いながら、このまま私が待機をしていても役に立たなさそうなのでお屋敷の中に入ろうとパッと扉の方を見ると、そこには2人のメイドが立っていて、私と目が合ったのがわかると都合が悪そうな顔をして目をそらされてしまいましたわ。
言わなくてもわかると思いますが、その目を逸らしたメイド2人、というのがあの2人と一緒になって私に嫌がらせをしていたメイドなんですが、ここにいる、ということは辞めずに頑張っていたみたいですわね。
残っていた従者たちに囲まれて過ごすのは相当居心地が悪かったでしょうし、残っていたことに関しては評価しないといけませんわよね。
なんて思いながら、2人に近付いていくと、それに気付いたメイドは
「お、おかえりなさいませ」
「おかえりなさいませ........」
と都合が悪そうな顔をしているものの、そう言ってくれましたわ。
そんな2人に、ニッコリと微笑んで
「戻りましたわ。メイド長は厳しかったでしょう?」
というと、私に罵倒されるとでも思っていたんでしょうね。
2人は顔を見合わせると、
「い、今まで本当に申し訳ございませんでしたっ!」
「申し訳ございませんでした!」
と言って深々と頭を下げましたわ。
この様子を見ると、本当に反省しているみたいなので、後は今後の態度を見て判断する、という感じですかね?
まぁ、このまましっかりと仕事をしてくれるのであれば特に処罰を、と考えませんし、こればかりは2人次第ですわね。
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