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268話 レオンハルトside

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牢屋の中には3人の男たちが手枷を付けられていて、1人はさっき僕に話しかけてきたユースティン様の専属執事、あとの2人は家の護衛として雇われている人だ、と記憶をしている。

まぁ、言ってしまえば公爵家の中でもユースティン様に近い立ち位置にいる3人なんだよね。

つまり、ユースティン様が指示を出した、というのも本当のことだろうし、公爵家の従者だというのは僕がよくわかっている。

はぁ……出来れば虚言であって欲しいと思っていたけど、全てが本当だとはね。

笑いしか出てこない、というのはこういうことを言うんだろうね。

なんて思っていると、急に黙り込んだ僕たちに怯えているのか、護衛の1人が

「そ、その……私たちはどうなるんでしょうか?」

恐る恐るという様子で、そう質問をしてきた。

しかも、それに続くかのようにもう1人の護衛が

「お、お嬢様に命令されたからやっただけで……で、ですが、令嬢様には何も手は出していませんし!」

必死の形相でそう言ってきたんだけど、僕としてはその発言に対して苛立ってしまった。

だって、令嬢には手を出していない、なんて当たり前の話だ。

そもそも危害を加えようとしたこと自体、ありえない話だと言うのに何を自慢げに……。

そう思った僕は、必死な形相で自分の無罪を訴えてくる護衛に対して

「令嬢には手を出していない……だって?」

と冷たい視線を向けながらそう呟いた。

すると、流石に僕の纏っていた雰囲気がガラッと変わったことに気付いたんだろう。

今までギャーギャー騒いでいた護衛の2人は顔色を悪くさせ

「あ、い、いや……」

「そ、それはその……い、言い方が少し悪かった……」

と言葉を詰まらせていた。

全く……僕に対して何か言いたいのであれば、1度自分に置き換えて考えてみて欲しいものだよね。

自分の恋人、または妻が誰かに襲われそうになっていた、なんて話を聞いても、無事だったんだからで終わらせるのか?って話だ。

そう思いながら、護衛2人に対して何かを言う訳でもなくただただ黙って冷たい視線を送っていると、さすがにこの状況を見かねたのだろう。

夫人は、わざとらしく大きく咳払いをすると、

「いくら指示されたからといっても、貴方たちは平民でありながら貴族の……しかも隣国の令嬢に危害を加えようとしたのよ。下手したら国同士の関係が悪くなってもおかしくないことなの」

馬鹿でもわかるほど簡単に、そう説明をした。

すると、やっとのことで自分たちがどれほどのことをしたのか、しっかりと理解ができたらしく

「あ……」

「お、俺たちはなんてことを…………」

と元々青かった顔を土色に変えてブツブツと呟いていた。

まぁ、当然だが今更自分たちの行いを悔いても遅い。

きっと今頃、ユースティン様も公爵からしっかりと怒られているだろうし、何かしらの処罰があるはず。

なんて思いながらチラッと夫人に視線を向けると、牢屋の前に来た時よりもなんだか真剣な顔をしていて、なにか覚悟を決めたような、そんな顔をしていた。

一体何をするつもりなのか、はわからないけどとりあえず今の僕にできることは、セリスティア様が無事に帰られるよう願うしかない……ということみたいだね。
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