私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

257話

さて、馬車の中で5分ほど待ったでしょうか？

すぐに終わると思っていた門番と後ろの馬車のやり取りは想像以上に時間がかかっていて私たちは暇を持て余していましたわ。

私の目の前に座るユーリとディアなんて、自分の鞄の中から何度も何度も中の物を取り出しては中身の整理を繰り返していますし、ミリアはメイド長から届いたこの半年の間の手紙を、まるで本でも読むかのように読み漁っていますわ。

ネイトは、というと3人のように動くことはないんですが、何も言わずにただただジッと後ろの馬車を見つめて、門番の人達がこっちに向かってくるのを待っている、という状況ですわね。

あぁ、ちなみに私もネイトと同じく外の様子をただただボーっと眺めて時間を潰していますわ。

うーん......外の様子は何も変わりませんからね。

正直、このまま時間だけが過ぎるのも勿体ないような気がしてなりませんわ。

このまま待機させられるくらいなら、門番の人達には引き続き後ろの馬車を引き留めてもらって、私たちは先を急ぎたいところですわよね。

なんて思っていると、馬車の窓をコンコン、と控えめにノックする音が聞こえてきましたわ。

これには驚いて、皆それぞれ違うことをしていたにも関わらず顔を合わせていると、ネイトが小さな声で

「門番の1人が来ましたね」

と呟いた後に、スッと私の前に出てゆっくりと馬車を降りて行きましたわ。

正直、ネイトだけで大丈夫なのかと少し不安ではありましたが......女の私たちが降りて行っても無駄と言いますか.......なめられてしまう可能性がありますからね。

ここは大人しく馬車の中でネイトが戻ってくるのを待ちましょう。

そう思いながらも、やっぱり様子は気になるので外からは気付かれないようにそっと小窓から外の様子を窺っていると、ディアが心配そうな声で

「そろそろ出発が出来るんでしょうか？」

と呟いたのが聞こえてきましたわね。

やっぱりこれ以上時間を潰すのにも限界がありますし、出来るだけ早く国を出たい、というのは皆同じ気持ちですわ
よね。

なんて思いながら、心配そうな顔をしているディアに

「まぁ、私たちが足止めを食らう意味がないもの。きっと話を聞いたらすぐにでも門を出られると思っているんだけど..........」

と言うと、複雑そうな顔をした3人でしたが、私の言葉に

「確かにその通りですよね」

と頷いて、ジッとネイトの方を見つめましたわ。

ここからだとネイトの表情がわからないので、一体どのような話をしているのかわかりませんが........。

そう思いながら馬車の中で見守っていると、門番と話を終えたネイトが振り返って馬車の方に向ってきましたわね。

なんとなくですが、エイトの表情はあまりいいものではなさそうな感じがしますが......。

そう思った私は、ユーリ達の方も確認するかのようにジッと見つめると、3人とも私と全く同じようなことを思ったんでしょう。

元々表情は強張っていましたが、ネイトが馬車を降りた時よりもキリっとした顔をしていて、皆が真剣な顔をしていますわ。

おかげで馬車の雰囲気といいますか....空気が強張ってしまいましたが、状況が状況なだけにこればかりは仕方がありませんわね。