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187話

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正直、ユーティン様に関して思うことはありますが、レオンハルト様の幼馴染を悪く言いたいわけではありません。

きっと私の気のせいですし、せっかくのパーティーで私から騒ぎを起こすのはいけませんわ。

そう思いながら、ユーティン様と握手を交わしていた手を解くと、すぐにレオンハルト様が再び私の腰に手を当てようとしましたが

「ところで、お父様達には挨拶に行ってくれたかしら?」

と言って近付いてきたユーティン様にレオンハルト様の手が遮られてしまいましたわ。

どういうこと?と思うかもしれませんが、私とレオンハルト様の間にバレないくらい本当に少しだけ体を入れてきましたのよね。

おかげで、レオンハルト様の腕が私の腰に届くことはなく、空振りになってしまったんですが、ユーティン様は流れるような動きでそのレオンハルト様の腕を取って自分の方に引き寄せていますわね。

これは流石に婚約者がいる人に取るような行動ではありませんわ。

まるで私に見せつける様にわざとやっている、みたいな........。

なんて思っていると、レオンハルト様はどう思っているのかわかりませんが

「兄上が挨拶に行っているよ」

と言いながら、掴まれた腕をさり気なく解こうとしていますわね。

少しずつユーティン様と距離を取って、私の方に寄ろうとしているにも関わらず、ユーティン様が腕を話してくれないせいで自由に動くことが出来ない、というなんだか凄い状況になっていますわ。

なんだか面白い状況だ、と思って、私たちのことを監視していたアーリナ様達の方に視線を向けると、今まで私のことを睨みつけていたのに、今ではユーティン様のことを睨みつけていますし。

もしかしたら、この令嬢たちにとってもユーティン様の存在は相当邪魔なものだったんじゃないでしょうか?

なんて私が思っているうちにもユーティン様はレオンハルト様に対して

「そんなこと言わずに、レオンハルト様も挨拶に来てくださいませ」

と可愛らしくおねだりをしていますわ。

きっと、このままだとレオンハルト様はユーティン様に連れていかれて私の元を離れて行ってしまうんでしょう。

となると、私は令嬢たちから一気に責め立てられるんでしょうね。

まぁ、出来ることなら私がこの2人の間に入って、レオンハルト様を引き剥がしてあげるのが一番いいんでしょうけど、レオンハルト様でも剥がせない令嬢を相手にするのは多分不可能ですわ。

うーん......令嬢たちに責められる、としっかりと覚悟を決めておかないといけませんわね。

なんて思いながら、レオンハルト様がどのような行動をとるのか少し離れたところで眺めていると

「いい加減にしてくれ」

という今まで聞いたこともないくらい低い声が聞こえてきましたわ。

これには、私だけではなくユーティン様も驚いたみたいで

「れ、レオンハルト様?」

今まで何をしても離さなかった手をパッと離して驚いた顔をしていますわね。

きっと、優しいレオンハルト様が怒るとは思ってもいなかったんでしょう。

そんなユーティン様を冷たい目で見つめたレオンハルト様は

「僕には婚約者が居ることを知っているだろう?それなのに、なぜ馴れ馴れしく腕を組んでくる?挨拶だって兄上が行っている、と何度も説明しているだろう?」

と言うと、私の方にスッと近付いてきて

「どうしても挨拶に行って欲しいなら行くよ。ただ、ユーティン嬢ではなく自分の婚約者と一緒に、だけどね」

そう言うと、さっきは邪魔されてしまいましたが、今度はしっかりと私の腰を抱いてユーティン様のことを睨みつけましたわ。

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