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186話
しおりを挟むレオンハルト様とほぼ同時に声のした方に振り返ると、そこには私たちと同じくらいの年齢の令嬢が立っていましたわ。
しかも、随分と可愛らしい見た目をしている令嬢で、なんだか他の令嬢とは雰囲気が違うといいますか.......。
レオンハルト様を狙っている令嬢、というよりどこか余裕のあるような、そんな感じがしますわね。
それに、しっかりとお手入れがされている茶色い髪の毛はとても綺麗ですし、緑色の目は大きくクリっとしていて、見つめられるとドキッとしてしまうほど可愛らしい顔立ちをしていますわ。
このような令嬢と仲が良いなんて聞いていませんわよ?
なんて思っていると、レオンハルト様は
「ユーティン嬢?どうしましたか?」
と声をかけてきた令嬢に声をかけましたわね。
何と言うんでしょう......なんだか他の令嬢とは違ってレオンハルト様の反応が柔らかいような気がしますわ。
それに、ユーティンと呼ばれた令嬢もそれに気付いているみたいで満更でもなさそうな顔をしています。
これは......2人がどのような関係性なのかはわかりませんが、ユーティン様がレオンハルト様のことを好きだとしたら......相当厄介ですわね。
そう思いながら2人の様子を窺っていると
「その隣にいるのが噂の婚約者ですの?」
と急にユーティン様が私に視線を向けましたわね。
本当に急のことだったので驚いてしまいましたわ。
そんな中、レオンハルト様は私の様子に気付いていないみたいで
「そうだよ。セリスティア・リンプトン侯爵だ」
と言って私の腰を抱き、自分の方へと引き寄せましたが、その瞬間ユーティン様の眉がピクッと動いたような気がしましたわね。
......いや、ですが、目の前にいるユーティン様は笑顔ですし、私の気のせいだったんでしょうか?
色々な意味でドキドキしながらレオンハルト様身を任せていると、笑顔のままユーティン様が
「侯爵?その年齢で既に爵位を継いでいますの?」
と聞いてきましたわね。
流石にこれについてレオンハルト様が
「あぁ、事情があってね」
と濁してくれたのでありがたいですが.......まぁ、会場にいる皆が気になってはいると思いますわ。
だって、まだ学園を卒業していないのに侯爵という地位にいるなんてありえない話ですもの。
ただ、聞いてもレオンハルト様が詳しく教えてくれることはない、と瞬時に判断したんでしょうね。
ユーティン様は
「そう........」
とだけ呟いて、それ以上聞いてくることはありませんでしたわ。
私としては別に聞かれたら答えますけどね?
ですが、内容がいいものではないですし、このパーティーの中で話すような内容でもない、と思ってくれたんでしょう。
なんて思っていると、急にユーティン様が私の方を見て
「ユーティン・コルストンですわ。レオンハルト様とは幼馴染で、親同士の仲が良いんですの」
と手を差し出してきたではありませんか。
レオンハルト様が私の紹介をした時に完全に無視をしていたのでこのまま挨拶しないものだと思っていましたわよ。
なので、急に挨拶をしてきたことに戸惑いながら、ユーティン様の手を取って
「そうですのね。よろしくお願いしますわ」
と微笑みましたが........ユーティン様との握手の力が普通のものより強い気がしたのは気のせいですわよね?
きっとレオンハルト様の件で私も気を張っているのでそう感じただけですわ。
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