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140話 義父side

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自室に戻った俺は、とりあえずクローゼットの中から一番高かったジャケットを手に取った。

まぁ、とはいえ、他の貴族達からしたら大したことがない金額のものだけどな。

俺からすると相当高かったというか、ここの領民たちには手も出せないような金額のもので........いや、別に今はそんなことを話している暇はないな。

急いでジャケットを羽織って....あと髪の毛だな。

領民たちの前でボサボサの髪の毛で出るわけにもいかない。

そう思った俺は、普段は一切使わないワックスを手に取って、髪の毛に塗った。

確か......メイドがこんな感じで付けてくれていたな。

最後に櫛で前髪を整えて........流石にアクセサリーなんかを付けていくのはおかしいか。

そう判断した俺は過去一で素早く自分の姿を整えてホールへと向かった。

メイドの人数が少ない、ということもあって、茶を出すかどうかは決めていないが.....とりあえずは話を聞いてみないと何もできないしな。

そんなことを思いながらホールの前に到着すると、屋敷に来ていた領民を案内してくれたメイドが俺の姿を見て

「だ、旦那様!?それで領民たちの前に出るんですか!?」

と言ってきたではないか。

なんだ?しっかりとジャケットは羽織ったし、髪の毛もセットしている。

文句をつけるところはないと思っているんだが.......そこまで驚くことか?

そう思った俺は、首を傾げながら

「何か変か?」

と聞くと、メイドはパッと俺から視線を逸らして

「い、いえ........」

とは答えたものの、なにか動揺しているようにもみえた。

......いや、気のせいだな。

きっと普段よりもしっかりと準備が出来ているから驚いて出てしまった、とかそんな感じだ。

なんて思いながら、これ以上メイドに言うこともないし、さっさと領民と話をするのが優先、と思った俺はメイドに

「扉を開けてくれ」

と指示を出した。

はぁ......何を言われるのか想像が出来ないが、とりあえず良い話じゃないだろう。

しっかりと覚悟を決めて向き合わないとな。



ー-------

俺がホールの中に入ると、そこには今までの来客の中で過去一と言えるほど大人数の領民たちの姿があった。

とはいえ、30人ほどなんだが......とりあえず共通しているのは全員女性だ、ということか。

そんなことを思いながら、ホールの一番前にある壇の上に向かう為に歩いていると、何やらヒソヒソと

「今日はどこにいるの?」

「さぁ?確か皆で集まる、とか言っていた気がするわ」

「えぇ!?とんだ淫乱女じゃない!」

と会話をしているのが聞こえてきた。

淫乱女?皆で集まる?

.......嫌な予感がするが.......いや、だが流石にその考えは外れているだろう。

そうじゃなきゃ....いや、そうであって欲しい。

そう思いながら壇の上に上がった俺は、早速

「話があるとのことだが、一体なんの用事だ?」

とホールの中にいる領民たちに声をかけた。

皆、俺が壇の上に上がったことに気付いていなかったみたいで、急に現れた領主の姿に驚いているみたいだが、無理もない。

そもそも、こうやって領主が領民の相手をしている、ということ自体が珍しい事だからな。

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