上 下
110 / 344

109話

しおりを挟む
ユーリと2人で息を切らしながらも無事に温室に到着した私は、すでにお茶を飲んでまったりとしているレオンハルト様に

「お、遅くなって申し訳ないですわ」

深々と頭を下げてそう言いましたわ。

もう、本当に申し訳ないですし、何もなかったかのように優雅に待っているレオンハルト様を見ると本当に申し訳ない気持ちになりますわ。

というのも、私の考えすぎかもしれませんが、怒らないようにあえて冷静になっているみたいな、そんな気がしてならないんですの。

あぁー......ネイトのことは申し訳ないけど、後でも話が出来たんです。

完全に私のミスですわよね。

なんて思っていると

「そんな謝罪されるほど待っていないから大丈夫だよ。それに、何かしらの理由があるんでしょう?」

そう言ってきたレオンハルト様は、本当に怒っていないのか、実際はどうなのか不明ですが凄く優しい笑みをしていますわ。

なので、ここは言葉を濁してしまうよりも正直に言った方が良い、と判断して

「え、えぇ.......こっちに一緒に来ている従者に凄く久しぶりに会いましたの」

とさっきあった出来事をそのまま言うと、レオンハルト様は納得したように小さく頷いた後に

「それは確かに話をしたくもなるよ。僕とはいつでも会えるんだしそっちを優先させてもいいくらいで......」

そう言ってきたので、咄嗟に

「いや、流石にそれは申し訳なさすぎますわ!」

と言葉を遮ってしまいましたわよ。

だって、遅れてきた挙句、話をしたいから、と他の.....しかも従者の方を優先させるなんて、それこそ婚約破棄されてしまいますわ。

なので、絶対にあり得ませんし、遅れてきた、という事実がとにかく申し訳ないです。

なんて思いながらレオンハルト様を見ると、私があまりにも真剣に言葉を遮ったからでしょう。

驚いたような顔をしましたが、すぐに

「冗談だよ」

クスクスと笑いながらそう言ってくれて、安心しましたわ。

この話が終わってすぐに、ユーリが私にお茶を出してくれたので、とりあえず一息つくと、そんな私を見て

「そういえば、僕と婚約したから面倒なことになっていない?大丈夫?」

何やら心配そうな顔で聞いてきましたわね。

面倒なことになっていないか、ですか.......。

これには

「えぇ、基本的に公爵家から出ないので、関わることがないですもの」

ほほ笑みながらそう言いましたが、カティ様のあの発言は面倒なことになっている、ということなんでしょうか?

いや、ですが、私は変な話をされただけで迷惑はしていませんし.......驚きはしましたが、特に何も問題はありませんわよね。

心の中で、本当に何もないか、確認をしながら小さく頷いていると、そんな私をみて、レオンハルト様は

「だったら良いけど.........」

ホッとしたような顔でそう呟きましたわね。

これはもしかして.......

「やっぱりレオンハルト様は大変ですか?」

気になったので聞いてしまいましたわよ。

すると

「まぁ、聞いたことのない令嬢との婚約だからね。どんな令嬢なのか、と色んな人から毎日のように聞かれているよ」

そう言ったレオンハルト様は心配させないように、と笑ってくれてはいますが、なんだか表情が引きつっているようにも思えますわ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

婚約破棄を受け入れたのは、この日の為に準備していたからです

天宮有
恋愛
 子爵令嬢の私シーラは、伯爵令息レヴォクに婚約破棄を言い渡されてしまう。  レヴォクは私の妹ソフィーを好きになったみたいだけど、それは前から知っていた。  知っていて、許せなかったからこそ――私はこの日の為に準備していた。  私は婚約破棄を言い渡されてしまうけど、すぐに受け入れる。  そして――レヴォクの後悔が、始まろうとしていた。

お前は名前だけの婚約者だ、と言われたけれど、おかげで幸せになりました。

あお
恋愛
厳しい選考会を経て第一王子の婚約者に選ばれた侯爵家令嬢シェリアーナ。 王宮での顔合わせの日、王子はお気に入りの侍女を抱きながら、 「お前は名前だけの婚約者だ。愛する人はイリアだけ。俺たちの邪魔をするな」 と言った。

隣国で大活躍中につき、婚約破棄してきた王子様にはもう会いません!

昼から山猫
恋愛
【祖国から要らないと言われた私、隣国では超引っ張りだこなんです」】  子爵令嬢フィオナは、王子アレクセイに「才能なし」と決めつけられ、婚約破棄。嫌気が差して隣国ラウフェンへ行き、のんびり過ごすつもりが、たまたま魔法オペラ劇団の楽屋トラブルに遭遇。彼女は舞台裏の整理や演出スケジュールをササッと把握し、混乱を収めてしまう。  実は王宮で礼法や舞踏を学んでいた彼女の経験が、劇場運営にぴったりハマったのだ。劇団から「ぜひ演出助手をやってほしい」とオファーされ、フィオナは試しにやってみると、次々と劇を成功に導き、観客も劇団員も感謝しきり。  いつしかラウフェン中に「魔法オペラを成功させる立役者がいる」と話題が広がり、貴族社会からも「劇場改革を手伝って」と大勢の依頼が舞い込む。フィオナは連日舞台裏で大忙しだが、感謝される喜びに満たされ、毎日が輝いていた。  祖国はアレクセイ王子が失敗続きで苦境に陥り、「あのフィオナがいれば…」と呼び戻しを試みる。だが劇団やラウフェン貴族らが口をそろえて「彼女は我が国に欠かせない」と拒否。フィオナも「申し訳ありませんが、もうそちらで働く気はありません」と一蹴する。  王子が必死に“お詫び”の書簡を送っても、フィオナは「舞台の本番が迫っているので忙しくて」と相手にしない。祖国の苦しみなど、今の彼女には関係ない話だ。  こうして、祖国で「無能」と言われた彼女は、隣国で新しい道を切り開き、人々の拍手と喝采を受ける立場になった。婚約破棄も悪くない――そんな開き直りさえ感じるほど、フィオナの充実した日々は続いていく。

双子の妹は私から全てを奪う予定でいたらしい

佐倉ミズキ
恋愛
双子の妹リリアナは小さい頃から私のものを奪っていった。 お人形に靴、ドレスにアクセサリー、そして婚約者の侯爵家のエリオットまで…。 しかし、私がやっと結婚を決めたとき、リリアナは激怒した。 「どういうことなのこれは!」 そう、私の新しい婚約者は……。

結婚式の夜、夫が別の女性と駆け落ちをしました。ありがとうございます。

黒田悠月
恋愛
結婚式の夜、夫が別の女性と駆け落ちをしました。 とっても嬉しいです。ありがとうございます!

知らない人に「お前とは婚約破棄をする」と言われました。私の婚約者は貴方じゃありません。

あお
恋愛
エリスが学園のカフェテラスで人を待っていたら、見知らぬ男女がやってきて。 「お前と婚約破棄して、ユリアと結婚する。もう決めた事だ。ヴェラー伯爵には話をつけてある。ユリアを妻として、俺が婿養子に入るって事をな」 と婚約破棄を宣言した。 誰かとお間違えでないですか?  いや、でも女の方、面影があるわ。 お母様が亡くなった後、喪が明ける前に元父が連れ込んだ愛人の子。 ヴェラー家とは縁を切ったはずなのに、これはなんの嫌がらせかしら。 私は、アウリーデ公爵令嬢。 あなた達、こんな公衆の面前で、公爵令嬢を侮辱して、ただで済むとは思わないことね。 遅れてやって来たエリスの婚約者ルイス。 エリスを完璧にエスコートしながら、エリスに喧嘩を売った二人に格の違いを見せつけつつ誤解を解いていく。 元実家のトラブルに巻き込まれたエリスと、彼女の婚約者ルイス。愚かなお猿さんたちの話。 全7話完結。予約投稿済です。

要らない、と申しましたが? 〜私を悪役令嬢にしたいならお好きにどうぞ?〜

あげは
恋愛
アリストラ国、侯爵令嬢。 フィオラ・ドロッセルが私の名前です。 王立学園に在籍する、十六歳でございます。 このお話についてですが、悪役令嬢なるものがいないこの時代、私の周りの方々は、どうやら私をそのポジションに据えたいらしいのです。 我が婚約者のクズ男といい、ピンクの小娘といい…、あの元クズインといい、本当に勘弁していただけるかしら? と言うか、陛下!どう言う事ですの! ーーーーー ※結末は決めてますが、執筆中です。 ※誤字脱字あるかと。 ※話し言葉多め等、フランクに書いてます。 読みにくい場合は申し訳ないです。 ※なるべく書き上げたいですが、、、(~_~;) 以上、許せましたらご覧ください笑

処理中です...