私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

102話 アーリアside

あの侯爵家から届いた手紙の内容、というのは、まぁ、簡単に説明をすると

「了承もなしに家に押し掛けてくるとは、お前はどんな教育を娘にしているんだ。非常識すぎる」

ということがまず1つ。

もう、この時点で納得できないわよね。

だって、私はなかなか返事を寄こさなかったから、出向いてあげただけよ？

それなのに、なんでこんなことを言われないといけないのよ！

それを言うなら、手紙が届いても全く返事を返してこないなんて、息子さんの教育はどうなっているのか、と返事したいくらいよね！

それからもう1つ書かれていたんだけど、それが

「お前を婚約者候補になどした記憶はない。勝手なことを言ったら名誉棄損で訴えることも可能だ」

という....まぁ、簡単に言うと脅しみたいなものよね。

だって、私が他で婚約者候補、と言うのが嫌だということでしょう？

はぁ......そんなことをいわれても事実なんだから仕方ないでしょう、って話よね。

なんて思いながら、他の手紙にはどう書かれているのか、と手紙を手に取ろうとすると、私よりも先にお父様がサッと床に落ちた手紙を拾い上げて

「と、とりあえず、平民でも良いから自分に好意を持っている男性を探して........」

と言いながら、言葉の途中なのに、逃げる様に私の部屋を後にしたわ。

なんなのあれは。

正直、娘に対する態度ではなかったわよね？

そう思いながら、扉の方を見て思わずため息をついたわ。

でも、どうしましょう？

もしあの手紙の内容が同じようなものだったら子爵家や男爵家の家に行っても同じような状況になる？

私は何も悪いことをしていないけど、変な噂が広まるのは嫌よね。

なんて思っていると、お父様が出て行ったばかりの扉の方から、嗅ぎなれた香油の匂いがしてきたわ。

はぁ....ちょっとイライラしているからこのタイミングでお母様が部屋に来るなんて最悪でしかないわね。

そう思いながらも、無視したら面倒なことになるのはわかっているし、仕方なく振り返った。

すると、私が思っていた通り今日も濃い化粧をしたお母様がニヤニヤしながら私のことを見ていて

「アーリア、婚約者選びに苦戦しているみたいね」

バカにしているような口調で私にそう言ってきたわ。

この喋り方、相変わらず嫌いだなぁ....なんて思いながら

「苦戦なんてしてない。誰が良いか選んでいる最中なだけ」

そう言って、手を止めていたメイドにメイクを進めるよう指示をすると

「そうよね。だってアーリアは可愛いもの！」

と言ってきたお母様はからかっているのか、それとも本気なのかわからないけど、さっきと変わらない少しムカつく笑みをしていたわ。

だから、ちょっと苛立って

「お父様は平民でも良い、と言っているけど.....」

そんなつもりもなかったけど、思わずそう呟くと、

「はぁ？平民なんて金も持っていないし、見た目も悪いじゃない！平民とは遊び程度が一番丁度いいのよ」

平民でも良い、と言った瞬間、お母様の表情が物凄く変わったわ。

それはもう....私のことをバカにしています、と言わんばかりの顔。

まぁ、お母様がどう思っているかしらないけど、私は凄く魅力的だもの。

きっとすぐに婚約者が出来るんだから！