私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

91話

ユーリは、机の上のペーパーナイフを勢いよく引くと、次の瞬間しっかりと閉じられていた封筒の封が開いて、2枚の紙が出てきましたわ。

そして、その紙を封筒から引き抜くと、私の目の前に置いて

「さぁ、読んでください！」

とドヤ顔で言ってきたではありませんか。

ま、まぁ.......勝手に手紙を読んでー....までやってしまうと思っていたので少し安心しましたが、とはいえ相当強引の手段ですわね。

なんて思いながらも、せっかくユーリが出してくれたので早速読むことにしましたわ。

うーん....なぜかわかりませんが、少し緊張しますわね。

仲違いしていた友人から急に手紙が来たとき、のような感覚ですわ。

えーっと.....手紙の内容の方は......一言で言うと重要のような、重要ではないような....という内容で、あれほど手紙を読むのに躊躇していたのがバカバカしく感じてしまうような、内容でしたわ。

まぁ、簡単に言うと、最近あの2人が家に来なくなった、ということ。

それから家に入り浸ることがなくなったから、家を守るためにここで待機することに決めた、ということ。

他には、家の中から勝手に持ち出しているものがあるけど、置いて来てしまったお父様達の遺品は隠しているので安心して欲しい、ということ。

ついでに、取られたものは全て紙に記録してある、ということも書いてありましたわ。

その手紙の内容をユーリにも伝えると

「え、じゃあ、メイド長はこっちに来ない、ということなんですか？」

少し寂しそうに、そう言いましたわね。

なんだかんだで、ここにいる皆、メイド長達が来るのを楽しみにしていましたものね。

私も絶対に来ると思っていたので、残念といいますか.......少し寂しい気持ちになりましたわ。

ですが、ここはなるべく冷静に

「まぁ、そういうことになるわね」

とユーリの言葉に返事をすると

「なんというか.......少し寂しいですね」

そう言ったユーリの表情が、なんだか本当に寂しそうでどうにかしてメイド長達をここに呼び出そうか、と考えてしまいましたが、

「仕方がないわ。お父様達の遺品や家を守ってくれている、と考えて、私たちは何か吸収できることをして帰りましょう」

と言うのが精一杯の返事でしたわ。

出来ることなら私もメイド長達に会いたかったですが......こればっかりは仕方がありませんわよね。

そう思いながら、ユーリが少し雑に開けた封筒の中に手紙をしまいましたわ。

今度会う時は、私の婚約者もしっかり決まっていて、私自身どこか成長した、そんな姿を見せたいですわよね。

なんて思っていると

「あ！お嬢様！時間は大丈夫ですか！？」

ユーリに言われて時計を見ると、あと15分ほどで家を出ないといけない時間ですわ。

えーっと.....今は授業で使うものの準備は終わっていますし、セットも全て終わりましたわよね？

そ、その他はー.......

「ちょっと遅くなってしまったわね。急いで準備をしますわ！」

とりあえずユーリにそう声をかけると

「もう！手紙を開けることに躊躇しすぎなんですよ！」

と言いながらも、部屋の片づけを手伝ってくれていますわ。

もう、ユーリの言葉に関しては本当にその通りなので何も言い返せませんわね。