上 下
81 / 344

80話

しおりを挟む


そんなこともありながら、無事に着替え終えた私は、ユーリと一緒に婚約者となる人が来るまでの間、伯父様から受け取った紙を眺めていましたわ。

と言っても、どのような顔をしているのか、などは書かれていないので、本当に情報だけですけどね。

寝る前に見ようと思っていましたが、疲れていたみたいですぐに寝てしまいましたのよ。

えーっと......まず書いてあるのは.......伯母様のはとこの従兄弟の息子.....ですか。

物凄く遠い関係ではありますが、一言で表すと伯母様の親戚、ということですわね。

ただ、伯母様と私には血縁関係がないので、伯母様の親戚でも特に問題ありませんわ。

なんて思いながら紙を読むと、本当に詳しく調査してくれたみたいで、性格、学園での成績、見た目の特徴、周りからの評価.......など、しっかりと書かれていますわ。

私がこのように書かれているなら、どう書いてあるのか......考えるだけで怖いですわね。

まぁ、この紙に紙に書いてある内容だけでしたらハッキリ言うと完璧ですわ。

なぜこの年齢になるまで婚約者が居ないのか理解できないほどに。

性格は、紳士で優しく、穏やか。成績はトップまではいかないものの上から数えた方が早い。

見た目もそこそこ良い方で、生徒会をやっているため生徒の人望ある人気者........ですって。

これほどまで完璧に書かれていると、逆に怪しくも感じてしまいますわよね。

だって、そのような超人が存在するのか、本当に怪しいですわ。

あ、ですが、相手側からしても私の評価はそれと同じ、の可能性がありますわね。

だって、性格は....まぁ、置いておくとしても成績はトップ、見た目はお母様譲りの顔をしていて、義理の親に問題はあっても私自身が嫌われている、と思ったことはありませんもの。

相手側も、こんなのおかしい、と思いながら馬車に揺られていると思いますわ。

なんて思っていると、一緒に紙を見ていたユーリが

「なんだかお嬢様のような完璧子息様ですねぇ......」

と呟いたのが聞こえてきましたわね。

まぁ、ユーリの完璧子息様、というのは同感なので

「私のような、は理解が出来ないけど、本当に完璧すぎて怖いわよね」

そう言って苦笑すると、ユーリは少し考えた後に

「ほら、表の顔は凄く優しいけど実は相当な意地の悪い人、とか......」

表情は明るいですが、結構凄いことを言ってきましたわね。

これには思わず

「そんな不安になるようなことを言わないでくれるかしら?私も全く同じことで不安に思っているんだから!」

と言ってしまいましたわよ。

でも、ユーリも同じことを思っている、と考えたら余計に怖いですわよね。

ただ、伯父様と伯母様が選んでくれた、というだけで、なぜか普段とは違った緊張感がありますわ。

なんといいますか.....絶対に失敗してはいけない、みたいな圧と言えばいいんでしょうか?

なんて思っていると、

「お客様がお見えになりました」

扉をノックした後に、メイドが伝えに来てくれましたわね。

「え、えぇ。ありがとう」

と返事をしましたが、一気に緊張してきましたわ。

で、ですが、大丈夫です!

伯父様と伯母様が一緒に居てくれる、とのことなので、私があまりにも失態を犯さない限り、大丈夫ですわ!

そう自分に言い聞かせて、椅子から立ち上がりましたわ。

そして、

「お嬢様、邪魔者はいませんし、頑張ってくださいね!」

というユーリの声を背に、客室を後にしました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は父の遺言により誕生日前日に廃嫡されました。

夢見 歩
ファンタジー
日が暮れ月が昇り始める頃、 自分の姿をガラスに写しながら静かに 父の帰りを待つひとりの令嬢がいた。 リリアーヌ・プルメリア。 雪のように白くきめ細かい肌に 紺色で癖のない綺麗な髪を持ち、 ペリドットのような美しい瞳を持つ 公爵家の長女である。 この物語は 望まぬ再婚を強制された公爵家の当主と 長女による生死をかけた大逆転劇である。 ━━━━━━━━━━━━━━━ ⚠︎ 義母と義妹はクズな性格ですが、上には上がいるものです。 ⚠︎ 国をも巻き込んだ超どんでん返しストーリーを作者は狙っています。(初投稿のくせに)

義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます

富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。 15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。 よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 あらまぁ...別に良いんですよ だって、貴方と婚約なんてしたくなかったですし。

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月

りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。 1話だいたい1500字くらいを想定してます。 1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。 更新は不定期。 完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。 恋愛とファンタジーの中間のような話です。 主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

婚約破棄ですか? ありがとうございます

安奈
ファンタジー
サイラス・トートン公爵と婚約していた侯爵令嬢のアリッサ・メールバークは、突然、婚約破棄を言われてしまった。 「お前は天才なので、一緒に居ると私が霞んでしまう。お前とは今日限りで婚約破棄だ!」 「左様でございますか。残念ですが、仕方ありません……」 アリッサは彼の婚約破棄を受け入れるのだった。強制的ではあったが……。 その後、フリーになった彼女は何人もの貴族から求愛されることになる。元々、アリッサは非常にモテていたのだが、サイラスとの婚約が決まっていた為に周囲が遠慮していただけだった。 また、サイラス自体も彼女への愛を再認識して迫ってくるが……。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

処理中です...