上 下
62 / 344

61話 デールside

しおりを挟む
「すまない.......君のことは嫌いではないんだけど、あの母親たちがいると考えるとこの婚約はなかったことに.......」

そんな簡単な言葉で、俺とセリスティア様との婚約は幕を下ろした。

正直、今回の婚約は親同士で決めたことだったし、俺からしてみるとセリスティア様の親と姉の癖が強すぎる、と思ってしまった。

だって、婚約して短い期間だったけど、婚約が決まった次の日から毎日手紙が届くんだぞ?

しかも、

「セリスティアなんかより、私の方が美人で胸もあるし魅力的よ。今度、家に来てお茶でも飲みましょう」

という内容と

「セリスティアと婚約破棄して姉のアーリアと婚約しなさい」

という内容だぞ?

それが毎日毎日届くって考えてみろ。

朝起きるのが憂鬱になってくるって、誰でもわかるだろう?

まぁ、一応婚約者の姉だ、ということで仕方なしにアーリア様とお茶をしようと家に行ったんだが......その時なんて本当に地獄かと思ったよ。

普通にお茶を飲むとしたら椅子に座って、テーブルの上には茶菓子が置いてあって......談笑しながら楽しむ、という感じだろう?

それなのに、あのアーリア様は椅子に座る、ではなく寝る。

そして、茶菓子をつまむ程度ではなくしっかりと食べる。

それに加えて、やっぱりあのセリスティア様よりも美人だ、なんて言われると期待するに決まっているだろう?

最初はルンルンで家に行ったのに、帰る頃には来たときより2キロは痩せたんじゃないか、と思ってしまうほど疲労が凄かったね。

あー.....まぁ、確かに胸はあったさ。

あったけど、胸と言って良いのか........腹と胸が同じサイズなんだぞ?

貴族令嬢であれほどまでに太った人を見たのは初めてだった。

......とまぁ.....そんなことがあって、俺はセリスティア様との婚約を破棄することに決めたんだ。

もちろん、父上たちに言うと何と言われるかわからなかったから、何も言わずに俺の独断で。

といっても別に俺の婿入り先を探していただけだし、セリスティア様以外にも結婚してくれる令嬢が沢山いるさ。

そう思って意気揚々と家に帰ってから婚約破棄したことを父上たちに報告したんだ。

すると

「お前!何を考えているんだ!」

俺の話を全て聞くことなく、父上は俺の頬を思いっきり殴った。

母上なんて、隣で目に涙を溜めて泣いてしまったくらいだ。

正直、なんで2人がそこまでなるのか理解が出来ない俺は、また殴られるかも、と警戒しながら父上に

「え、な、なぜそんなにこの婚約が必要なんですか?」

と尋ねた。

すると父上は、力なく俺の方を見ると

「お前は何も知らないんだな.......」

そう言って、ある書類を手渡してきたではないか。

その書類には一番上に、制約、と書かれていて、真ん中に

『セリスティア・リンプトンとデール・ガリアスの婚約を結んでいる間、ガリアス伯爵家の立て直しに協力することをー.............』

と書かれていた。

まぁ、簡単に言うと俺とセリスティア様の婚約期間、領地の経営の立て直しを手伝う。

そのまま結婚までいったらセリスティア様が生きている間、永久的に助ける。

というような内容だった。

この書類を読み終えた俺は父上になんて声をかけていいのかわからなくなって、ただただ無言で黙っていると

「この婚約を結ぶ代わりに、我が家の領地を立て直すために、セリスティア嬢の力をとてつもなく借りていたんだ。婚約破棄したら、領地が...........」

そう言った父上は、今まで見たこともないくらい弱弱しく、自分のしたことを悔いることしか俺には出来なかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は父の遺言により誕生日前日に廃嫡されました。

夢見 歩
ファンタジー
日が暮れ月が昇り始める頃、 自分の姿をガラスに写しながら静かに 父の帰りを待つひとりの令嬢がいた。 リリアーヌ・プルメリア。 雪のように白くきめ細かい肌に 紺色で癖のない綺麗な髪を持ち、 ペリドットのような美しい瞳を持つ 公爵家の長女である。 この物語は 望まぬ再婚を強制された公爵家の当主と 長女による生死をかけた大逆転劇である。 ━━━━━━━━━━━━━━━ ⚠︎ 義母と義妹はクズな性格ですが、上には上がいるものです。 ⚠︎ 国をも巻き込んだ超どんでん返しストーリーを作者は狙っています。(初投稿のくせに)

義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます

富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。 15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。 よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!

婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 あらまぁ...別に良いんですよ だって、貴方と婚約なんてしたくなかったですし。

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月

りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。 1話だいたい1500字くらいを想定してます。 1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。 更新は不定期。 完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。 恋愛とファンタジーの中間のような話です。 主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

婚約破棄ですか? ありがとうございます

安奈
ファンタジー
サイラス・トートン公爵と婚約していた侯爵令嬢のアリッサ・メールバークは、突然、婚約破棄を言われてしまった。 「お前は天才なので、一緒に居ると私が霞んでしまう。お前とは今日限りで婚約破棄だ!」 「左様でございますか。残念ですが、仕方ありません……」 アリッサは彼の婚約破棄を受け入れるのだった。強制的ではあったが……。 その後、フリーになった彼女は何人もの貴族から求愛されることになる。元々、アリッサは非常にモテていたのだが、サイラスとの婚約が決まっていた為に周囲が遠慮していただけだった。 また、サイラス自体も彼女への愛を再認識して迫ってくるが……。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

処理中です...