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56話
しおりを挟むブレイドは、
「ちょーっと待ってね」
と言いながら、頭を抱えて何かを考えた後に
「えっと.....俺が直接見たわけではないよ?」
という前置きの後、ジュミナ伯爵家について話をし始めましたわ。
ブレイドの話曰く、前置きの通り特に詳しく何かを知っている、という訳ではないみたいですわね。
ただ、内容はー.....良いのと悪いのと、というなんとも複雑な印象ですわ。
まず最初に夫人についてなんですが、夫人は特に何の噂もないみたいですわね。
パーティーで見かけたとしても、あまり目立つようなこともなければ、特別地味だ、というわけでもありませんし、伯爵家の夫人、という印象らしいです。
さて、次はカティ様について、なんですが、これを聞いた時に、リーシャ様が引きこもってしまったのも、これが原因なのでは?と思ってしまいましたわ。
まず、カティ様は基本的に勉強、マナーの両方が同い年の令嬢よりも優秀な人らしいんですのよね。
なので、一時期
「なんでも出来る天才令嬢」
なんて大そうな噂をされたらしいですわ。
これだけを聞くと、私も
「あら、凄いですわね。だったら家庭教師もいらないのでは?」
くらいで思うだけなんですが、ここで伯爵が、天才令嬢と噂をされるようになったカティ様の婿にならないか、と色んな子息達に声をかけまくっていたみたいなんですの。
それも、カティ様が参加するパーティーでは毎回のように。
きっと伯爵からしてみると、そろそろ婚約者が欲しい、というタイミングで、カティ様が良い具合に噂になってくれたからここぞとばかりに周りに声をかけた、という感じなんでしょう。
ブレイドは、
「実は俺も声をかけられたことがあるんだよね。もちろん婚約者もいるし断ったけどさ。ちょっと不愉快に思えるような言い方をしていたから頭の片隅には残っていたんだよね」
そう言って苦笑していますが、婚約者のいる、しかも公爵家の後を継がないといけないブレイドに声をかけるなんて頭がおかしい、としか思えませんわね。
正直、私がカティ様の立場だったら恥ずかしくて伯爵と話をしないと思いますわ。
そう思いながらも、とりあえず不愉快な言い方、というのが気になって
「どのようなことを言われましたの?」
と聞いてみましたわ。
すると
「そう、それが思い出せなくて悩んでいたんだけどね。確か、妹の方を随分と下げる様な言い方をしていたんだよね」
ブレイドはそう言うと、本当に悲しそうに下を向いて、伯爵が言った言葉の内容を教えてくれましたわ。
伯爵は、カティ様に婚約者を、と必死になりすぎて、カティ様を持ち上げるためにリーシャ様を使って言い寄ったらしいんですの。
しかもその内容が、
「妹のリーシャはマナーも出来ない、勉強もいまいち。それでいて顔もそんなにいいわけではない。それと比べて姉のカティだったらー..........」
とかいう内容らしいですわね。
この話をリーシャ様が聞いていたら、と考えると.......胸糞が悪くなると言いますか、そもそも10歳の令嬢に13歳の令嬢と同じことを求める、ということじたいおかしい話なんですのよね。
それはわかっていますの?
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