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44話
しおりを挟む無事に伯爵家の門を通過することが出来た私は、さっきの門番さんに軽く挨拶をして、その場を後にしましたわ。
門番さんは、ユーリが色々と手続きをしている間もお話をしたがっていましたが、流石に門でダラダラと話をするわけにもいかないので、仕方ないですわよね。
ただ、少し残念そうな顔をしていたのは、申し訳なくも思いましたわ。
さて、私達が玄関に到着すると、門番から話がいっていたみたいで伯爵と夫人、それから私の2つくらい年下の令嬢が待っていてくれていましたわ。
えっと......紙に書いてあったのはもう少し小さな子だと記憶していますが......大人っぽい子なのかしら?
それとも、本人はまだ来ていない、とか?
なんて思っていると、ユーリは玄関前に立っている子が教え子だ、と信じているみたいで
「お嬢様!多分、あの人達ですよね!」
と目をキラキラと輝かせて私の方を見てきましたわ。
なんだか私よりもユーリの方が楽しみにしていたみたいですわね。
まぁ、普通に暮らしていたら関わることが出来ないことですものね。
気持ちはわかりますわ。
そんなことを思っていると、ユーリが率先して馬車を降りて、私にスッと手を差し出してくれましたわ。
当然ながら、ドレスを着ているのでユーリの手を借りて降りましたが........最初はぎこちなかったユーリも今では慣れたものですわね。
やっぱり回数、というのは大事なことだ、ということですのね。
ユーリにエスコートをされて伯爵たちの前に到着すると、3人ともなぜか物凄く背筋をピンっと伸ばしてくれていますわ。
緊張している、ということなんでしょうか?
なんて思いながら、とりあえず私の方から
「初めまして。クリストファー公爵家から参りました。セリスティア・リンプトンですわ」
と声をかけると、伯爵の方は
「え、えっと........?」
と戸惑っているみたいですわね。
まぁ、当然ですわよね。
クリストファー公爵夫人にお願いしたのに、家の人どころか、全く違う小娘が来たんですもの。
そりゃあ、驚きますわ。
伯爵のキョトンとした顔が少し面白くて、思わず、ふふっと笑いそうになりましたがグッと堪えると、隣で私のことを凝視していた夫人が
「もしかして、セリアーティ様の娘さんかしら?」
恐る恐る、という様子ですが、小さめの声でそう話しかけてきましたわね。
これには
「え?えぇ、そうですわ」
と反射的に答えてしまいましたが.......まさかこのようなことはありますか?
だって、お母様のことを知っている人が1日で2人も.....しかも、偶然ですわよ?
普段では絶対にありえないことなので、なんだか嬉しい気持ちになりますわ。
なんて思っていると、最初は恐る恐る、という様子だった夫人の表情が一気に明るくなって
「まぁまぁまぁ!まさかあのお方の娘さんに来てもらえるとは思ってもいませんでしたわ!」
と言うと、私の両手をガシっと掴んで上下にブンブン、と振って喜んでくれましたわ。
一方、私達の様子を見ていた伯爵と令嬢の方は
「え?えーっと.......?」
「お母様?一体どうされたんですか?」
と驚いた顔をしていますけどね。
まぁ、正直私も驚いていますわよ。
ですが、驚きよりも嬉しさの方が大きいですわよね。
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