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26話

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一通り、クリストファー公爵家のお屋敷の案内をしてもらった、ということで、やることもなくなってしまった私達はセバスにお願いして温室でお茶を楽しむことになりましたわ。

ブレイド曰く、まだ客室の準備が終わっていないだろう、とのことだったので私から提案しましたの。

公爵家の、温室でのお茶会はお母様が一番好きだ、と教えてくれたことですし、私も久しぶりに公爵家の温室を見たい、と思っていたのでタイミングが良かったですわ。

クリストファー公爵家の温室は季節によってお花の種類が違うし、それに合わせてお茶の用意もしてくれるおかげで飽きないんだ、とお母様が言っていましたのよね。

今でも温室は綺麗に保たれているのかしら?

なんて思いながら、昔来たことのあるお花で出来たアーチをくぐって、温室へと向かいましたわ。

....本当に懐かしいですわね。

昔はこのアーチを見て、お姫様になったみたいだ、と喜んでいましたわ。

そんな私を見て、お母様もお父様も優しく笑ってくれましたのよね。

...........って、なんだかしんみりした気分になってしまいましたわ。

せっかく楽しいお茶会だ、と思っていたのに私がこんな状況だと、ブレイドも気を遣ってしまいますわよ。

そう思った私は、一瞬落ち込んだ気分を立て直して、温室へと入りましたわ。

温室の中に入ると、一番最初に目に入ってきたのは綺麗な真っ赤な薔薇。

その横には、薔薇の花と合わせるのに定番なアルケミラ・モリスが植えられていますわね。

本当に定番な組み合わせですし、どこでも見る2つの花ですが配置や植え方によって見え方も違うんだ、とお母様がだいぶ前に教えてくれましたわ。

教えてもらってすぐの時は、そうなんだ、と思っていた程度だったんですけどね。

この年齢になって公爵家の温室を見ると、レベルの違いがよく分かりますわ。

なんてことを思いながら、備え付きの椅子とテーブルに向かいましたわ。



椅子に座って辺りを見渡すと、また違った風景が広がっていましたわ。

なんて言えばいいんでしょう?

立って見ていた時とは違う、薔薇の花に囲まれているかのような........。

「綺麗ですわ.........」

無意識にそう呟くと、それを聞いたブレイドは、嬉しそうに

「昔から温室には力を入れているからね」

と言いながら、薔薇の花を掴みましたわ。

うーん.....こうやって見るととても絵になりますわね。

自分の従兄弟ながら、見た目の良さは今まで会った人の中でも結構上位ですわよ。

なんて呑気に思っていると

「叔母様が亡くなってから、余計に温室は気合を入れる様になった、って聞いているよ。多分、叔母様は温室が好きだったんじゃないか?」

とブレイドが私に聞いてきましたわ。

別に嘘をつくようなことでもありませんしね。

ブレイドの質問に素直に

「えぇ.........自慢の温室だ、と私にもよく話をしてくれましたわ」

と私が答えると

「やっぱりね」

そう言ったときのブレイドは、なんだか寂しそう、と言ったら良いんでしょうか?

なんだか違和感のある苦笑で、なんだか引っかかりますわ。
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