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33話 レオンside

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自宅で謹慎中、心を入れ替えて父上の仕事の手伝いをした。

その間にもスカーレットには欠かさず手紙を出してもらっている。

父上の手伝いは、勿論俺より先に手伝いをしていた弟の方が圧倒的に役に立つと思う。

だって、俺なんか3学年の時は勉強もせず遊び歩いていたからな。

弟とは表せないほどの差が出来てしまっただろう。

それに対して多少の悔しさはあったけど、自分が悪いということがわかっていたから弟にも教えてもらいながらなんとか仕事を覚えている最中だ。

我が家の後継者問題は一旦保留となっている。

いや、本当は弟にするつもりで動いていたけど、父上が俺に最後のチャンスを与えてくれたんだ。

それから.......俺は無事に公爵家の当主になることができたらスカーレットにプロポーズしようと考えている。

今の俺は、何もできないただのバカだからな。

それなのに、聞こえの良い言葉ばかり聞いてきたせいで、それに気付けなかった。

本当にバカだよなぁ.......。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆

何だかんだで父上の仕事を手伝い始めて1か月が経った。

だいぶ仕事内容も覚えたし、やれることも増えたと思っている。

もう謹慎も終わったし、俺が次期当主になるのも時間の問題だろうな。

そろそろスカーレットに会いに行こうか......。

そう思っていると

「やはり次期当主はーーーーー」

「ふむ......ワシもそう思っておったがーーーーー」

この声は...父上と母上か?

次期当主と聞こえた気がするが.........。

そっと執務室の中の会話に耳を傾けると

「レオンに当主は向いていないと思ってーーーーー」

「そうだなーーーーー」

今、俺は当主に向いていない、と言ったか.........?

はは......っ。

そうだよな。

やっぱりそうなるよな......。

一緒に手伝いをしていて俺だってわかったさ。

弟がどれほど優秀なのかは嫌という程にな...。

でも、それでも頑張ったけど無駄だったじゃないか。

そう考えるといてもたってもいられず、その場を逃げるように後にした。


自室に戻ると、俺を待っていたかのように弟が部屋に入ってきて

「兄さん」

と声をかけてきた。

正直、会いたくなかった相手だ。

でも無視するわけにもいかず返事をすると

「お義姉様.........いや、スカーレット様が隣国で結婚式を挙げるらしい」

.........は?

スカーレットが?

一体誰と結婚するというんだ?

まだ頭が追いついていない中、

「一応、まだ未練があるみたいだから伝えとこうと思って」

弟はそう言って立ち去って行った。

目の前が真っ暗になった。

当主にもなれない。

スカーレットも戻ってこない。

もう俺には何もないじゃないか。

.........いや、まだスカーレットは間に合うかもしれない。

その思いで、今まで必死に手伝った仕事も全て放り出して隣国へと向かった。

色んな教会を回って歩いて、やっと見つけた、と思ったときはちょうどスカーレットの結婚式で、

「スカーレット!!」

と叫んだけど、俺には気付くことなく式は進んでいった。

その瞬間、俺は全てを失ってしまった。
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