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6話 ユリアスside
しおりを挟むマリアンヌ様が冤罪だ、という話を聞いて、俺はすぐに去年のことを調べ始めた。
もし兵士達が話していたことが本当だったら殿下を王太子の座から引きずり下ろすことが出来る。
俺は、殿下が勝手に暴走してしまったことに驚いてしまって、止めることが出来なかった、とでも言えばまた宰相になれるかもしれない。
俺だけが次期宰相の座を奪われて、アイツだけがいまだに王太子なのが気に食わないからな。
大体、バカのくせに俺よりも立場が上なのが1番気に食わない。
そう思いながら卒業した学園に向かった。
先生の1人や2人くらいは当時の事実をしっているだろう、と思ったからだ。
本当はマリアンヌ様から話を聞きたかったが、婚約破棄されて、なぜか家からも絶縁されたと聞いた。
というか、国外追放だ、と言ったのは殿下だけで、陛下や王妃が決定したことではないから本当は従わなくても良いことくらいわかっていたはずだ。
それなのに、なぜマリアンヌ様はすんなりと頷いたんだ?
それに、マリアンヌ様を絶縁する理由もわからない。
一応、あの家は一人娘で、公爵家は弟の息子が継ぐ、という話だったような気がするが......
婚約破棄されたら、逆に喜ぶはずだ。
だって、自分の娘が跡取りになったんだから。
そう考えながら歩き慣れた廊下を歩いて、職員室に向かう途中、見慣れた後ろ姿が目に入った。
あれは......まさか、リディアか!?
いや、卒業したはずのリディアが学園にいるわけがない...っ!
きっと見間違えか何かだと思うが...。
すると、1人の令嬢が
「リディア先生、おはようございます」
と笑顔で挨拶をしているのが耳に入った。
令嬢は確実にリディア、と呼んでいた。
それに、先生だと?
リディアは教師になったのか......?
そう思って思わず立ち止まって2人の話を聞き入ってしまった。
「あら、おはようございます」
そう言った声は、聞きなれた、あのふんわりした優しい声で、なんだか懐かしい気持ちになった。
おかしい、俺はアリスのことを愛しているからリディアと婚約破棄したのに......
「先生呼びはいまだに慣れませんですわ」
「あらまぁ...ですが、私を先生と呼べるのは残り少ないですわよ?」
「そうですわね...卒業したら、是非お茶会にきてくださいね。一家総出でお出迎え致しますわ!」
「まぁ!それは楽しみです。お誘い、お待ちしていますね」
楽しそうに令嬢と笑い合うリディアは俺が見たこともないような優しい笑顔で、なぜか悔しい気持ちになった。
本来なら、今頃俺は宰相見習として働いていて、隣にはリディアがいて、幸せに暮らしていたはずなんだ。
でも、それを壊したのは自分自身だ。
それなのに、なんでこんなに悲しいような、悔しいような...そんな気持ちになるんだ?
いや......でもリディアとはもう終わったんだ。
そう思いながらも、無意識にリディアの元に近付いていた。
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