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32話
しおりを挟む今まで顔を真っ赤にして肩を震わせていたユリウスの父親は
「それで?」
と開き直っていた。
これには思わず、は?って言いそうになってしまった。
自分の息子がこんなことしてて、謝罪も何もないの!?ありえないんだが!?
「これだけで長く続いていた婚約を破棄しようなんて考えているのか?」
あー、なるほどね。
確かにこれだけで婚約破棄しますーなんて弱すぎるって話なのよね。
どうするんだろう?と思ってサーシャを見ると、その顔にはどこか自信のあるような...そんな雰囲気をしていた。
サーシャは私を見てニッコリと微笑むと
「...仕方ないですねぇ~。これは出来るだけ言いたくなかったんですけど~、そんなに言うならちゃんとした理由を教えますねぇ~」
そう言って、懐からある写真を取り出した。
これはなんだ?と尋ねたユリウスの父親にサーシャの父親が
「ノヴァ侯爵、貴殿は家のことはユリウス殿に任せているんだよな?」
と聞くと
「あぁ、その通りだ。自分に任せて欲しいとユリウスが言ったからな。おかげで宰相の仕事に専念できている」
そう胸を張って答えた。
自分の息子は出来がいいんだ、と自慢気だ。
......ていうか、これ部外者の私が聞いてもいい内容なのかなぁ?
なんとなくヤバいような気がするんだけど...
「任せている...ですか。その仕事の半分以上は私が片付けていたって知っていますかぁ~?」
は?
「......は?」
あらやだ、心の声とユリウスの父親の声が一致してしまったわ。
なに!?ユリウスは私の天使にそんなことさせてるの!?
サーシャから衝撃的な事実を言われて、ユリウスの父親は狼狽え出している。
でもそれを気にすることなくサーシャは
「私だって嫌味だけだったらいくらでも聞きますよぉ~。でもユリウス様は私に仕事を押し付けてモニカさんと遊んでいますからねぇ~。今後もそうなるって考えたら無理ですよねぇ」
と続けた。
「ど...っ、どういうことだ!?」
「それからぁ~、モニカさんに貢ぎすぎて、ちょーっとヤバいことにも手を染めていますねぇ~」
うわぁ...これ絶対私が聞いちゃいけないやつじゃない?
退席してもいいかな.........言いづらい...っ!
「はぁ!?」
「最近、メイドさんの入れ替わりが激しいことに気付きましたかぁ~?」
「あ、あぁ。帰るたびに新しく入った若いメイドが居るな」
「そりゃそうですよぉ~。お金を工面する為に、メイド達を売り飛ばしているんですからぁ、新しい子を入れないと大変ですものねぇ~」
ニヤリと笑うサーシャはゆったりとした口調に似合わない笑顔を向けている。
サーシャの父親が
「ここ最近、侯爵夫人のドレスがやけに豪華だとは思わなかったか?」
と聞いた。
あ、そうなんですね。
ユリウスの母親とか見たことがないから全然わかんないわ。
「た、確かに...必ず新しいドレスにアクセサリーも付けていた......で、でも!証拠はあるんだろうな!?」
「ですからぁ~、この写真が証拠のひとつなんですよぉ~」
てかさ、ユリウスの父親、めっちゃ驚いてるんだけど、家のことに興味無いの?
普通はそんなに変わったことがあったなら聞くでしょ。
実は頭悪いのかな?
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