上 下
33 / 48

32話

しおりを挟む

今まで顔を真っ赤にして肩を震わせていたユリウスの父親は

「それで?」

と開き直っていた。

これには思わず、は?って言いそうになってしまった。

自分の息子がこんなことしてて、謝罪も何もないの!?ありえないんだが!?

「これだけで長く続いていた婚約を破棄しようなんて考えているのか?」

あー、なるほどね。

確かにこれだけで婚約破棄しますーなんて弱すぎるって話なのよね。

どうするんだろう?と思ってサーシャを見ると、その顔にはどこか自信のあるような...そんな雰囲気をしていた。

サーシャは私を見てニッコリと微笑むと

「...仕方ないですねぇ~。これは出来るだけ言いたくなかったんですけど~、そんなに言うならちゃんとした理由を教えますねぇ~」

そう言って、懐からある写真を取り出した。

これはなんだ?と尋ねたユリウスの父親にサーシャの父親が

「ノヴァ侯爵、貴殿は家のことはユリウス殿に任せているんだよな?」

と聞くと

「あぁ、その通りだ。自分に任せて欲しいとユリウスが言ったからな。おかげで宰相の仕事に専念できている」

そう胸を張って答えた。

自分の息子は出来がいいんだ、と自慢気だ。

......ていうか、これ部外者の私が聞いてもいい内容なのかなぁ?

なんとなくヤバいような気がするんだけど...

「任せている...ですか。その仕事の半分以上は私が片付けていたって知っていますかぁ~?」

は?

「......は?」

あらやだ、心の声とユリウスの父親の声が一致してしまったわ。

なに!?ユリウスは私の天使にそんなことさせてるの!?

サーシャから衝撃的な事実を言われて、ユリウスの父親は狼狽え出している。

でもそれを気にすることなくサーシャは

「私だって嫌味だけだったらいくらでも聞きますよぉ~。でもユリウス様は私に仕事を押し付けてモニカさんと遊んでいますからねぇ~。今後もそうなるって考えたら無理ですよねぇ」

と続けた。

「ど...っ、どういうことだ!?」

「それからぁ~、モニカさんに貢ぎすぎて、ちょーっとヤバいことにも手を染めていますねぇ~」

うわぁ...これ絶対私が聞いちゃいけないやつじゃない?

退席してもいいかな.........言いづらい...っ!

「はぁ!?」

「最近、メイドさんの入れ替わりが激しいことに気付きましたかぁ~?」

「あ、あぁ。帰るたびに新しく入った若いメイドが居るな」

「そりゃそうですよぉ~。お金を工面する為に、メイド達を売り飛ばしているんですからぁ、新しい子を入れないと大変ですものねぇ~」

ニヤリと笑うサーシャはゆったりとした口調に似合わない笑顔を向けている。

サーシャの父親が

「ここ最近、侯爵夫人のドレスがやけに豪華だとは思わなかったか?」

と聞いた。

あ、そうなんですね。

ユリウスの母親とか見たことがないから全然わかんないわ。

「た、確かに...必ず新しいドレスにアクセサリーも付けていた......で、でも!証拠はあるんだろうな!?」

「ですからぁ~、この写真が証拠のひとつなんですよぉ~」

てかさ、ユリウスの父親、めっちゃ驚いてるんだけど、家のことに興味無いの?

普通はそんなに変わったことがあったなら聞くでしょ。

実は頭悪いのかな?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います

真理亜
恋愛
私、リリアナが転生した世界は、悪役令嬢に甘くヒロインに厳しい世界だ。その世界にヒロインとして転生したからには、全てのプラグをへし折り、地味に目立たず過ごして、ざまぁを回避する。それしかない。生き延びるために! それなのに...なぜか悪役令嬢にも攻略対象にも絡まれて...

不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜

晴行
恋愛
 乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。  見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。  これは主人公であるアリシアの物語。  わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。  窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。 「つまらないわ」  わたしはいつも不機嫌。  どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。  あーあ、もうやめた。  なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。  このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。  仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。  __それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。  頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。  の、はずだったのだけれど。  アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。  ストーリーがなかなか始まらない。  これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。  カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?  それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?  わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?  毎日つくれ? ふざけるな。  ……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?

転生令嬢シシィ・ファルナーゼは死亡フラグをへし折りたい

柴 (柴犬から変更しました)
恋愛
 脳筋家族に囲まれ脳筋として育った獅子井桜は、友人から話を聞いただけの乙女ゲームに悪役令嬢シシィ・ファルナーゼとして転生した。  冤罪で断罪されて処刑コースだけは避けたいシシィ・ファルナーゼ。  乙女ゲームの知識もほぼ無く、とりあえず婚約者になるのを避ければ大丈夫だと四苦八苦する。  一方、婚約者の死亡後に冤罪だったと知った王子は何故か婚約前まで時間が巻き戻り、今度こそシシィを信じると誓っているが、巻き戻り前と様子の違う婚約者に戸惑う。  小淑女と呼ばれた完璧令嬢の筈のシシィ・ファルナーゼが、脳筋女子高生獅子井桜の意識で生きていき、一回目とは違う展開になっていく。 ※R15は保険 ※最初だけシリアス なろうさまでも掲載しております

悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います

恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。 (あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?) シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。 しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。 「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」 シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。

断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!

寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを! 記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。 そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!? ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する! ◆◆ 第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。 ◆◆ 本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。 エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。

公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン
恋愛
 HOTランキング 1位 (2019.9.18)  お気に入り4000人突破しました。  次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。  だが、誰も知らなかった。 「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」 「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」  メアリが、追放の準備を整えていたことに。

【完結】貧乏令嬢は自分の力でのし上がる!後悔?先に立たずと申しましてよ。

やまぐちこはる
恋愛
領地が災害に見舞われたことで貧乏どん底の伯爵令嬢サラは子爵令息の婚約者がいたが、裕福な子爵令嬢に乗り換えられてしまう。婚約解消の慰謝料として受け取った金で、それまで我慢していたスイーツを食べに行ったところ運命の出会いを果たし、店主に断られながらも通い詰めてなんとかスイーツショップの店員になった。 貴族の令嬢には無理と店主に厳しくあしらわれながらも、めげずに下積みの修業を経てパティシエールになるサラ。 そしてサラを見守り続ける青年貴族との恋が始まる。 全44話、7/24より毎日8時に更新します。 よろしくお願いいたします。

転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈ります

みゅー
恋愛
 私このシーンや会話の内容を知っている。でも何故? と、思い出そうとするが目眩がし気分が悪くなってしまった、そして前世で読んだ小説の世界に転生したと気づく主人公のサファイア。ところが最推しの公爵令息には最愛の女性がいて、自分とは結ばれないと知り……  それでも主人公は健気には推しの幸せを願う。そんな切ない話を書きたくて書きました。 ハッピーエンドです。

処理中です...