旦那様、離婚しましょう

榎夜

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マノンside 6

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あれからまた1ヶ月後

シエラから久しぶりに手紙が届いた。

それぞれの両親を呼んで話すことがある、と。

もう俺の両親には手紙で報告済みだと書いてあった。

たぶん、離婚の話だろう。

それはわかっているけど、久しぶりに見るシエラの文字を愛おしく感じてしまうなんて俺もおかしくなってしまったんだろうか...。






迎えた当日、リリーに部屋から絶対に出るなと言ってから来客の準備を命じた。

この時にいる従者はもう5人にまで減っていたから、全員を準備のためにまわした。

まず最初に到着したのは父上と母上だった。

母上が到着するとすぐさま何があったのか俺に尋ねてきたが、それを今から話すからと返事を濁した。

その10分後くらいにシエラ達が到着した。

久しぶりに見るシエラは相変わらず綺麗で、思わず見とれてしまうほどだった。

でも、その気持ちを踏み躙るようにシエラは

「私がいない間、どうでしたか?」

とにこやかに聞いてきたから思わず睨みつけてしまった。




シエラ達が着席すると、すぐに

「私はマノン様と離婚したいと思っています」

と言い出した。

色々と話をしてから、その話をしてくるものだと思っていたから油断してしまった。

隣で父上と母上がシエラを責めているが、俺は否定も何もすることが出来ない。

俺が黙って俯いていると

「ずっと思い続けている人がいるのはマノン様の方です」

というシエラの声が聞こえてきた。

頼むから相手の名前だけは言わないでくれ......っ

そう思ったのも束の間、シエラがリリーの名前を出してしまった。

気付いたら、頬に鈍い衝撃を感じた。

一拍遅れて俺は父上に殴られたんだ、と理解した。

「お前はまだあの娼婦のような女と...っ」

と言う父上の肩が震えているのに気付いて自分のした事の重大さに改めて気付かされた。

そんな状況の中、シエラは殴られた俺を冷たい目で見据えて、家に帰って来ていないこと、リリーを妊娠させたことを父上達に暴露した。

もう俺の人生終わったな、そう考えると無意識に体が震えてしまう。

すると、思いもよらなかった人からの援護があった。

父上と母上だ。

特に父上はさっき俺の事を殴ったのに、今は俺の事を必死に援護してくれている。

俺はこの状況を理解することが出来なかった。

なんでそこまでシエラと離婚させるのを嫌がっているんだろう?

そんな考えが頭の中でグルグル巡っていた。


シエラが大きなため息を着いたと同時に今ここに来て欲しくない人の声が聞こえてきた。

「マノン様ぁ~」

という甘ったるい声と同じくらい甘い香りの香水の匂いを付けたリリーの声が。
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