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5話
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私とお父様とお母様はハーヴェスト公爵家に来ている。
あ、ちなみに隠居されている所が別荘、こっちは本家、という感じですね。
久しぶりに我が家に入ると私が住んでいた時より少し薄汚れている気がする。
まぁ、従者達は半数以上がいなくなくなってますから当たり前ですよね。
私達が客室に入ると、そこにはマージェン夫妻とマノンがもう座っていた。
私がマノンに
「私がいない間どうでしたか?」
と尋ねると思いっ切り睨んできた。
一方マージェン夫妻は状況を理解していないのか私とマノンを交互に見て少し慌てていた。
さて、と私達が座ったと同時に話を切り出す。
「状況を説明させてもらう前に言っておきますね」
一旦そこで話を区切って深呼吸をしてからお父様達を見るとゆっくり頷いてくれた。
それを見て、私はゆっくりと
「私はマノン様と離婚したいと思っています」
と伝えた。
それを聞いたマージェン夫妻は取り乱しながら
「な...なぜだ!?理由はあるんだろうな!?」
「そ、そうよ!まさか!シエラさん、他に好きな人でも出来たの!?」
そう言ってきた。
一方、マノンは俯いたまま無言でただ座っていた。
正直一番騒ぎそうな人が静かだったから拍子抜けだ。
黙っているつもりならずっとそのままでいてください、と願いながら私は今だギャーギャー言っているマージェン夫妻に
「私に好きな人は出来ていません。好きな人......いや、ずっと思い続けている人がいるのはマノン様の方です」
そう言うと今までうるさかったのが嘘のように静かになったので、私は今がチャンスと言わんばかりに言葉を続けた。
「マージェン夫妻も知っているのでは?リリー・アバズレーさんを」
ニヤリと笑ってそう言うとマージェン夫人は顔を真っ青に、元伯爵は顔を真っ赤にさせて
「お前は...っ!まだあんな娼婦のような女と遊んでいるのか!」
とマノンを殴りつけた。
それに私は追い打ちをかけるように
「それからマノン様。家に帰ってこなかった間どこにいましたの?リリーさんと一緒にいられたんですよね?だってそうじゃなければ妊娠なんてしませんもの」
そう言った私は酷く冷たい目をしているだろう。
マノンは顔を真っ青にして小刻みに肩を震わせている。
今までは優しくて慈悲深い私しか見たことがありませんもの。...そういう人が怒ると一番怖い、ということ知らないんでしょうね。
「すまなかった!だがマノンも一時の気の迷いだ。許して欲しい」
「えぇ、そうよね!シエラさん、許してあげて!」
そう言うマージェン夫妻に対してお父様もお母様も怒りで肩を震わせている。
なぜかって?
だってこの二人、リリーの存在を知りながら放置していたんだもの。
それも、私達ハーヴェスト公爵家に嘘をついて。
一時の気の迷い?いつまで迷っているつもりですか?
私がはぁ...と溜息をつくと急に客室の扉が開いた。
「マノン様ぁ~」
という猫なで声と共に。
私はその瞬間、笑いそうになってしまった。
だって、予想通りのことが起こったのだから。
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