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38話 リリーの処罰

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「やめて...!来ないで...っ!!」

リリーはメイリスが急接近しているのを見て逃げようとするが、それよりも先にメイリスは空中を切った。

多分、今切ったところが黒い人型のモヤなのだろう。

ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!

という叫び声が響き渡ると、リリーは糸が切れたかのようにその場に倒れ込んでしまった。

その姿を見て

「.........メイリス、精霊さん。終わったんですか...?」

と尋ねると2人はゆっくりと頷いた。









✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


リリーが魔族から開放されてから2日後

私達は、再び王宮に来ていた。

目の前には前と同じくマノン達が跪いた状態になっている。


「リリー・アバズリー。貴様は目上のものに対する不敬、妊娠したと嘘をついた、陛下を殺害しようとした」

宰相はゆっくりと冷静に、でもどこかに怒りを感じる冷たい声でリリーの罪を読み上げた。

リリーは自身の行いを無言で聞いている。

その横ではアバズリー男爵夫妻が顔を真っ青にしてプルプルと震えていた。

「私はこの者には死刑が真っ当だと思っております。陛下の意見を聞かせてください」

宰相はそう言って、陛下の顔を見た。

反対するのか、許可するのか、陛下が口を開こうとした瞬間に私は

「少し宜しいでしょうか?」

と声をかけた。そして、

「私はリリーさんの死刑を望みません」

そう言うと宰相は目を血走らせながら

「な...なぜですか!?この者は陛下を殺そうとしたんですよ!?」

とすごい勢いで言ってきた。

「殺そうとしたのは本人の意思でありません。魔族に操られていたから、私はそう説明しましたよね?」

「ですが、目上の者に対する態度、妊娠の件がある時点で......っ!」

「やめんか」

宰相が喚くのを陛下が威厳のある声で止めると、宰相は止められると思っていなかったのだろう。驚いた顔をして、陛下......と呟いた。

「被害者であるシエラ嬢が言ってるんだ。.........シエラ嬢、本当にいいんだな?」

と最後の確認だといわんばかりの真面目な顔で尋ねてきたので、

「えぇ。死んでしまったら後悔することも、やり直すことも...何も出来なくなりますから」

と苦笑しながら言うと、陛下とお父様、フォストは優しく笑って頷き、宰相は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


リリーの顔を見ると、1度ビクッと肩を震わせたが私のことを、しっかりとした目で見つめ返してきた。

「リリーさん、これからは一人で生きてください。誰かに甘えるのではなく、一人で。貴方は強い人ですもの」

私はそう言って微笑むとリリーの目から一筋の涙が零れ落ちてきて、

「あはは...あんた、馬鹿じゃないの...?」

と顔をクシャクシャにさせて笑った。




そしてその後、小さな声で

「ありがとう。ごめんなさい」

と頭を下げた。


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